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特集・コラム 2022-11-10

処遇改善手当がなくなる?介護職員処遇改善加算の基本知識から2022年に大きく変わった点まで徹底解説

2022年度に介護処遇改善加算について、大きな変更がありました。処遇改善手当はなくなってしまうのか、と不安に感じている人も少なからずいるでしょう。

処遇改善手当はなくなりませんが、事業所によっては、処遇改善手当の対象外になってしまうところも出てきます。自分の職場はどうなっているのか知るためにも、処遇改善手当についてチェックしておきましょう。
ここでは、介護職員処遇改善加算の基礎知識から2022年に大きく変わった点まで詳しく解説していきます。

そもそも介護職員処遇改善加算とは?背景を詳しく解説

介護職員処遇改善加算は、介護を担う人材が不足している状況を問題視して、厚生労働省が創設した制度です。介護業界の給料をアップしていくことが狙いとなっています。事業所の総報酬や加算率によって違いはありますが、厚生労働省の想定では、最高で月額一人当たり3万7,000円相当が加算されると見込んでいます。

介護職は、肉体的・精神的に負担が多い反面、給料が低いため、人材が定着してきませんでした。2017年時点の厚生労働省の資料によると、介護職を離れることを考えたきっかけとして、15.0%の人が 「収入が少なかったため」という理由をあげています。

介護職員処遇改善加算は、給料の底上げをすることにより、収入が原因で介護現場を離れていく人を減らし、働きやすい職場を作り上げていくための制度といえるでしょう。

介護職員処遇改善加算はアルバイトなどの非正規雇用も対象になる?

介護職員処遇改善加算の対象は、介護の業務を行う職員になります。資格の有無や雇用形態は要件にふくまれておらず、契約社員・派遣社員・アルバイト・パートなどの非正規雇用でももらえることになっています。

扶養に入っていても、加算の対象です。金額が扶養枠の範囲を超えないように、事業所と調整しましょう。

ケアマネージャー・生活相談員・事務員などは対象外ですが、介護業務を兼務している場合は、介護職員処遇改善加算の対象となります。

介護職員処遇改善加算に必要な要件とは?

介護職員処遇改善加算を取得するには、必要な要件が2つあります。キャリアパス要件と職場環境等要件です。

1.キャリアパス要件

キャリアパス要件は以下の3つです。

1.職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系の整備
2.資質向上のための計画を策定し、研修の実施または機会を確保
3.昇給の仕組みまたは一定の基準で定期的に昇給を判定する仕組みを設ける

事業所は、設定したキャリアパス要件を、就業規則などで介護職員に周知することが求められます。1から3の内、どの要件をいくつ満たしているかで、処遇改善加算の区分が変わってきます。

2.職場環境等要件

職場環境等要件は、大まかに以下の内容に分けられます。

・入職促進に向けた取組
・資質の向上やキャリアアップに向けた支援
・両立支援・多様な働き方の推進
・腰痛をふくむ心身の健康管理
・生産性向上のための業務改善の取組
・やりがい・働きがいの醸成

給料面だけではなく、働きやすい環境を作るために設けられた要件です。処遇改善加算を受けるためには、このうちの1つ以上に取り組んでいる必要があります。

介護職員処遇改善加算の区分について紹介

キャリアパス要件と職場環境等要件を、いくつ満たしたかによって、処遇改善加算の金額が変わってきます。ここでは、処遇改善加算の区分である(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)について紹介します。

処遇改善加算(Ⅰ)

処遇改善加算(Ⅰ)の算定要件は、「キャリアパス要件のうち、1・2・3を満たし、なおかつ職場環境等要件を満たすこと」です。厚生労働省が想定している一人当たりの月額は3万7,000円相当です。

処遇改善加算(Ⅱ)

処遇改善加算(Ⅱ)の算定要件は、「キャリアパス要件のうち、1・2を満たし、なおかつ職場環境等要件を満たすこと」です。厚生労働省が想定している一人当たりの月額は2万7,000円相当です。

処遇改善加算(Ⅲ)

処遇改善加算(Ⅲ)の算定要件は、「キャリアパス要件のうち、1もしくは2を満たし、なおかつ職場環境等要件を満たすこと」です。厚生労働省が想定している一人当たりの月額は1万5,000円相当です。

サービスによって加算率に違いあり!介護職員処遇改善加算の計算方法

介護職員処遇改善加算の計算方法は、以下のようになります。

一月あたり介護報酬総単位数[単位]×1単位あたりの単価[円]×加算率×算定の対象月=処遇改善加算
の見込み額

一月あたりの介護報酬総単位数は、 前年の1月から12月までの1年間の各種加算減算をふくむ介護報酬総単位数(処遇改善加算および特定加算はのぞく)を12で割った単位数のことです。

加算率は、サービスによって異なります。主な加算率は以下になります。

介護報酬総単位数

また、加算の算定対象ではないサービスがありますので、注意してください。主な対象外のサービスは、介護予防に関する、訪問看護・訪問リハビリテーション・福祉用具貸与などです。

