自分の言葉による発信が同じ想いを持つ人をつなげる【ナチュラルセラピー心緑 佐藤智子さん】#2
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、事業運営のための取り組みについてインタビューする本企画。前回に続き、宮城県仙台市を中心に活動している「ナチュラルセラピー心緑」代表・佐藤智子さんにお話をお聞きします。
後編では、スクールや協会に人を集めるための取り組みや、地方でヘルスケアの仕事をするために大切にしていることをお聞きします。
お話を伺ったのは…
「ナチュラルセラピー心緑」代表 佐藤智子さん
宮城県仙台市にて、植物療法のスクール「ナチュラルセラピー心緑」を運営。代表講師として活動する傍ら、「植物療法サロン心緑」主宰、「一般社団法人地域福祉アロマケアラー協会」理事として、アロマを取り入れた心身のケアを広く伝えている。
ウェブを通した発信でも、自分の言葉で語れば想いは伝わる
――サロンや協会の集客面では、どのような取り組みをされていますか?
自分が楽観的すぎるのかもしれませんが、ご縁のある方とは自然とつながるだろうと思うので、そこまで力を入れて取り組んではいないんです。自宅サロンをしているときは、自分で最低限のホームページやチラシを作っていました。まずは見つけてもらわなければならないので、ホームページやSNSなどの発信は必須だと思います。その時、自分自身も意識しているのが、ちゃんと自分の想いが語られているか。それに共感した方が繋がってくれるので、そこは大切ではないでしょうか。
協会の宣伝活動というのも、ホームページとSNSがメインです。最近は更新の頻度が落ちてしまっているんですが、マメに発信していくことの大切さは肌で感じています。今年はホームページも、もっと動かしていきたいです。
集客はこのようにウェブがメインですが、紹介からというのも多いです。生徒さんや会員さんの紹介で来てくださる方もいらっしゃいます。
――ウェブでの集客がメインですと、県外の方も多いですか?
多いですね。もちろん地元の方もいらっしゃいますが、福島や山形、岩手などの東北地方からは、対面のレッスンにいらしてくださいます。
また、こういう時代ですので、オンラインの講座も増えました。触れ方を伝えるものなので、やはり対面がメインではあります。でもタッチケアの考え方の部分は、オンラインで集中して非常に濃いお話合いができるメリットも感じています。オンラインを始めて、東京や愛知、九州など、かなり離れた地域の生徒さんも増えました。
例えば東京ー仙台と距離が離れていても、練習風景をオンラインでつないでアドバイスしたり、時々行き来をして交流することもあります。純粋に、みんなの「パワーを活かしたい」という気持ちがつながって、お互いに刺激し合って向上していける関係性が生まれているなと感じます。
――地方での活動で人に来てもらうには、何が大切だと思いますか?
地方は都心に比べて人口が少ない分、集客に苦労するイメージがあるかもしれませんが、結果的にやり方次第なのではないでしょうか。人口の差は集客にも影響するのは確かですが、先程もお話しした通り、オンラインで全国どこでも繋がることもできますから。
卒業生さんのサロンや、地方で開業した友人や知人で事業を長年継続している人達も、たくさん知っています。その共通点は何かというと、1つは「アナログ集客」も絡めて地道に活動している人ばかりだということ。Web集客も今の時代に必須なのですが、ネットやスマホが苦手な人もたくさんいらっしゃるので、紙媒体や時には電話やメールなどを活用するのことも必要だと思います。
2つ目は、事業が変化し続けていること。地方に根を下ろしているからこそわかるニーズを拾い、新たなメニューを増やしたり導入したりして、いつも変化し続けている。そんな人のところに、お客様が集まり続けるんだと感じます。
地域のつながりを軸にしつつ、輪を大きくする視点も必要
――地方でヘルスケアの仕事をするうえで大切なこと3か条を教えてください。
1.自分がいる場所のニーズを知る
2.身近な人とのつながりを大切にする
