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特集・コラム 2023-02-06

介護職員等ベースアップ等支援加算とは? 介護職員処遇改善支援補助金とはどこが違うの?

介護の現場の人手不足から、介護職の給与の引き上げへの取り組みがおこなわれていますが、制度が複雑で、なかなか理解できないと感じている方が多いのではないでしょうか。とくに介護職員処遇改善支援補助金と、新設された介護職員等ベースアップ等支援加算の区別がつかなくて混乱するという方は多いかもしれません。介護職員等ベースアップ等支援加算を中心に解説します。

介護職員等ベースアップ等支援加算とは?

介護職員等ベースアップ等支援加算は、介護職員の待遇を改善するために作られました。2022年2月から9月までの「介護職員処遇改善支援補助金」から、「介護職員等ベースアップ等支援加算」に名前を変えて継続されています。

ほかにも、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算があり、これらは介護職員の能力などを加味した処遇改善のための制度です。

介護職員等ベースアップ等支援加算は基本給等の引上げによる介護職員の処遇改善の加算ではありますが、他の職種の処遇改善への柔軟な運用が認められているのが特徴です。ここから介護職員等ベースアップ等支援加算の考え方と詳細について解説します。

対象となるのは?

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象者は「基本的には介護職員のみ」とされています。しかし、厚生労働省の資料には「ただし事業所の判断により、ほかの職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」との文言があります。介護職以外のリハビリ職、看護職、事務職にも配分することが認められているのです。

加算額はどれくらい?

給料のベースアップとして、常勤換算で職員1人当たり月額平均9,000円の賃金引上げに相当する額が充てられます。対象事業所・対象サービスごとに介護職員数(常勤換算)に応じて必要な加算率を設定し、各事業所の介護報酬にその加算率を乗じて単位数を算出して請求します。

ベースアップという性質上「賃金改善の合計額の3分の2以上は、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げに充てること」と、月ごとでの改善が特徴です。

加算率とは?

加算率は、介護の種類によって異なり、サービスごとの介護職員数を踏まえて計算されます。基本報酬に加算・減算し、加算率をかけたものが、介護職員等ベースアップ等支援加算の単位数です。介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算と同様の計算方法です。

処遇改善加算に、介護職員等ベースアップ等支援加算を一律に上乗せする形で加算します。じゅうぶんな処遇改善加算が算定されていない場合には、介護職員等ベースアップ等支援加算を加えることはできません。

申請から交付までの流れとは?

計画書などを作成して指定権者である都道府県等や区市町村へ、介護職員等ベースアップ等支援加算の届け出をおこないます。請求する自治体によって届け出の締め切りが異なるため、よく確認して確実に受付を済ませることが大切です。

届け出が認められたら、介護報酬の請求と一緒に加算の請求をします。届け出や請求は都道府県等や市町村などの指定権者に対しておこないますが、介護職員等ベースアップ等支援加算の交付は介護報酬に加算される形で国保連から支払われます。

どうやって報告するの?

介護職員等ベースアップ等加算を取得した介護サービス事業者等は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日までに、指定権者である都道府県等または市区町村に実績報告書を提出します。報告書は「ベースアップ等加算の総額」と「賃金改善所要額」「ベースアップ等による賃金改善額等」の3つで、決められた様式があります。

介護職員等ベースアップ等支援加算の取得要件を解説!

介護職員等ベースアップ等支援加算を取得するためには、じゅうぶんな処遇改善加算を取得していることが条件となります。また、ベースアップ等加算の見込額を上回るように賃金改善をしなければならず、その賃金改善の合計額の3分の2以上は介護職員等のベースアップ等に充てることが求められます。ここでは、介護職員等ベースアップ等支援加算の取得要件について解説します。

1. 処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得していること

処遇改善加算はⅠ~Ⅴの5つに分かれた区分によって、職員1人当たり月額12,000円から37,000円相当の加算を受けとることができる制度です。区分を判断する要件にはキャリアパス要件と職場環境要件があり、キャリアパス要件には賃金体系と研修計画、昇給の仕組みの3つがあります。

