ケアマネジャーが押さえておきたい介護現場のやってはいけない4つのこと
ケアマネジャーは介護資格のひとつですが、この資格を持っていたとしても介護現場でやってはいけない業務があります。
しかし、具体的にどんな業務を担当してはいけないのかをしっかりと把握している人は意外と少ないかもしれません。そこで今回は、ケアマネジャーが介護現場でやってはいけないことをくわしく解説します。
ケアマネジャーが押さえておきたい介護現場のNG項目4つ
ケアマネジャーとして実際に働く前に押さえておきたいのが、介護職員が携わってはいけない業務内容です。
ここでは、ケアマネジャーが把握しておくべき、介護職員が介護現場でおこなってはいけないNG項目をご紹介します。
1. 介護職員に認められない医療行為
基本的に、介護職員は医療行為をおこなってはいけないと法律で定められています。しかし、2005年と2012年に法律の一部を厚生労働省が改正。
これにより、これまで医療行為がおこなえなかった介護職員が一部業務のみ携わることが認められるようになりました。
介護職員はどんな医療行為ができる? 喀痰吸引や服薬介助はOK? インスリン注射はNG?
介護職員に認められる医療ケアの範囲とは
2005年以降、介護職員に認められる医療ケアの範囲は以下のとおりです。
・服薬や軟膏塗布、目薬を差す、湿布を張るなどの与薬の介助
・体温を測定する
・血圧を測定する
・酸素濃度測定器の装着
・軽い擦り傷や切り傷に対する処置
・耳かき
・健康な爪の方の爪を切ってやすりをかける
・歯ブラシや綿棒を使って汚れのみを取り除く
・ストーマのパウチに溜まった排泄物を除去する
・自己導尿の補助をするためにカテーテルの準備や体位の保持をおこなうこと
上記が、介護職員が担当できる医療行為です。そのため、これ以上の業務はおこなえません。また、これらのケアはすべて健康状態が安定している方が対象です。
さらに、上記のケアのなかには、医師および看護師などの指示を仰ぐ必要があるものも含まれているので、注意するようにしましょう。
研修と実技試験クリアで特定行為もOK
法律の一部改正により2012年度から、胃ろう、腸ろう、経鼻からの経管栄養と口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部の喀痰吸引については介護職員でもおこなえるようになりました。
ただし、介護職員誰もがおこなってよいというものではなく、講義50時間+各行為の演習を基本とした養成講座と対象行為すべての実地研修を修了し、試験に合格しなければなりません。また、介護職員も、この試験を受けられるのは介護福祉士のみとなります。
2. 労働基準法に違反した長時間労働・残業など
介護現場では利用者の状態によっては、長時間労働、残業をせざるをえないこともあります。介護現場では、「よくあること」「当たり前なこと」と捉えられやすい長時間労働や残業も、労働基準法に違反しているものなので、基本的にさせてはいけません。
労働基準法に定められた法定労働時間とは?
労働基準法で定められた法定労働時間は、1日8時間、1週間で40時間が基本です。実際に勤務する時間が6時間超えの場合は45分以上、8時間超えの場合は1時間以上の休憩を与えることが必須となります。
どんな仕事でも、上記の時間を超えて働き続けることは禁止されているため、法定労働時間を意識したシフトを組まなければなりません。さらに休みがない、連勤続きといった状況もNGです。少なくとも毎週1日の休日か、4週間のなかで4日以上の休日を作る必要があることをしっかりと意識しておきましょう。
時間外労働協定(36協定)のポイント
万が一、介護職員に残業させなければならない状況になった場合には、時間外労働協定36(サブロク)協定を結ぶ必要があり、所轄労働基準監督署長に届出が出さなければなりません。
このときに時間外労働をおこなう業務の種類や1日、1カ月、1年あたりの時間外労働の上限などを決める必要があります。
さらに2019年4月より、罰則つき上限が含まれるようになりました。そのため、特別な事情がなければ、時間外労働の上限は月45時間、年360時間となります。
3. 人員配置基準違反
本来必要なスタッフの人数、人員を配置していない場合、人員配置基準違反となってしまいます。これは、入居者の数に対して必要な職員の人員配置について定めたものです。
適切な介護・医療を利用者に提供することを目的に、介護職員だけでなく医師や看護師といった専門資格を持っている方の人員配置を決めています。
施設別の人員配置基準を紹介
人員配置基準は施設によって、人数が異なります。たとえば、介護老人保健施設では医師は常勤1名以上、介護職員または看護師を入居者3人に対して1人以上配置しなければなりません。そのうち看護師は7分の2程度を確保するという配置基準であり、介護施設のなかでも医療職の配置基準が高い傾向にあります。
