介護職がなくなる?!AIの普及、資格取得必須など介護職の気になる未来について解説
近年目覚ましい進化を遂げ、さまざまな分野で活用されはじめているAI(人工知能)ですが、介護の分野も例外ではありません。介護の分野では、まだ本格的に活用されているわけではありませんが、慢性的な人手不足に悩む介護業界にとってAIは救世主ともいえる存在です。
ただ、AIや介護ロボットなどが進化しすぎると、今度は逆に人手がいらなくなってしまうのではないかと考えたことはないでしょうか。今回はAIの普及などを含め、介護職の気になる未来について解説します。
AIで介護の仕事がなくなるって本当?
AIという技術の進化は、この先私たちの生活を劇的に変化させる可能性があります。生活がより便利で快適なものになるのは大歓迎ですが、AIの進化は今人間がおこなっている仕事を奪ってしまう可能性もあるからです。
たとえば、一般事務や銀行員などの仕事は将来的にAIに変わる可能性があるといわれています。介護の仕事に関しても、AIによってなくなるかもしれないという噂もありますが、実際のところはどうなのかを確認しておきましょう。
介護職の現状
以前から人手不足が叫ばれていますが、その状態が慢性的に続いているというのが今の介護職の現状です。
そのため、業務の一部にAIを活用して、慢性的な人手不足を解消しようという動きはあります。ただ、感情を読み取れないAIやロボットでは代替できない業務が多いのも事実です。
介護の有効求人倍率は3倍以上
介護職における人手不足は慢性的に続いており、2022年1月の介護業界における有効求人倍率は3.68となっていました。そのため、増え続ける要介護者の数にじゅうぶんな介護の人材がいるとはいえない状況です。
日本では急速に少子高齢化が進んでおり、この先さらに介護業界で人手不足が深刻化するのは確実で、この状況は今後も続いていくものとみられています。
無資格でも介護福祉士と同じような仕事ができ、就職できる
介護業界で働くためには、介護福祉士などの資格が必要だと思うかもしれませんが、現状では無資格でも就職できます。
ただ、給料アップやキャリアアップを考えるなら当然資格取得も必要です。また、AIに仕事をとってかわられないためにも、今後資格取得が必須となる可能性はじゅうぶんに考えられます。
AIによって介護職はどう変わっていく?
深刻な人手不足が続いている介護業界ですが、この先労働力人口が減り、介護を必要とする人の数が増えていくものと予想されている以上、深刻な人手不足が解消する見込みはありません。
人手を確保できないなら、どうにかして働いている人の負担を軽減するしかないということで、AIや介護ロボットなどを活用する取り組みがはじまっています。
介護ロボットで介護士の負担を軽減できる
たとえば、AIシステムを導入することによって、今までスタッフがおこなっていた事務作業をする必要がなくなり、負担を軽減できます。また、AIシステムを使って利用者の見守り業務などもできれば、業務の効率化を図ることも可能です。
介護スタッフの大きな身体的負担となりがちな車いすやベッドなどに移動させる介助も、介護ロボットを導入することで負担を軽減できます。自立走行できるロボットを導入すれば、要介護者の歩行をアシストすることも可能です。このようにAIやロボットを導入することで、確実に介護スタッフの負担を軽減できることが見込まれています。
心のケアは人間にしかできない
前述したようにAIや介護ロボットを導入することによって、確実に介護スタッフの負担を軽減できる業務もありますが、人間にしかできない業務も存在します。やはり相手は介護を必要としている人なので、精神的に弱っている部分もありますし、細やかな気遣いや思いやりの心が必要です。
そうした心のケアに関しては、感情のないAIや介護ロボットに任せられません。このように人間にしかできない業務もたくさんあるため、この先介護職の需要がなくなることはないと考えられています。
介護職の需要は今後どうなっていく?介護職の需要が高いと考えられる理由
AIや介護ロボットによる代替可能な業務はあるものの、人間にしかできない業務が多い介護職の需要は、今後ますます高まるはずです。ここからは、今後さらに介護職の需要が高まる理由について解説します。
高齢者の人口はこれからも増える
日本では今、急速に少子高齢化が進んでいます。このまま少子化の進行を止められない以上、極端な高齢化社会となる未来はもうすぐそこまできているからです。