処遇改善手当がなくなる?介護職員処遇改善加算の基本知識から2022年に大きく変わった点まで徹底解説

2. 賃金改善の見込額がベースアップ等加算の見込額を上回ること

介護職員等ベースアップ等支援加算で支払われた額を、ダイレクトに介護職員の給与に反映させているかどうかを確認する要件もあります。

最初に届け出る賃金改善計画でどのように職員の賃金を改善するのかを示しますが、この賃金改善の見込額が、介護職員等ベースアップ等支援加算の見込額を上回るように設定されていることも取得要件となります。

3. 賃金改善の合計額の3分の2以上は介護職員等のベースアップ等に充てること

厚生労働省が出している「介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方」では、「賃金改善の合計額の3分の2以上は、介護職員等のベースアップ等(基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げ)に充てること」とされています。一時金としてではなく毎月の給与や手当として支給することで、「ベースアップ」という主旨を満たす必要があるということです。

介護職員以外も加算の対象職員とする場合には、この要件を満たす必要があるので注意が必要です。

介護職員処遇改善支援補助金とはどこが違うの?

2021年11月に政府が発表した「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえ、介護報酬改定で、追加の介護職員等の処遇改善策として設けられたのが「介護職員処遇改善支援補助金」です。「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、この「介護職員処遇改善支援補助金」を恒久化するために制度化されたため内容は似ていますが、手続きに異なる部分があります。

ここでは「介護職員等ベースアップ等支援加算」と「介護職員処遇改善支援補助金」の違いについて解説します。

1. 計画書の提出先が違う

介護職員処遇改善支援補助金はその事業所が所在する都道府県や政令指定都市に申請する制度でしたが、介護職員等ベースアップ等支援加算はそれぞれの事業所の各指定権者に計画書を提出することになっています。

居宅サービス事業所・介護予防サービス事業所・介護保険施設は都道府県へ、地域密着型サービス事業所や居宅介護(予防)支援事業所などは市町村へ計画書を提出するということです。

2. 1カ月あたりの介護報酬総単位数が違う

介護職員処遇改善支援補助金では、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算もまとめて算出していました。これに対して、介護職員等ベースアップ等支援加算では介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算を除いて算出します。そのため、基本情報入力シートの1カ月あたりの介護報酬総単位数も変わってくるのです。

3. 前年度の賃金の総額が違う|令和4年度のみ

確実に賃上げがおこなわれていることを確認するためには、比較対象となる前年度の同じ期間の賃金の総額を示すことが必要です。そのため、介護職員処遇改善支援補助金と介護職員等ベースアップ等支援加算で比較するのは、それぞれ加算する期間に合わせた前年度の賃金になります。

介護職員処遇改善支援補助金では8カ月分、介護職員等ベースアップ等支援加算では令和4年度のみ6カ月分の総額を出すことになるのです。

4. 加算の算定対象月が違う|令和4年度のみ

介護職員処遇改善支援補助金の加算の算定対象月は2021年2月から9月の8カ月分でした。そのため、職員等ベースアップ等支援加算は、開始された2022年度のみ2022年10月から2023年3月までの6カ月分となっています。

2022年2月分と3月分の賃金改善は一時金で対応することが可能でしたが、2022年4月分以降は、ベースアップ等による毎月の賃金改善をおこなうことが必須です。

介護職員等ベースアップ等支援加算の課題とは?

介護職員の平均給与を上げる取り組みは、2012年に処遇改善加算が創設されて以来、制度が上乗せされてきました。そのため、処遇改善加算制度全体がとても複雑になってしまっているのが現状です。介護保険サービス利用者にとっては、加算された介護報酬の1~2割を自己負担することになりますので、利用者負担にならないような制度の検討が必要だともいわれています。

介護サービスの充実に従業員の処遇改善は欠かせない

介護職員等ベースアップ等支援加算は、介護職員の給与の底上げをするための制度です。そのため、一時金ではなく毎月支払う給与や手当の金額を上げることが求められています。慢性的な人材不足が続く介護保険サービスでは、介護に従事する職員への処遇改善をすることが、じゅうぶんな職員を集め、介護サービスの充実や提供するサービスの質の向上させるために不可欠です。

引用元
厚生労働省 令和4年度介護報酬改定について
茨城県 介護職員の処遇改善について
東京都福祉保健局障害者施策推進部 「令和4年度福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算の計画書の提出について」横浜市 【介護保険】令和4年度処遇改善加算<6月以降開始分>届出フォーム
茨木県 介護職員等ベースアップ等支援加算について

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