介護施設の運営を支える介護事務になるには? 適性や資格についても解説!
介護事務は、介護サービス事業所や福祉施設などで事務に携わる仕事です。介護報酬請求などの業務が中心となりますので、専門の知識も必要ですが、ほかの業務のように特に必要とされる国家資格は定められていません。そのため、比較的チャレンジしやすい仕事でもあります。事務を通して介護施設の仕事に関わってみたいという方へ介護事務になるために必要なことをまとめました。
介護事務の仕事とは
介護事務の仕事は、介護サービス事業所や福祉施設などにおいて、受付や電話応対などの一般的な事務作業や介護レセプトを作成して介護報酬請求などを行うことが主な仕事内容です。基本的にはデスクワークとなります。
介護レセプトとは、介護サービス事業者が報酬を請求する際に必要な明細書のことです。レセプトを作成し、その内容を専用のソフトに入力することによって自治体に介護報酬請求を行います。この請求をもって、報酬が事業者に支払われます。
介護事務になるには、この介護報酬請求に関する知識を習得する必要があります。介護レセプトは介護のサービス内容に応じて20種類以上の様式があるため、全く未経験の場合は最初は苦労するかもしれません。事前に学んでおくと仕事がスムーズに進めることができるでしょう。しかし、介護事務に関しては、能力を認定する国家資格はありません。現状、業界関連団体により、民間の資格が運用されている状態です。
介護事務になるには資格を取るべきか?
介護事務に関する国家資格などは特にないため、無資格でも介護事務に携わることができます。しかし、レセプト作成など、介護に関するある程度の専門的な知識も必要なため、いくつかの民間資格が設けられ、介護事務の養成講座なども開講されています。
介護事務の資格として知名度が高いものには、財団法人日本医療教育財団認定の「ケアクラーク技能認定試験」、日本医療事務協会認定の「介護報酬請求事務技能検定試験」、医療福祉情報実務経験能力協会認定の「介護事務実務士(R)」、日本医療事務センター認定の「介護事務管理士」などがあります。
他にも多数の団体が教育や認定を行っておりますが、それぞれ難易度や社会的評価は異なります。これらの認定を受けるためには特に要件はありませんので、介護業界が初めての方でも問題はありません。また介護事務だけでなく、現場の従事者がスキルアップのために取得する例もあります。
介護事務管理士とは?
介護事務管理士という資格はご存知ですか?技能認定振興協会(JSMA)が認定している資格で、日本で初めて介護事業者向けの資格試験として誕生しました。
介護サービスを利用者に提供できる事業所の介護事務担当として、介護報酬請求事務はもちろんのこと、受付や会計業務もこなすことができるという証明となります。
試験科目には実技と学科があり、合計で2時間程度の試験となります。実技の内容は、介護給付明細書やレセプトの点検です。学科はマークシート方式となっており、実技は50%以上を、学科は70%以上の得点を得なければ合格することができません。
介護事務管理士の受験資格は特になく、誰でも受験することが可能ですので、みなさんでも受験することが可能です。試験の合格率は50%程度となっており、特に難しい資格というわけでもありません。問題集や通信講座をうまく利用すれば効率よく勉強することができ、合格することができるでしょう。介護事務の仕事内容を知るためにも、受験してみてはいかがでしょうか?
ケアクラーク技能認定試験とは?
ケアクラーク技能認定試験という資格も存在しています。この資格は一般社団法人 日本医療教育財団が認定している資格となっています。介護事務に携わるうえで求められる介護報酬請求業務や社会福祉制度の知識とスキルを評価し、そして認定することを目的に誕生した資格です。
先ほどご紹介した介護事務管理士という資格が介護報酬請求業務のスキルを証明するのに役立つ資格であるのに対して、ケアクラーク技能認定試験は、さらに介護事務に必要となる社会福祉や医学といった多くの知識を有していることを証明できる資格となっています。
こちらのケアクラーク技能認定試験も受験資格は特にありませんし、試験対策は必要ではあるものの、難易度もそれほど高いものでもありません。介護報酬請求以外の知識も身に付けているということを証明したいのであれば、ケアクラーク技能認定試験の受験もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
介護事務をめざすにあたり注意したいこと
介護施設運営において介護以外の仕事は多数あり、専門知識を持つ介護事務の存在は欠かせません。介護事業所も増加傾向にあり、今後介護事務へのニーズは高まってくると思われます。しかし、介護事務は現状、資格は民間のものだけであり、無資格でも仕事を行うことが可能です。
また、介護事務自体が職種として確立されておらず、事務業務を介護職員や介護福祉士、ケアマネジャーなどが時間の合間に行っているケースもしばしば見られます。そのため、介護事務だけを専任で募集している仕事は意外と少ないかもしれません。
介護事務で働きたいと考えて入職しても、現場では介護業務の手伝いも求められるというケースも十分にありえますので、頭に入れておく必要があります。大規模な法人であれば、明確に介護事務職専門で求人を行っていることもありますので、求人に応募する前には仕事内容をしっかりと確認しておくとよいでしょう。
介護事務に必要な適性要素
では、介護事務についてもっと詳しく見ていきましょう。介護事務の仕事内容は多岐に渡っているだけでなく、専門的な知識が必要とされることが多くあります。介護事務に求められるのは、まず、介護保険制度について熟知していることが絶対条件です。
次に、各種介護サービスの知識と、それを分かりやすく説明するスキル。介護報酬の算定法およびレセプト作成の知識ももちろん必要です。レセプト作成にはパソコンを使いますので、パソコンスキルも求められます。
こうしてみると、介護事務の仕事というのは、細やかな作業の積み重ねといえます。机に向かって長時間作業を続けていても、それが苦にならないこと、書類を読んだり、資料を作成したりすることが得意かどうかということが、介護事務従事者に必要な適性といえるでしょう。責任感を持って作業をもくもくとこなし、地道な作業を粘り強い姿勢で取り組み、仕事をクリアしていくことに達成感を見出せる人こそが、介護事務は向いていると言えるのではないでしょうか。
「福祉の仕事に携わりたい」という気持ちがあること
介護事務の仕事は、あくまでも「事務として」の役割を担っています。実際に介護をするための深い知識やスキルは必要ありません。しかし、事務職でありながら、介護現場を支える介護スタッフの一員であるという側面も持っています。
業務を進める上で、ケアマネジャーや介護職員とともに仕事を進めていくことも多くありますので「事務作業のスペシャリストだけれど、介護には興味がない」となると、やはり問題が生じます。
社会における介護の重要性や必要性を感じた上で、介護業界に携わる一人として、誇りをもって仕事に取り組める姿勢が大切なのです。
また、事業所にもよりますが、介護事務の仕事は、現場で介護をしながら事務も兼務するケースが多くあります。
介護事務として採用されて、のちに介護に携わるようになることも考えられますので、「福祉の仕事に携わりたい」という想いがある人が、介護事務に向いていると言えるでしょう。