重度訪問介護従業者とは?必要な資格や働く3つのメリットを紹介
重度訪問介護とは、重度の身体・知的それぞれに障害がある人へ、自宅で安全に暮らすため、サポートをする介護サービスのことです。「重度訪問介護従業者」は、利用者の自宅を訪問し、自宅での暮らしをサポートするため、衣食住すべての支援をおこないます。
今回は、重度訪問介護従業者の業務内容と必要な資格、就業するメリットを解説します。介護職に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
重度訪問介護従業者とは
重度訪問介護従業者とは、6つの障害者支援区分のうち、4〜6に認定された重度の肢体障がい者・知的障がい者を対象に、常にサポートを必要とする方にサービスを提供する職種のことです。
重度障がい者には、身体障害に限らず、知的・精神などの障害も含まれています。行動に著しく困難が見られる人、日常生活のサポートが必要な人に対しても、自宅を訪問して日常生活のサポートをします。
サポート内容には、食事・排泄・入浴・外出といった衣食住にまつわるもののほか、入院支援・生活に関するアドバイスなど、利用者に必要なサポートを総合的におこないます。
訪問介護・居宅介護との違い
重度訪問介護・訪問介護・居宅介護は、どれもヘルパーが利用者の自宅を訪問し、介護を行うサービスです。しかし、法律と対象者に違いがあります。
重度訪問介護と居宅介護は、障害者総合支援法に基づく障がい者(障がい児)のためのサービスで、前者は障害支援区分4、居宅介護は障害支援区分1以上で提供できます。一方、訪問介護は介護保険法に基づく65歳以上の高齢者のためのサービスで、要介護1以上から提供可能です。
居宅介護・訪問介護は、利用者1人に対して1日2回以上のサービスを提供する場合に、2時間以上の間隔をあける「2時間ルール」を遵守する必要があります。一方、重度訪問介護にその縛りはなく、24時間中8時間ごとの交代制で日常生活のサポートをおこないます。
さらに、重度訪問介護従業者は介護計画とその場の機転からサービスを柔軟に決められる、居宅介護は介護計画通りにサービスを提供するなど、サービスの取り組み方に違いがあります。
引用元
厚生労働省:障害福祉サービスの内容
厚生労働省:訪問介護
厚生労働省:重度訪問介護
重度訪問介護従業者として働くための資格の概要
重度訪問介護従業者として働くには、以下いずれかの有資格者であること、さらに重度訪問介護に従事するための資格要件を満たす必要があります。
1. 居宅介護従業者の資格要件を満たす者
2. 重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程・追加課程・統合課程)修了者(※特に重度の障がい者に対しての支援加算を算定する場合は、追加課程・統合課程の修了者のみ)
なお、1は、以下を指します。
1. 介護福祉士、看護師、准看護師
2. 実務者研修修了者、介護職員基礎研修修了者
3. 居宅介護従業者養成研修(訪問介護員養成研修)1級課程修了者
4. 居宅介護職員初任者研修(介護職員初任者研修)修了者
5. 障害者居宅介護従業者基礎研修(訪問介護員養成研修3級課程)
無資格者の場合は、各都道府県にある厚生労働省に指定された機関において「重度訪問介護従業者養成研修」を修了する必要があります。受講するにあたって特別な条件などはなく、基礎課程・追加課程・統合課程を受ける必要があり、学べる知識やスキルは異なります。
ここからは各課程の概要について見ていきましょう。
基礎課程
基礎課程は、重度訪問介護従業者として働くにあたって重要な職業倫理のほか、基礎的な知識や技術を習得するカリキュラムです。基礎課程を修了すると、障害者区分4~5の利用者へのサービス提供ができるようになります。科目や時間は下表のとおりです。
区分 | 科目 | 時間 |
講義 | 重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義 | 2時間 |
基礎的な介護技術に関する講義 | 1時間 | |
実習 | 基礎的な介護と重度の肢体不自由者とのコミュニケーション技術に関する実習 | 5時間 |
外出時の介護技術に関する実習 | 2時間 | |
合計時間 | 10時間 |
追加課程
追加課程は、7時間の講義にくわえて、障害支援区分5または6の利用者の自宅に訪問する実習も含んだカリキュラムです。追加課程を修了すると、障害者区分6の方に対するサービスを提供できるようになります。科目や時間は下表のとおりです。
区分 | 科目 | 時間 |
講義 | 医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者の障害及び支援に関する講義 | 4時間 |
コミュニケーションの技術に関する講義 | 2時間 | |
緊急時の対応及び危険防止に関する講義 | 1時間 | |
実習 | 重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習 | 3時間 |
合計時間 | 10時間 |
統合課程
総合課程は、基礎課程・追加課程それぞれの内容にくわえて、喀痰吸引や経管栄養などの実務スキルを学ぶことができるカリキュラムです。20.5時間と最も時間の長い過程ですが、障害支援区分4~6の利用者への介護業務ができるようになります。
区分 | 科目 | 時間 |
講義 | 重度の肢体不自由者の地域
生活等に関する講義 |
2時間 |
基礎的な介護技術に関す
る講義 |
1時間 | |
コミュニケーションの技術
に関する講義 |
2時間 | |
喀痰吸引を必要とする重度障害者の障
