ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2021-05-30

【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか? vol.1】利用者に楽しんでもらうためにできることを追求 #1

Withコロナ時代の今、介護現場に求められている感染対策と働き方を深堀りしてお届けする連載企画。今回お話を伺ったのは、デイサービス『エンゼルガーデン』施設長・生活相談員の倉持 涼さん。

新型コロナウイルスの感染が広まる前は、一度に14名の利用者を受け入れていたというエンゼルガーデン。しかし、新型コロナウイルスが流行し、人々が外出を自粛するようになったことでデイサービスの利用者数もぐっと減少したそう。では、どのような対策と工夫を凝らして利用者数減少の危機を乗り越えたのか?

前編では、エンゼルガーデンで導入している感染対策の方法をはじめ、レクリエーションや季節ごとの行事の変更点や、感染対策をしながら利用者さんに楽しんでもらうために工夫しているポイントなどをお届けします。

お話を伺ったのは…

株式会社ACA エンゼルガーデン
施設長・生活相談員 倉持 涼さん

アットホームな会社の雰囲気に魅力を感じ、平成23年に株式会社ACAに入社。デイサービス『エンゼルガーデン』の現場スタッフとして働き始める。その後、育休・産休を経て復帰し、2021年4月から施設長に就任。現場では他スタッフとともに、送迎、お迎えの際の体調チェック、施設到着後の健康チェック、入浴介助、食事介助、レクリエーション、体操、おやつの補助などを行う。そのほか契約窓口の担当や利用者さん・施設長・ケアマネジャー間で行われる定期的な会議への参加、経理業務なども行う。

対策内容をきちんと明かすことで安心して利用できることを証明

新型コロナウイルスによるエンゼルガーデンの影響について
語ってくださっている倉持さん。コロナの流行から
1年以上が経過した今は、
少しずつ利用者数が戻ってきてはいるものの、
コロナ前までの利用率には現在も戻っていないそう

―2020年1月から新型コロナウイルスの感染が日本でも急速に広まりました。このような状況下となり、エンゼルガーデンにはどのような影響がありましたか?

まず、新型コロナウイルスの感染を恐れてお家で過ごす方が増えたことで、「訪問介護」や「訪問入浴」を希望される方が増え、デイサービスの利用者数が著しく減少しました。エンゼルガーデンでも利用自体を辞められてしまう方や、しばらく休むと申し出る利用者さんが何名かいらっしゃいましたね。

加えて「これからデイサービスに行こうかな」と考えていた方たちも訪問介護などにシフトするケースが多くなり、新規の利用者さんの獲得も難しい状況に。結果、2020年4月に発令された緊急事態宣言時には利用率が2割にまで落ち込み、曜日によっては閉鎖したときもありました。

―では、そこからどのような対策をとっていかれたのですか?

まず、利用者さんやそのご家族から不安の声が挙がる前に、弊社で行っている対策内容をHPにアップしました。

具体的には「スタッフ全員のマスク着用」「施設内の換気」「施設内のこまめな除菌・清掃」「キッチンなどで使用する手拭きタオルを全てペーパータオルに変更」「食事やレクリエーションの際の利用者さんの席は感覚を空けて配置する」「濃厚接触のリスクを減らすため送迎は行き帰り同じ人同士でペアにする」といった感染対策を行っていることをお伝えしました。

さらに2020年の年末には、抗ウイルス効果のある抗菌加工「SKYBE-783」を施設内全体と全送迎車両に実施しました。この抗菌加工は仮に口に含んでしまった場合も安全なうえ、書類などの紙にも効果があるようなので、社内書類一枚一枚にも散布してもらいました。

新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果が確認された
無光触媒「SKYBE-783」を実施している様子。
粒子がとても細かいため、
一度行うと約5年間の持続効果が見込めるそうです

レクリエーションや季節のイベントもコロナに対応した内容に変更

トイレを除菌中の倉持さん。エンゼルガーデンでは
レクリエーションやおやつの合間などの空き時間に、
利用者さんが施設内で触れるところ全ての消毒を
スタッフで手分けしながら行っているそう

―コロナ前と後では実施するレクリエーションの内容なども変化したのでしょうか?