介護人材の需要は今後ますます高まり、厚生労働省によると2025年には243万人の介護人材が必要とされ、2040年にはその数が280万人になるものとみられています。
人口減少による人手不足
少子高齢化が進むということは、介護の担い手となる労働力人口がどんどん減っていくことでもあります。労働力人口が減ってくると介護業界だけでなく、あらゆる業界で人材の奪い合いになる可能性も出てくるでしょう。
ただでさえ人手不足が深刻な介護業界が、さらに深刻な人手不足に陥ることは想像に難しくありません。つまり、介護職の需要は今後ますます高まってくるということです。
親の介護をする子どもの減少
親の介護を担うのは子どもであるという状況は、今も昔も変わりありません。しかし、家を出た子どもと離れて暮らしている親が多く、最近は夫婦共働きの家庭も多いため、子ども世帯が親の介護を担うことが難しくなってきています。
そうなると介護サービスに頼らざるを得ないので、介護職の需要は今後ますます高まっていくでしょう。
無資格で介護職に就けた時代は終わった
無資格でも介護職には就けますが、それは今からあと3年間くらいの話です。2021年度の介護報酬改定で、無資格者に認知症介護基礎研修の受講が義務付けられました。ただ、3年の経過措置があるため、今はまだ努力義務の状態です。
ここからは、無資格者が2025年から受講必須となる認知症介護基礎研修の詳細などについて解説します。
認知症介護基礎研修とは
認知症介護基礎研修とは、認知症に関する基本的な知識やスキルを無資格者や未経験者が講習と演習を通じて学ぶための研修です。カリキュラムはトータル6時間の講義と演習で構成されており、1日あれば受講できる内容となっています。
受講後にテストや修了試験があるわけではないので、最後まで受講すれば受講証明書が発行されて終了です。費用は自治体によって異なり、受講料が無料のところもあれば5,000円程度の支払いが必要になるところもあります。
現在は経過措置期間となっているので、受講していなくてもすぐに働けなくなるわけではありませんが、2024年4月以降は完全義務化されるため受講必須です。
初任者研修とどう違う?
介護職員初任者研修は介護職として働くための入門編的な位置づけで、認知症だけでなく介護全般の知識を学ぶためのものです。学習内容も幅広く、受講期間も1カ月程度と長期間で数万円の受講料が必要となります。
ただ、この研修を修了すれば訪問介護でホームヘルパーとして働けたり、介護福祉士を受験する際に免除される項目があったりするのが特徴です。そのため、介護職を長く続けるなら長い目で見てこちらの資格を取得したほうがよいでしょう。
介護職の未来。需要が増すなら待遇もよくなる?
需要が増している介護職ですが、現状その待遇がいいとはいえません。ただ、行政も介護職員をなんとか確保しようと必死です。
ここからは介護職員を増やすために、介護職員の待遇改善策として国が導入した施策などをご紹介します。
介護職員処遇改善加算の導入
介護職員処遇改善加算とは、職場環境の改善をおこなった事業所や施設に対して、介護職員の給与を上げるための交付金を支給する制度です。介護職は、体力的にもきつい仕事である割に給与が低いというマイナスイメージが強いため、新規の応募も少なく定着率も低くなっています。
そこで国が現状を打開するために導入したのが、この制度です。厚生労働省の調査によると、全国の約9割の事業所がこの制度を取得したとされています。
厚生労働省が再就職準備金事業を開始
再就職準備金とは、介護職の離職者が再び介護の仕事に就く際に準備金として最大40万円を貸与してくれる制度です。介護資格保有者で1年以上の実務経験がある人が対象ですが、準備金は研修費用や通勤用の自転車・バイクの購入費などにも使用できます。
準備金は貸与という名目なので基本的には返還しなければなりませんが、2年間介護職員として業務に従事すれば全額返還免除されるため、条件さえ満たせば実質的には給付と同じです。
介護の仕事を長く続けるなら資格取得をしておこう
介護職は、将来AIや介護ロボットなどが普及してもなくなる可能性の低い仕事です。また、急速に進む少子高齢化の影響により、将来にわたって高い需要が見込まれる仕事でもあります。
現在は無資格でも介護の仕事に就けますが、長く働いて給与のアップやキャリアアップを目指すなら資格取得は必須です。待遇改善も進んでおり、やりがいのある仕事でもあるので、長く働くならぜひとも資格を取得し、キャリアアップを目指しましょう。
厚生労働省 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について