害と支援に関する講義・緊急時の対応 及び危険防止に関する講義① |
3時間 | |
喀痰吸引を必要とする重度障害者の障害と支援に関する講義・緊急時の対応
及び危険防止に関する講義② |
3時間 | |
演習 | 喀痰吸引等に関する演習 | 1時間 |
実習 | 基礎的な介護と重度の肢体不自
由者とのコミュニケーションの技 術に関する実習 |
3時間 |
外出時の介護技術に
関する実習 |
2時間 | |
重度の肢体不自由者の介護サー
ビス提供現場での実習 |
3.5時間 | |
合計時間 | 20.5時間 |
なお、それぞれの受講料は、各都道府県が指定する研修実施事業所および介護スクールによって異なります。詳しい費用について知りたい方は、最寄りの研修実施事業所または介護スクールに問い合わせることをおすすめします。
重度訪問介護従業者として働く3つのメリット
重度訪問介護従業者の資格は、研修の受講・修了だけで取得できます。重度訪問介護従業者として働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、具体的なメリットについて見ていきましょう。
1.就職と給料アップにつながる
一つめは就職と給料アップにつながることです。高齢化社会である現代では、重度訪問介護の利用数が増加しています。そのことから、研修を修了していれば、専門知識を身につけていることが明らかです。そのことから、業務の幅が広く即戦力と判断され、就職しやすいほか、給料アップにつながります。
2.介護職としてスキルアップできる
二つめは介護職としてスキルアップできることです。上述したように、重度訪問介護従業者養成研修の修了によって、介護職員として高い専門知識が身につきます。そのことから、これまで介護職に就いていた人でも、よりスキルの高い介護士として活躍できます。
モアリジョブでは、K-WORKERの神楽坂営業所で訪問介護士として働く、仙波佑さんのインタビュー記事を公開しています。特別養護老人ホームやデイサービス、管理職など、幅広い介護業務を経験される仙波さんは、訪問介護についてこのように話しています。
- 「利用者さまの小さな変化に気づき、いいケアができたときはとてもやりがいを感じますね。やはり、介護はひとりでやるものではなくて、みんなで力を合わせるものだと思っています。
医療行為など、直接的に利用者さまの傷や病気を治せるわけではありませんが、『昨日と違う今日に気づく』といったところは長けていると思うので、注力しています。その些細な気づきから医療と連携して、病気を未然に防ぐことにつながるんです。」
引用元
訪問介護へ心機一転!より満足度の高い介護サービスを目指す/介護リレーインタビューVol.25【訪問介護士・仙波 佑さん】
3.コミュニケーションスキルを伸ばせる
三つめはコミュニケーションスキルを伸ばせることです。重度訪問介護従業者の業務のなかには、言葉に頼れない方もいらっしゃいます。言葉を使うことができない場合、目線・表情・手の仕草などを使ってサインを出します。重度訪問介護従業者は、このサインを見逃さず、適切なコミュニケーションを取りながら柔軟に対応する姿勢が求められます。
重度訪問介護従業者としての経験は、洗練されたコミュニケーションスキルにつながり、日常生活に活かせることも大きなメリットです。
重度訪問介護従業者養成研修の受講におすすめのスクール3選
ここからは重度訪問介護従業者養成研修の受講におすすめのスクールを3つご紹介します。
1.ミッレケアアカデミー|重度訪問介護従業者養成研修
「ミッレケアアカデミー」の研修は、介護専門学校の現役人気講師をはじめ、現場で活躍する現役看護師など、各分野のスペシャリストが真面目ながら面白く解説するのが特徴です。
講習は全部で2日あり、受講料はテキスト代金を含む25,000円(税込)です。「介護事業所みっれ」に就業を希望し、採用条件に合致する人は受講料が0円になります。なお、実地研修の費用は受講料に含まれていません。詳細については下記ページよりご確認ください。
2.ホームケア人助|重度訪問介護従業者養成研修
株式会社健助が運営する「ホームケア人助」の研修は、最短3日で受けられます。各カリキュラムの受講料については明記されていません。詳細については下記ページよりご確認ください。
ホームケア人助:スクール案内 | 重度訪問介護従業者養成研修
3.ユースタイルカレッジ|重度訪問介護従業者養成研修
「ユースタイルカレッジ」でも重度訪問介護従業者養成研修を受けることが可能です。無資格者用のノーマルコースは132,000円、重度訪問介護従業者養成研修総合課程は30,000円で受講できます。
なお、東京(中野坂上)校・横浜校・名古屋校の場合と、これらの学校を除く学校とでは、カリキュラムの受け方や内容の一部が異なる場合があるようです。詳細については下記ページで確認するか、最寄りの学校に問い合わせることをおすすめします。
重度訪問介護従業者養成研修統合課程-講座紹介
受講料一覧 | 実務者研修・重度訪問介護従業者養成研修統合課程の資格スクール
重度訪問介護の従事に必要な資格を取得して、介護職としてのキャリアアップを目指そう!
重度訪問介護は、重度の障害を持つ人として認定された利用者の日常生活を、臨機応変な姿勢をもってサポートする仕事です。通常の訪問介護に比べて広いサポートが必要になるほか、高いコミュニケーション能力も求められるので、介護従事者としてのスキルアップが見込める職種と言えるでしょう。
なお、重度訪問介護従業者に必要な資格がない場合は、重度訪問介護従業者養成研修を修了する必要があります。2~3日ほどで修了できる研修ですから、この機会に修了し、介護職としてのキャリアアップを目指しましょう。