ご利用者も喜び、スタッフも働きやすい現場をつくるには?【介護リレーインタビュー Vol.42/デイサービス ラスベガス】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
今回お話を伺ったのは、
カジノをモチーフにしたユニークなサービスで注目を集める「デイサービス ラスベガス」で働くみなさま。
前編では、代表取締役社長・森さんに「デイサービス ラスベガス」が生まれた経緯やその特徴を伺いました。
後編では、「デイサービス ラスベガス 横浜都筑」で実際に働かれている市川さん、森香澄さんにもご登場いただき、施設での働き方や、これから介護業界を目指す方へのアドバイスを伺います。
スタッフが本来すべきことは
ご利用者とのコミュニケーション
――現場で働くスタッフさんの業務は、一般的なデイサービスと違うのでしょうか?
森さん:大きくは変わりませんが、ご利用者と一緒に麻雀を打ったり、カードゲームでディーラーをつとめたりするのは「デイサービス ラスベガス」ならではでしょうね。私もたまにお相手をさせていただきますが、一緒になって喜んだり、「また打とうよ」と声をかけていただいたり、コミュニケーションのきっかけとしても、すごくいいツールになっていると思います。
この楽しさをみんなにも感じてもらいたくて、スタッフには「パソコンと向き合うのではなく、ご利用者と向き合ってくださいね」と伝えています。そもそもデイサービスで働く人は、ご利用者とコミュニケーションを取りたくて入ってきた人がほとんど。パソコン作業がしたくてこの業界に入っている人なんていません。
――確かに。
でもほとんどの場合が、書類作成や事務作業に追われてしまうんです。それこそ、ご利用者と向き合う時間が流れ作業になってしまう原因の一つ。そんなことが続くと「思っていたのと違う、やめよう」となるのも仕方ないでしょう。
とはいえご利用者との時間をつくるあまり、時間外労働が増えては元も子もありません。弊社では、スタッフのデスクワークを効率化するシステムをどんどん導入し、本部もしっかりバックアップ。効率化すべき点をわきまえて、本来のすべきことに集中してもらっています。
「ここに来るとご利用者全員が楽しめて、
ご家族も安心できる」という場所をつくりたい
――ここからは少し現場の声を伺います。まずは「デイサービス ラスベガス横浜都筑」で管理者兼生活相談員をしている市川さん。市川さんが介護業界に進んだきっかけは何だったんですか?
市川さん:祖父と祖母がいたので、今後のために少し知識をつけておきたくて、ヘルパー2級の資格を取りました。最初は訪問介護の会社で3年間勤め、介護福祉士資格を取得、その後「ラスベガス」に入社して今年で10年になります。
訪問介護ではご利用者と一対一で向き合います。それはそれでやりがいがあったのですが、みんなで楽しく、他のスタッフとも情報を共有しながらサポートする仕事に興味があったので、デイサービスに転職しました。
――市川さんが思う、「ラスベガス」の良さを教えてください。
全員が楽しめることですね。ここに来たら、この施設にあるものなら、どんなレクリエーションも必ずできます。例えば麻雀は、他の施設でも麻雀卓自体は置いてあったりしますが人数が揃わないとできません。でも「ラスベガス」はスタッフもお相手ができるので、「やりたいのにできなかった」ということがないんです。
それに、何もなさらずお一人でいるご利用者には、必ずお声がけします。もちろん「一人でゆっくり映画を観たい」「雑誌を読みたい」ということであればそっとしておきますが、それでも時々お声をかけます。もしご家族が自分の親が何もしないで一人でボーッとしているのを知ったら、「ここに通わせていいのか?」と不安になると思うんです。ご利用者だけでなくご家族にも安心していただけるように努めています。
あともう一つ挙げるなら、介護を感じさせない雰囲気づくりですね。特に男性は、デイサービスそのものに抵抗がある人も多いです。なので送迎車も一見介護施設の車とはわからない黒色の乗用ワンボックスカーにしたり、ユニフォームもいわゆるポロシャツとチノパンではない、介護施設のイメージとは正反対のものにしたり。
私たちがそのような雰囲気を大切にした結果、ご利用者たちもみんなおしゃれをして来てくださるので、とても明るい雰囲気になっていますよ。
――ご利用者と向き合う時に、大切にされていることはありますか?
