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特集・コラム 2023-01-06

医療的ケア児とは?概要と現状、今後の展望について解説

「医療的ケア児」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?生命を維持するために、特別な医療ケアを日常的に必要とする子どもがそれに該当します。

子どもが特別な医療ケアを必要とする状況に置かれたら、どのように対応すべきか悩んでしまう保護者の方も多いでしょう。

本記事では、医療的ケア児の概要や現状、今後の展望について解説します。医療ケア児の概要と周囲の状況について知っておきたいという方は、参考にしてみてください。

医療的ケア児って?

医療ケア児とは、NICU(新生児集中治療室)などの最新の医療設備が整った集中治療室に長期で入院した後も、継続的に医療ケアを必要とする児童のことです。生命を維持するための医療ケアを長期間にわたって必要とする医療ケア児には、最新の医療ケアや設備がそろった治療室が必要となるのが特徴です。

具体的な医療ケアの内容

医療的ケア児に対する医療ケアは、人工呼吸器や胃ろうなどの医療設備、経管栄養やたんの吸引といった医療ケアを、継続的に実施する必要があります。

気管切開や服薬療法・在宅酸素療法・中心静脈栄養などの処置が必要な場合もあり、子どもが置かれている状況や必要な処置によって、医療ケアの内容も多種多様です。

医療的ケア児は増加傾向にある

医療的ケア児の数は増加傾向にあり、令和2年度に厚生労働省が公表した『医療的ケア児等の支援に係る施策の動向』によれば、全国の医療的ケア児の推定数は約2万人。

平成17年度の9,987人から平成30年度の19,712人に至るまで増加傾向にあります。また、東京都のデータだけを見ても、平成28年度の1,733人から令和1年度の2,060人となっており、全国的に医療的ケア児の数は増えていることがわかるでしょう。

医療サービスの水準が高くなった結果、命を落とす児童の数がへり、その代わりに医療的ケア児の数が増えているというのが背景にあります。

保育所では対処できないのが現状

医療的ケア児に対しての医療ケアは、専門的な医療器具と保護者や看護師・医師などによる経過観察、適切な対応が必要となります。そのため、医療設備や適切な対処ができない保育所に子どもを預けられず、保護者が看病につきっきりにならざるをえないことも。

看病に専念するために、仕事を辞める保護者も少なくないようです。

成長段階別の問題点と療養場所

医療的ケア児は、医療ケア・成長段階によって4つの段階に分解可能で、課題や療養場所については、下記のようにまとめられます。

本人及び家族の課題 主な社会資源
在宅移行期 ・本人と保護者の愛着関係

・共同生活に向けた相談支援

・在宅医療ケアの方法を学ぶ

訪問看護・訪問診療

居宅介護など

乳幼児期 ・兄弟との関係や教育機関の選択

・発育を考慮した療育機関の選択

保育所

児童発達支援センター

学齢期 ・身体構造の変化

・放課後活動や居場所のこと

特別支援学校

放課後デイサービス

成人期 ・障害福祉にサービス変更

・医療機関の担当医の変更

生活介護

就労

重心通所

引用元:東京都福祉保健局:医療的ケア児・重症児等支える家族の課題

医療的ケア児の両親が悩む5つのポイント

医療的ケア児の医療ケアやサポートには、保護者の献身的なサポートが欠かせません。この章では、そんな医療的ケア児の両親が悩みがちな5つのポイントを見ていきましょう。

1.慢性的な睡眠不足

医療的ケア児をもつ保護者は、子どもの病気の状態や容態について、常に気を遣わなければなりません。昼夜を問わずに医療ケアや子どものサポートをしなければならないので、満足に寝られないケースもしばしばあります。

とくにNICUから出て自宅療養に移る際には、日常的な医療ケアサポートや慣れない共同生活に対する対処のせいで、睡眠時間が足りないといった状況が想定されます。

慢性的な睡眠不足にならないためにも、夫婦の医療ケアの協力体制を確立し、不安や悩みを担当医や看護師に相談するなどして、負担や悩みを解消するように努めましょう。

2.成長に関する不安

医療ケア児の保護者の悩みは、他の健常な子どもと成長スピードを比較してしまい、「我が子はきちんと成長していけるのか」という不安を絶えず抱えているという点です。

また、同世代の子どもたちと交流する機会が相対的に少なく、友人が少なくなり、他の子どもが経験できることを経験できなくなってしまいがちです。

医療的ケア児である子どもの成長スピードに対する不安は、子どもの健やかな成長を願う保護者に共通する悩みだといえるでしょう。

3.預け先が見つからない

医療ケア児をもつ保護者が抱える悩みとして、子どもが必要とする医療的・精神的なケア体制が整っている受け入れ先が少ない点が挙げられます。

保育施設や学校施設では医療的ケア児を受け入れてくれる場所が少なく、どうしても専門的な設備が整った、障害児専門の特別支援学校などに限られてしまうのが現状です。

文部科学省が公表している『平成29年度 特別支援教育制度』を見てみると、日本全国にある特別支援学校(保育施設から高等部まで)は1,135校しかなく、一般的な保育施設・学校施設を見つけるよりもはるかに難しいことがわかります。

4.病院から離れる際に不安を感じる

医療ケア児がNICUから退院したばかりの時期は、病院から離れて子どもの容態が急変する不安や、自分や預け先の福祉施設が適切な医療ケアをできるのかどうかといった不安を感じてしまうことも。

実際に、病院から離れてトラブルに見舞われた際に、自分たちでは対応しきれず、病院に向かわなければならないことも多いようです。

5.支援申請が煩雑

医療ケア児に対する支援金は、医療ケアや福祉サービスに支払わなければいけない費用が高くつき、生活が苦しくなりがちな保護者にとっては非常に大切です。

しかし、自治体から医療的ケア児のサポートを受けるための事務手続きが複雑で、支援を受けるハードルが高いことが、保護者たちの悩みの種だといわれています。

医療的ケア児の受け入れに関する新しい法律

2021年6月に新しく医療的ケア児の保護者の負担を軽減する法律として施行された『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律』によって、医療的ケア児が入所できる保育所や学校施設の支援や家族に対する支援、相談体制などの拡充が盛り込まれました。

国は医療的ケア児の増加と保護者たちに対する支援の必要性を認識しつつあり、今後は医療的ケア児を取り巻く問題点を国が主導して改善していくことが期待されています。

医療的ケア児にまつわる現状と悩みを知って、課題を解決する施策を考えていこう!

この記事では、医療的ケア児の概要やケア内容、医療的ケア児が悩む5つのポイントについて解説しました。医療的ケア児の増加に伴い、国の法改正が進み、ケアに対応している保育・教育施設は増加傾向にあり、サポート体制も充実しつつあります。

ただし、医療的ケア児をもつ保護者としては、容態の急変や成長速度、預け先が見つからないといった不安や悩みを抱えてしまうケースもまだまだ多いようです。

医療的ケア児を取り巻く課題を認識して、問題を解決するための方法や制度を模索し、医療ケアに関する不安や悩みを一つずつ解消していきましょう。

引用元
厚生労働省:医療的ケア児
東京都福祉保健局:東京都医療的ケア児の推計
東京都福祉保健局:医療的ケア児・重症児等支える家族の課題
文部科学省:平成29年度 特別支援教育制度
厚生労働省:医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律

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