3.輪を広げ連携する視点を広く持つ
やはり地域によって何が求められているかは違います。私は仙台市ですが、市内のニーズと少し離れた郊外のニーズは、やはり少し違う。そこを知ったうえで、自分に何ができるかを考えるのが第一段階だと思います。
また地域は良くも悪くも、人間関係が大切になってくるので、やはり身近な人とのつながりは重要です。そこから協同することで何かが生まれることもあります。地域に入っていければ、濃い人間関係も築きやすいと思います。そういったコミュニティーを作ることも、事業をしていくうえで大切なことなのではないでしょうか。
それができたら、次は少し輪を広げて、より大きな連携する視点を持つ。例えば行政と関われないかとか、医療や福祉とつながれないか…ということも考えていけたら、活動の幅も広がると思います。
――地域福祉アロマケアラー協会も、そういった経緯での設立でしたね。
そうなんです。だからみなさんにも、活動を広げるきっかけとして、協会を活用して欲しいなと思うんです。個人の活動は、やはり範囲が限られますよね。だけど、同じ想いを持った人同士がつながれば、できることも広がります。協会というものには、その理念に共感したいろいろな立場の人が集まるものなので、同じ想いの方とつながりやすい。だから、是非活用していただきたいし、私も何か力になれることがあれば協力したいと思っています。
助けてくれるのは人。人との縁を大切に活動を続けたい
――今後の展望を教えてください。
ずっと宮城県で生まれ育ってきて、昔は都心に憧れたりもしましたが、今は自然が身近にあり人情味あるふれる東北にとても愛着を感じています。大切な地域の方たちと、アロマやタッチケアを通してつながりたい。また現代のSDGSの流れに、アロマセラピーで貢献できる可能性も感じています。
そこで今年は、地域の植物から取れるアロマ作りがしたいと思っています。まずは店販用に、日本産の樹木や果実から取れるアロマを使った、オリジナル商品を初めて作りました。ゆくゆくは福祉の現場で使える地産地消のアロマを、協会でも作っていきたいですね。
地元でとれた材料で作られたアロマは、やはり日本人になじむと思うんです。とくに高齢者の方などには、西洋のアロマよりも、ヒノキやミカン、ゆずなどの身近な香りの方が好まれるので、日本人になじみのある香りのものを作れたら。
あとは、コロナ禍が落ち着いたら会員さんたちと一緒に、地域の施設に訪問するボランティア活動も再開したいです。またそういう機会があれば、ぜひどんどん活動していきたいですね。
――最後に、これから地方でヘルスケア事業開業を目指す方にアドバイスをお願いします。
細く長くですが10年以上続けてこられたのは、やはりお客様や生徒さんのおかげだと心から思っています。大変なこともありましたが、何とか乗り越えてこられたのは、身の周りの人のおかげでした。
とくに地方はリアルな結びつきというのが大事なので、まずは周りの人間関係を大切にして欲しいです。今はネットで探せばあらゆる情報が手に入り、リアルなつながりが無くても成立することは多い世の中になりました。でも、やはり人とのつながりはビジネスの上でとても大切。相談者は身の周りにいると思いますよ。
つながりを作るには、相手と関わりが生まれるきっかけを提示すること。私自身がそうしていこうと思っていることなのですが、例えば自己紹介のときに、ただ「スクール講師です」と言うのではなく、「アロマを使ってこんな活動をしています」と具体的に伝える。そんなふうに、自分をPRして開いていくことが大切なのかなと思います。「あなたに何かを提供できるかもしれない」という姿勢を示し、そこで関係が生まれれば、地方だからこその強いつながりになっていく可能性もあると思います。
娘さんとの生活のなかでアロマに出会い、多くの事業を通してアロマの魅力を伝えるまでになった佐藤さん。アロマと福祉をつなげる活動だけでなく、地域の素材を使ったアロマの開発など、これからも活動の幅が広がりそうです。地方でアロマセラピストの活動をしている方、これからスタートする方は、是非参考にしてみてください。
取材・文/山本二季