一方、有料老人ホームでは入居者3人に対して常勤1人以上の介護職員を配置。看護師に関しては入居者30人までは1人以上、それを超えると50人ごとに1人追加という基準です。
また、特別養護老人ホームと認知症グループホームの場合、入居者3人に対し、介護職員は1人以上となります。このように施設によって配置基準が異なるので、自分の担当する施設の配置基準はしっかりと確認しておきましょう。
4. 倫理違反
倫理に違反する行為ももちろん、絶対にやってはいけないNG行為となります。とくに近年は、倫理については重要視されている傾向にあるでしょう。ここでは、倫理に違反する行為とはどのようなものなのかをくわしくご紹介します。
利用者に対する暴力・暴言など
高齢者への尊敬の念を持ち、介護を志している介護職員ですので、あまりない例ではあるかもしれませんが、介護対象となる利用者に対する暴言や暴力は倫理違反となります。
直接的な暴言や暴力をしなかったとしても、適切な介護をおこなわない、いわゆる介護放棄をしている場合、倫理違反の対象です。そのため、介護職員の言動や態度が倫理違反につながらないように指導をしていく必要があります。
職員間でのハラスメント行為
利用者に対してだけではなく、職員に対しての態度も倫理違反となります。たとえば、職場内でのパワハラやセクハラといった行為も、すべて倫理違反です。具体的な定義はされていないものの、身体的暴力、精神的暴力およびセクシュアルハラスメントをあわせて、介護現場でのハラスメントとしています。
職員間でのハラスメント行為が増えていけば、居心地が悪くなり、辞める職員も増えてしまいかねません。施設にとってもマイナスな影響を与えるものなので、職員間でのハラスメント行為にも注視していく必要があるでしょう。
利用者や家族からのハラスメントも問題になっている
さらに近年では、利用者側からのハラスメント行為も問題となっています。利用者や利用者家族からのハラスメントは、介護職員が離職する原因のひとつです。
介護職員本人が直接利用者や家族にハラスメントに対して拒絶するような反応をとることはむずかしく、泣き寝入りするケースも多々あります。そのため、施設側がハラスメントから介護職員を守れるように対策をしていくことも必要です。
ケアマネが守るべき倫理綱領を再確認しよう!
ケアマネには、介護職員とは別に守るべき倫理綱領があります。ケアマネはほかの介護職員よりも利用者とその家族の人生により深く介入し、さらには人生を豊かにするための介護が提供されるようにプランを立案しなければならないからです。
そのため、ほかの職種よりも倫理的配慮をしっかりとしていく必要があります。ここでは、ケアマネが守るべき倫理綱領の例を確認しておきましょう。
1. 自立支援|利用者本位
ケアマネとして働く以上、個人の尊厳の保持をし、利用者の基本的人権を擁護していくことが必要です。それだけではなく、能力に応じて自立した日常生活を営めるように支援をしなければなりません。
ケアマネ本位のケアプランを立てるのではなく、利用者本位になり、自立した生活を送れるように、利用者をしっかりと理解したうえで、ケアプランを立てていく必要があります。
2. 公正・中立|施設の利益に偏らない
ケアマネは、公正・中立の立場にいることを最優先にしなければなりません。利用者の利益を最優先に活動をし、決して施設の利益に偏らないようにケアプランを立てる必要があります。
介護保険法第69条の34においても、ケアマネが介護の業界において公正・中立な立場でいることを強く求められており、この点はケアマネとして非常に重視すべきポイントでしょう。
介護現場のNGを押さえて明確な指示・ケアプラン作成をしよう
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、意外に介護現場のNGをしっかりと理解できている、あるいは心にとめて実行できている方は少ないかもしれません。
医療行為や長時間の労働、倫理的配慮といったNG行為や倫理原則について今一度見直しつつ、ケアプランや指示で、介護職員にNG行為をさせないようにケアマネが意識しておく必要があります。
介護現場のNGを意識しながら、利用者にも、介護職員にも双方が納得できるケアプランの作成、指示をしてみてはいかがでしょうか。
引用元サイト
足立区 令和4年度 介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修(3号研修)
厚生労働省 36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
秋田県社会福祉協議会 令和2年度 介護支援専門員専門研修(専門研修過程Ⅰ)及び更新研修(前期研修)