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特集・コラム 2023-02-07

介護処遇改善加算とは? 介護職員以外も対象になるの?|介護職員ベースアップ等支援加算との違いとは

介護処遇改善加算が創設されてから、かなりの年数がたちました。ですが、まだまだ介護処遇改善加算についての認知度は低いといえます。ここでは、介護処遇改善加算とはどんな制度なのかを詳しくお伝えしていきます。

また、疑問に上がるもののひとつとして介護職員ベースアップ等支援加算との違いがあります。この違いについても、理解を深めていきましょう。

処遇改善加算とは?

厚生労働省が介護職員の処遇を改善するためにつくった介護処遇改善加算。これはどのようなものなのか、どのような背景でできたのかなど詳しくみていきます。

処遇改善加算が創設された背景とは?

介護員処遇改善加算が創設された背景として、厚生労働省は以下のように述べています。

「平成23年度まで実施されていた福祉・介護人材の処遇改善事業における助成金による賃金改善の効果を継続する観点から、平成24年度から当該助成金を円滑に障害福祉サービス等報酬に移行し、当該助成金の対象であった障害福祉サービス等に従事する福祉・介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設」

少子高齢化の影響で高齢者が増え、介護が必要な人口が増えている一方で介護職の処遇についてはお給料も安く、満足するようなものではありませんでした。このような状況を加味し、介護職員の処遇を改善して介護職員の確保をしていくことがこの制度が創設された背景です。

対象者は介護職員|介護職員以外も対象になる?

介護処遇改善加算の対象者は、介護職員のみです。ただし、介護職員ではなくても、この処遇改善加算の対象となる場合があります。直接介護に関わっているということが最低条件で、たとえば看護師やケアマネなどが介護職の仕事を兼務していた場合は介護処遇改善加算の対象です。

非正規でも対象者になる?

介護の実務に従事しているということが介護処遇改善加算の条件となるため、雇用形態は正規でも非正規でも関係ありません。看護師やケアマネなどの資格であっても、介護職を兼務している場合にはその時点で加算を受けられる権利があるのです。

処遇改善加算の算定要件とは?

処遇改善加算を受けるためには介護処遇改善加算の算定要件を満たしていることが必要です。この算定要件がわかっていなければ処遇改善加算が受けられません。介護職員処遇改善を受けるための算定要件とはなにかをここでは詳しくご紹介します。

加算に必要な2つの条件とは?

加算には2つの条件が必要です。この条件を満たすことによって、処遇改善加算を受けられるかどうかが決まります。介護職員食遇改善加算の算定要件にかかわる2つの条件についてチェックしていきましょう。

キャリアパス要件

キャリアパス要件とは、介護職員がこの職場で働いた場合に、自分のキャリアを磨いていけるのか、キャリアに見合った処遇をしてもらえるのかどうかを示すものです。キャリアパス要件は3つあり、このキャリアパス要件をどのくらい満たしているのかによって加算の金額は大きく変わります。キャリアパス要件の具体的な内容は次のとおりです。

1.職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
2.資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
3.経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

職場環境等要件

職場環境等要件とは、賃金改善を除いた職場環境等の改善のことを示します。具体的には研修の実施などキャリアアップに向けた取組、ICTの活用など生産性向上の取組等の実施を求めており、次の6区分のうちひとつ以上に取り組んでいることが必要です。

・入職促進に向けた取り組み
・資質の向上や キャリアアッ プに向けた支援
・両立支援・多様な働き方の推進
・腰痛を含む心身の健康管理
・生産性向上のための業務改善の取組
・やりがい・働きがいの醸成

たとえば、研修で腰痛対策のための講義・働きながらの資格取得の支援・託児所の設置などをすれば、職場環境等要件を満たせます。

3つの算定要件を紹介

ご紹介した処遇改善加算に必要な要件を満たすことで、加算を受けられるのですが、算定要件の満たす量によって加算の金額が大きく変わります。先ほどの必要な要件を踏まえたうえで、3つの算定要件をチェックしていきましょう。

加算(Ⅰ)

加算Ⅰの算定要件は、すべてのキャリアパス要件と職場環境等要件を満たすことです。これにより介護職員1人あたり月額37,000円相当の加算が受けとれます。加算を取得した事業所においては、加算相当額の賃金改善をおこなうことが必要となるという点を必ず念頭に置いておきましょう。

加算(Ⅱ)

加算Ⅱの算定要件は、キャリアパス要件の1と2にくわえて、職場環境等要件を満たすことです。これにより介護職員1人あたり月額27,000円相当の加算を受けとれます。

加算(Ⅲ)

加算Ⅲは、キャリアパス要件の1か2にくわえて、職場環境等要件を満たす必要があります。これにより介護職員1人あたり、月額15,000円相当の加算を受けとれます。キャリアパス要件はどちらかひとつを満たせばよいため、比較的加算を取得しやすいかもしれません。

介護職員等特定処遇改善加算とはどこが違うの?