他の人が触れた道具を使い回さない遊び方を意識するようになりましたね。例えば、ピンポン玉を乗せたお玉を隣の人に渡していくというゲームを行うときは、お玉ごと渡すのではなく、お玉は各自に用意した状態でピンポン玉のみを渡していく内容にアレンジしたり。

あとは、レクリエーションの合間に消毒を挟んだり、足を使ったゲームを積極的に取り入れるようにしています。

―季節ごとの行事などはどのように対応されているのですか?

エンゼルガーデンでは毎年10月に、座ったままできるゲーム内容で構成した「運動会」も行っているんですが、昨年はコロナウイルスの感染を防ぐために内容を変更しました。具体的には、これまでは椅子に座った状態で行っていた「綱引き」を昨年は飛沫感染防止の観点から椅子の間にテーブルを挟んだりしました。

また、コロナ禍になる前は毎月行っていた外出行事なども今は極力制限したり、方法をかえて楽しんでいただく工夫をしています。毎年利用者さんとともに参拝に行っていた初詣も、今年は代表スタッフが撮影しながら参拝に行き、その様子を利用者さんとともに見るオンライン形式に変更させていただきました。

利用者さんに楽しんでもらうためにできることを模索していきたい

施設長としての今後の課題や目標を語ってくださっている倉持さん。
利用者さんのなかには「いつまでマスクするの?」
といった不満の声をスタッフに漏らす方もいらっしゃるようで、
その度に利用者さんに少しでも楽しんでもらうために
何ができるのかを考えさせられるそう

―行った対策に対しての利用者さん、そのご家族の反応はいかがでしたか?

利用者さんの中には、いちいち体温を測られることを面倒に感じて体温測定を拒否される方や、マスクは息苦しいし耳が痛くなるからつけたくないという方もいらっしゃいます。

そういった現実があるからこそ、デイサービスを利用することを心配するご家族の方も多いと思うのですが、施設全体の抗菌加工などを行い、きちんと対策内容を公表したことで、ご家族の方々からも「安心して利用できる」といった有難いお言葉をいただけるようになりました。

最近では、2020年4月の緊急事態宣言時には利用を一時休止していた利用者さんたちも徐々に再開してくださるようになりました。 

―今後、新型コロナウイルスにどう向き合っていこうと考えていらっしゃいますか?

マスク着用や消毒の徹底など、利用者さんの協力が必要な部分はありますが、家で過ごすという選択肢ではなく、エンゼルガーデンに来ることを選択してくださっている以上、利用者さんにはリラックスしてもらいたいと思っています。そのためにも感染対策をしながら近くの公園を散歩するなど、日々のルーティーンにできる限りの変化をつけながら利用者さんに楽しんでもらうための働きかけを精一杯していきたいです。

エンゼルガーデン施設長 倉持涼さんが実施している感染対策

1. 対策内容を利用者さんとご家族に発信し、安心してもらう

2. レクリエーションは感染対策しながら楽しめる内容にアレンジ

3. コロナ禍でも利用者さんに楽しんでもらうためにできる限りの工夫をする

ただ感染対策をすればよいのではなく、利用者さんがデイサービスを利用している意味を考えたうえで自分たちに何ができるのかを考えて行動することが大切になるんですね。常に利用者さんの視点に立って物事を考え、判断されている様子がインタビューを介しても伝わってきました。

次回はコロナ禍における現場スタッフの働き方についてお届けします!

▽後編はこちら▽
【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか? vol.1】グループチャットの導入と勤務形態の細分化で働きやすい環境を整備 #2>>

取材・文/小沼奈央(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)

Information

デイサービス エンゼルガーデン

住所:東京都大田区東馬込1-19-10
電話番号:03−5743−6622

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの生活相談員求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