常に明るく、元気でいること。何事にも一生懸命取り組むことです。何かしている最中に話しかけられても「ちょっと待って」とは言わず、スタッフ同士で連携を取ってすぐに対応。どんな作業をしていてもしっかり向き合ってお話することを心がけています。
――この仕事のやりがいや魅力を教えてください。
ご利用者本人に喜んでもらえるのはもちろんですが、ご家族から「ここに通うようになって、お父さんがすごく元気になった。私も自分の時間が持てるようになった。ありがとう」と言われるのも嬉しいです。やりがいを感じますね。
また、ここに通われるみなさんは人生の大先輩。生きてきた歴史を聞くと、「そんなこともあったんだ」「私もこうしてみようかな」と参考になる話ばかりです。この仕事じゃなければ、こんなにご年配のかたとお話しする機会もなかったでしょうから、私も勉強になりますし、そのうえみなさんにも喜んでいただける。一石二鳥だなと思います。
憧れの先輩を目標に
将来は管理職、相談員を目指したい
――続いて森香澄さん。森さんは1年半前に入社された新卒入社ということですが、福祉系の学校に通われていたんですか?
森香澄さん:そうです。誰かの役に立てる仕事がしたいと思って、高校から福祉コースを選択し、大学でも社会福祉と心理学を学んでいました。
大学時のソーシャルワーク実習で、いわゆる従来型の一般的なデイサービスに行ったのですが、そこにいらした男性のご利用者がすごく暇そうにしていて……。みんなが生き生き楽しそうにしている施設で働きたいな、と思っていた時に求人雑誌で「デイサービス ラスベガス」を見つけて、「ここだ!」と思い、入社しました。
――実際に現場で働き始めて、大変だったことはありますか?
私はコロナ禍の影響で、大学での授業がほとんどリモートだったんです。実習に行ける人数も限られていて、レポートを出して単位をもらうような状況でした。だから余計かもしれないですが、「現場は座学や演習で学んだように上手くいかない」「こんなに応用力が求められるのか!」と感じましたね。
とはいえ介護が必要なご利用者に、対応が難しいからといって無責任な行動をしてはいけません。わからないことはすぐ先輩に聞いて、できないことがあったら「どうすればいいのか」と原因を追求するようにしています。
――大切なことですね。
入社当時、私は車椅子の介助が苦手でした。理論的に頭ではわかっていても、実際やってみるとなかなか難しいんです。
でもコツを掴むには何度もチャレンジするしかない。「私がやります!」と言って担当させてもらうんですが、なかなか上手くいかず。とはいえずっとご利用者を待たせるわけにいかないので、「すみません、できません! 変わってください!」という繰り返し(笑)。体で覚える大切さを身に沁みて感じました。
――ご利用者と向き合う時に心がけていることはありますか?
若さが取り柄なので、とにかく明るく! ご利用者に「楽しい」と思ってもらうことを第一に考えています。ふだん会話が少ないご利用者に「楽しかった、また来週ね」と言ってもらえると、すごく嬉しいです。
また、話を広げられるように、会話の時にはできるだけたくさん質問をします。同じ話が繰り返されても、毎回新しい質問をすることで話を広げ、少しでもご利用者の刺激になればいいなと思っています。
――たくさん質問する、いいですね。これから頑張りたいことはありますか?
人に説明することが苦手なので、上手く言語化できるようになりたいです。将来的に市川さんのような管理職、相談員を目指したいのですが、そのためには見学に来られたかたたちに施設の特徴が説明できなくてはいけません。
まずは新規のご利用者にゲームのルールを説明できるくらいにはなりたいなと、今は頑張っています!
介護の常識に囚われず、
今できる精一杯のことを提供する
――「デイサービス ラスベガス」には素敵なスタッフさんがたくさんいらっしゃいますね。森さん、これから介護業界で求められる人材というのはどういう人でしょう?
森さん:基本中の基本だと思うのですが、きちんと挨拶ができること。ご利用者を第一に考え、私たちの身勝手な言動で我慢を強いるようなことを絶対にやらないこと。私はそういう人たちと一緒にお仕事がしたいですね。
あと、介護業界は資格を必要とする業界ですが、資格を取る事が目的ではいけないと思います。とくにその資格が国家資格ともあれば、国から認められた資格です。それだけの役割を果たせているかというのを自問自答しながら働けると、よりいいのではないでしょうか。
――ありがとうございました。最後に、介護業界で働く上での心得3箇条を教えてください。
・常に明るく元気でいる
・ご利用者のことをよく知り、よく考える
・できることはなんでもやる
森さん:最後の項目は、「手一杯の時はできない」「あの人はやってくれた、あの時はやってくれた、と言われたら困る」「1人だけ特別扱いできない」など、人によっていろんな言い分があると思いますが、私は心の中で「もしかしたら次はないかもしれない」と思っています。
だから私は「できる時にできる限りのことをしよう」と伝えています。誰が決めたかわからない「介護の常識」に囚われず、ご利用者に全力で向き合う。これが私の心得ですね。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