処遇改善加算はここが変わった!2022年度で大きく変わった2つのこと

2022年度に、処遇改善加算に変更が加えられました。どのように変わったのでしょうか。ここでは、大きな変更点を2つ紹介します。

2022年10月に介護職員等ベースアップ等支援加算が新設!対象者の幅が広がる可能性

2022年10月より、介護職員等ベースアップ等支援加算が新設されました。これにより、処遇改善加算は、「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つとなりました。

介護職員等ベースアップ等支援加算は、月額9,000円相当の給料アップが見込まれる制度になっています。対象者については、「介護職員」と「事業所の判断により柔軟な運用を認める」となっています。事業所の判断にはなりますが、介護業務を行う職員以外にも加算が充てられる可能性が出てきました。

2022年度から処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止

2019年度の時点での処遇改善加算の届出の状況は、全体で処遇改善加算(Ⅳ)は0.3%、(Ⅴ)は0.5%の取得にとどまっていました。このため、2021年度からの1年間の経過期間を経て、2022年度から処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止されました。

処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)の事業所で働いている方は、介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の3つの加算を受けられなくなってしまいます。気になる方は、自分の職場が対象から外れてしまっていないか、事業所に確認をとることをおすすめします。

介護職員処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算・特定処遇改善加算の違いは?

新設された介護職員等ベースアップ等支援加算をふくめ、3つに増えた処遇改善加算。違いはどこにあるのでしょうか。ここでは、3つの制度の対象者と算定要件について紹介します。

対象者

3つの処遇改善加算の対象者は以下の通りになります。

処遇改善加算の対象者

特定処遇改善加算は、経験や技能のある介護職員に重点を置いている制度です。

今回、新たに創設された介護職員等ベースアップ等支援加算は、介護職員のみが対象の介護職員処遇改善加算よりも、事業所が柔軟な対応を取ることができるため、処遇改善加算の対象が広がる可能性が期待できます。

算定要件

3つの処遇改善加算の算定要件は、基本的に職場環境の改善を促すような内容となっています。以下、算定要件を紹介します。

【介護職員処遇改善加算】
処遇改善加算の区分である(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを取得すること

【特定処遇改善加算】
・処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
・処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
・処遇改善加算にもとづく取組について、ホームページに掲載するなどに見える化を行っていること

また、介護福祉士の配置割合などに応じて、加算率が二段階に設定されています。

【介護職員等ベースアップ等支援加算】
・処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
・賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の2/3は介護職員などのベースアップなどに使用すること

ベースアップとは、「基本給」または「毎月支払われる決まった手当」の引上げのことを指しています。

処遇改善手当は事業所によって配分ルールが異なる!自分の事業所をチェックしてみよう

処遇改善手当は、事業所によって配り方のルールが異なります。自分の働く事業所が手当を支給しているかどうかを確認してみましょう。

まずは手当がもらえているか確認してみよう

処遇改善手当が、支給されているかどうかを確認する方法はいくつかあります。

・給与明細を見てみる
・就業規則を確認する
・事業所の掲示を確認する

自分がチェックできる範囲で、処遇改善手当が支給されているか分からなかった場合は、事業所の管理者に確認しましょう。事業所の経営側は、処遇改善加算について職員へ周知をする義務があるからです。

また、事業所は処遇改善手当を職員に還元したことを、自治体に報告する必要があります。事業所が処遇改善手当を職員に支給せず、別のことに使っていた場合は違法となります。

手当がもらえない場合があることを知ろう

処遇改善手当の細かいルールについては、事業所によって異なります。勤続した年数やスキルによって、誰に配分するかを決めているところもあり、場合によっては処遇改善手当がもらえない人もいます。

また、事業所が処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得していないことがあります。この場合、処遇改善手当は支給されません。厚生労働省の資料からは、事務処理のわずらわしさなどの理由から、取得をためらうというデータが出されています。

処遇改善手当はなくならない!処遇改善加算が対象の事業所で働こう

介護現場の給料アップを目的にしている処遇改善手当。手当自体はなくなりませんが、2022年度で大きく変化したこともあります。

新設された介護職員等ベースアップ等支援加算により、介護現場での処遇の改善がさらに進むと期待されています。しかし、処遇改善加算の(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止されたため、わずかながら、加算されない事業所が出てきました。そもそも、処遇改善加算を取得していない事業所もあり、なかには給料アップが見込めない人もいるでしょう。

働きやすい環境や仕事に見合った給料をもらうのは、長く仕事を続けていく上で、大事な要素になります。これから就職や転職を考えている人は、事業所が処遇改善手当の対象かどうかを、前もってチェックしてみましょう。

引用元
処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)
2019年度介護報酬改定について~介護職員の更なる処遇改善~
介護保険最新情報Vol.1082
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
令和4年度介護報酬改定について
福祉・介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)

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