介護処遇改善加算と混同されやすいのが、介護職員等特定処遇改善加算です。
介護職員等特定処遇改善加算とは、「経験・技能のある介護職員について、ほか産業と遜色ない賃金水準を目指して重点的に処遇改善を図る」ということを目的としています。ですので、介護処遇改善加算との大きな違いは介護職員としての経験が加算に大きく左右されるという点です。

ほかにも、介護処遇改善加算とは異なる点が大きく3つあるため、この違いについてもおさえておきましょう。

対象者が違う|3つの区分で配分

介護職員等特定処遇改善加算の対象者は介護福祉士となり、この資格を所有していない介護職員は対象外となってしまいます。

介護福祉士の資格を所有しつつ、勤続年数が10年以上を条件としていますが、この10年はあくまで目安です。たとえばほかの職場での経験が豊富で勤続年数10年と同等のキャリアやスキルをもっていると事業所が判断した介護福祉士も対象となります。

対象者は「経験・技能のある介護職員」だけでなく、「ほかの介護職員」、「そのほかの職種」と3つの区分で配分可能で、事業所ごとの裁量によります。

算定要件が違う|処遇改善加算がベース

介護職員等特定処遇改善加算の算定要件は、処遇改善加算をベースに設定されています。

・介護処遇改善加算 (Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを算定して いること

・福祉・介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取り組みをおこなう こと
※この取り組みについては処遇改善加算と同じものでもかまいません。

・情報公表システム等において、取り組んでいる職場環境等要件の内容等を公表していること
※公表予定も含まれます。原則としては、情報公表システムで公表をしなければなりません。事業所のホームページがある場合は、ホームページでの公表も認められます。
公表する内容は、処遇改善に関する加算の算定状況と賃⾦以外の処遇改善に関する具体的な取組内容です。

介護職員等ベースアップ等支援加算とはどこが違うの?

介護職員等ベースアップ等支援加算は、令和4年10月の介護報酬改定によって創設された、新しい加算ですので、聞きなれないという方もいらっしゃるかもしれません。

介護職員等ベースアップ等支援加算とは、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえたうえで、収入を月額平均9,000円相当にあたる3%程度引き上げるための措置を講じることを決めたものです。この収入が確実に金銭として働いている方の手元にわたるように、適切な担保策を講じるよう明記されています。介護処遇改善加算との明確なちがいは次のふたつです。

対象者が違う|柔軟な運用が認められている

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象者は介護職員です。この点については、介護処遇改善加算と変わりありません。

相違点は、介護職員等ベースアップ等支援加算は柔軟な運用が認められているという点です。事業所の判断によって、介護職員ではないほかの職員もこの処遇改善の収入を充てることができます。ですから、この加算を活用した看護師や送迎サービスのドライバーなどの賃金アップについては、施設の判断にゆだねられているのです。

算定要件が違う|処遇改善加算がベース

処遇改善加算がベースになっているのが共通点ですが、算定要件が異なります。介護職員等ベースアップ等支援加算の算定要件は次のとおりです。

・処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得していること
・賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の2/3は介護職員等のベースアップ等に使用すること

ベースアップとは、基本給もしくは毎月必ず決まって支払われている手当の引き上げのことを指しています。

介護処遇改善加算は介護職員の処遇改善のベースとなるもの

介護処遇改善加算は、介護職員が働きやすいように体制を整えた職場に与えられる加算です。ほかの制度よりも、介護職の職場環境やキャリアアップができる環境かどうかという点が重要視されています。介護にかかわる方たちの処遇改善のベースとなるものですので、施設側としてはできるだけこの加算を獲得し、介護職員からの信頼に結びつけていきましょう。

引用元
厚生労働省 処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)
厚生労働省 介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
厚生労働省 福祉・介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
大阪市 介護サービス関係 Q&A集(厚生労働省) 介護職員処遇改善加算分【抜粋】
厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内
厚生労働省 令和4年度介護報酬改定の概要

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