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ヘルスケア 2023-03-30

眠れない妻を救った東洋医学。可能性を信じて専門院を立ち上げ「クボ鍼灸院」

2021年に開業された「クボ鍼灸院」。全国でも数少ない東洋医学専門の鍼灸院として話題を集め、遠方からも多くの患者さんが訪れています。前編では西洋医学の鍼灸師だった久保さんが、なぜ東洋医学専門の鍼灸院を立ち上げたのかを伺いました。転機となったのは、妻・里菜さんの産後の不調。その里菜さんを救った東洋医学に可能性を感じ、開業に至ったといいます。

今回、お話を伺ったのは…

久保和也さん

クボ鍼灸院・院長/鍼灸師
鍼灸接骨院で経験を積んでいたときに、妻の不調を経験したことから、東洋医学の可能性を感じるようになり、2021年6月に東洋医学専門の「クボ鍼灸院」を開業。これまで延べ2万人に施術を行い、慢性疾患の改善を行っている。また東洋医学を広めるためSNS発信にも力を入れており、Twitterのフォロワー数は2万人、YouTubeのチャンネル登録者は1.5万人を超える。

Twitter

今の自分には妻を救えない。絶望の先にあった希望

「クボ鍼灸院」開業のきっかけについて話す久保さん

――「クボ鍼灸院」は全国でも数少ない東洋医学専門の鍼灸院だとお聞きしました。西洋医学の鍼灸師だった久保さんが、東洋医学専門で独立された理由は?

妻の不調が東洋医学によって改善されたことが、きっかけです。妻は一度目の出産後にも体の不調がありました。西洋医学に頼っても改善が見られず、僕も何かできないかと考え東洋医学について独学で勉強を始めたんです。2人目の産後は眠れない、無気力で外に出られないなど、さらに症状が悪化。当時の自分が持っている能力や知識ではまったく力になれず、疲れているのに一睡もできない妻のそばで、ただただ無力さを感じていました。

その後、妻は東洋医学の先生にかかり、鍼と漢方の治療で症状が改善。東洋医学に大きな可能性を感じました。その頃がちょうどコロナ禍の時期で、当時勤めていた治療院を閉めていたこともあったので、1年間の育休を取得させてもらい、東洋医学についてしっかりと学び直しました。その後、東洋医学専門の鍼灸院を開院したんです。

――東洋医学専門にしたのは、他の鍼灸院との差別化が目的ですか?

差別化を図ったというより、東洋医学しか治せない妻という存在が身近にいたために、東洋医学でしか救えない患者さんが多いことに目が向いたというところでしょうか。またこれまで以上に幅広く患者さんを救えるという思いもありました。世界保健機構(WHO)の草案のなかで鍼灸治療の適応疾患、つまり鍼灸治療によって改善が認められる症状を、神経系、運動器系、循環器系、呼吸器系など13カテゴリーの49種に定めています。そのうち西洋医学的な鍼灸治療の場合が対応できるのは運動器系の疾患、9種のみになりますが、東洋医学的な鍼灸治療は、先生のなかには得手不得手がありつつも、その疾患のほぼすべてをカバーすることができるんです

鍼灸師のなかでも1割以下。東洋医学専門の鍼灸師として

東洋医学的な鍼灸治療に大きなやりがいを感じているという久保さん

――西洋医学的な鍼灸と東洋医学的な鍼灸は、治療範囲以外にも何か違いがあるのでしょうか?

実際の治療方法も大きく違いますね。西洋医学的な治療の場合は、患部である局所に鍼をして筋肉をゆるめます。一方の東洋医学的な治療の場合は、症状が出ているところ以外にも痛みや不調がないかを問診で聞き、その方の体質や、弱っている部分を見極めたうえで、鍼と灸を用いながら治療をしていく方法です

――同じ症状を抱えていても、西洋医学と東洋医学でアプローチが変わるということですか?

そうです。たとえば腰痛の場合、西洋医学的な治療では、たとえば無理な体勢をとってぎっくり腰になったとか、腰を打ったというようなケースの場合に治療が可能で、その患部の部分に鍼を打つんです。要は構造的に何かにぶつかったとか、筋肉などが硬くなり神経を圧迫されたとか、そういった物理的なダメージに対して対応が可能になります。

一方、腰痛というのは物理的なダメージで起こるだけではなく、血流障害などの理由でも起こることがあります。人間の体は、血液や水、体液が常に体を巡っているので、その流れが滞ると筋肉が硬くなったり、筋肉を回復させる栄養が行き届かなくなってしまいます。こういったケースの場合に、全身の経脈やツボに鍼を使ってアプローチしていくのが東洋医学的な鍼灸です。ちなみに東洋医学的な鍼治療を行える先生は少なく、全国の鍼灸師のなかでも1割以下だといわれています。

――どのくらいで結果が出るものなのでしょうか?

治療の頻度にもよりますし、個人差も大きいのですが、3~4回の通院で改善する方もいれば、1年くらいかかる方もいらっしゃいます。また慢性的な症状の場合、根本原因がその方の仕事によるものだったりすることもあって。たとえばデスクワークでずっと座りっぱなしというような方です。そういった場合は、仕事が変わらない限り完全に症状を改善することはできないので、治療から予防に切り替えて通っていただくことも多いです。疲れが出てくると症状が出やすくなるので、その1歩手前で通っていただく形です。

症状改善の結果を出すために、丁寧な問診にこだわる

何年も悩んでいた慢性疾患が改善したという喜びの声が、久保さんの元には日々寄せられているそう

――鍼灸師として心がけてきたことは、どんなことですか?

結果にこだわることです。東洋医学の治療というのは、劇的に症状が改善するのではなく、患者さんとの信頼関係を積み上げて通い続けていくことで徐々に改善していくものです。だからこそ、東洋医学の良さは症状の改善でしか証明できないと思っています

――結果を出すために、具体的にどんなことをされていますか?

問診に力を入れることですね。西洋医学的な鍼灸に携わっていたときは、患者さんから主訴を聞いて、体を動かしてもらい、関節の可動域や筋肉の硬さを見てすぐに施術に入っていたのですが、東洋医学的な治療では主訴以外にもありとあらゆる体の不調について問診を行います。月経異常、末端冷え性、喘息、アトピーなどの症状の有無や、眠れているか、朝起きづらさはないかなど生活習慣についてもかなり細かく聞きます。そういった情報を総合して、その方の体質や体のどこが弱っているかなどのあたりをあらかじめ見つけてから施術を行うことで、効果的な治療が可能になります

――具体的にはどのくらい時間をかけていますか?

初診の場合は30分くらいかけてお話を聞くこともあります。病院などでは、ここまで事細かに聞かれることはほとんどないと思うので、それだけでも安心してくださいますし、喜んでくださいます。また自分の精神的な辛さを吐き出して泣かれる方も多いです。精神的にため込んでいるものがあると、体にも不調をきたすので、精神面も含めて状況を確認し、施術に臨んでいます。


後編ではTwitterのフォロワーが2万人を超える久保さんに、どのようにして認知を広げていったのかを伺います。ペルソナ設定をしっかりした発信でフォロワーを獲得してきたという久保さん。もう1つ大切にしてきたのが、SNSで同業の先生とつながりを持つことだといいます。同じ思いを持った先生方から借りた信頼により、フォロワー数が増えたり、来院につながることも多かったそうです。後編もお楽しみに!

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