地方開業の経験を活かして、地方と都心をつなぐ存在になりたい【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.75 ヨガスタジオリブラ 大久保千聖さん】#2
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、集客や売り上げアップのための取り組みについてインタビューする本企画。前回に続き、山梨県大月市に移住してヨガスタジオを運営している大久保千聖さんにお話をお聞きします。
後編では、前編でうかがった「地方で開業するために大切なこと3か条」を深掘り。地方でスタジオ経営をするうえで大久保さんが大切にしていることを教えていただきました。
お話しをうかがったのは…
「ヨガスタジオ リブラ」主宰 大久保千聖さん
神奈川県横浜市出身。大学卒業後、大手ヨガスタジオに入社。2013年12月、山梨県大月市に移住し、「ヨガスタジオリブラ」をオープン。メノポウヨガ®、腰楽スッキリヨガ®を考案し、2022年11月15日に東京都八王子市にて「シーメノヨガスクール」をオープンする。ヨガインストラクターの養成にも尽力している。
Instagram:@li.bra1016
予約不要で通い放題。地域の方がいつでも立ち寄れる場所に
――前回、地方でヨガスタジオを開業するために大切なこととして、まず「通いやすさ」を重視されているとのことでした。
ヨガスタジオリブラの特徴のひとつとして、予約不要で朝から晩まで1日何回でも通い放題というメニュー設定があります。月々の会員制で、曜日ごとに決めたレッスンに何時間でも参加可能。生徒様には「来たいときにいつ来てもいいですよ」とお伝えしているので、ご自分のスケジュールに合わせて調整していただけます。そこが多くの方に「ここなら通える」という選択をしていただけているポイントかなと思います。
――オンラインなどもされていないんですね。
そうですね。コロナ禍が始まった当初はオンラインをするか迷ったんですが、私自身、対面レッスンが好きですし、生徒様たちのその日のお顔を拝見することで体調なども読み取れます。オンラインでは、この貴重な感覚が取得できません。だから、オンラインレッスンの選択はしませんでした。
大月市では1年ほど感染者が出なかったので、2020年の5月だけ人数制限をしましたが、それ以降は予約不要通い放題を続けられています。都心や横浜だったら難しかったと思うので、地方でよかったなというのをすごく感じましたね。
深いコミュニケーションと、飽きさせない施策で継続率アップ
――地方でのスタジオ運営では、生徒様とのコミュニケーションも重要とのことですが…。
そうですね。都心でレッスンをしていたときは、レッスンをしてお見送りして、またお出迎えして…というルーティンが基本なんですが、地方ではレッスンだけというのは難しいなと思います。とくに移住してきた私の場合、受け入れていただく立場になるので、レッスンだけでなくプライベートも含めてのコミュニケーションが必要。誘っていただいたお食事やイベントには極力出向くようにしたり、レッスン前後での会話を積極的に行ったり。ヨガのことに限らず、ご家族のお話や習い事の話など、お伺いさせてもらいました。生徒様おひとりおひとりに興味を持ち、お話に加わらせてもらいコミュニケーションを図っています。
最初の1・2年は、生徒様も私がどういう人なのかをよく見てらっしゃるので、やはり少し距離を感じましたし、私自身も「失敗できない」という緊張感があったように思います。でもレッスンやプライベートでのコミュニケーションを積み重ねることで、3年目以降は家族のように接してくださるようになりました。その結果、「この先生なら信頼できる」と、新しい生徒様を連れて来てくださる。コミュニケーションを通して人間性を見られているんだなという感じがします。
――長年通われている方が多いのも、コミュニケーションの結果ですね。
そういった方々を飽きさせない施策とは?
例えば東京から講師をお呼びしたイベントや、この地域では売っていない素敵なヨガウエアの販売会などは定期的に行っています。また生徒様たちが懇親会を企画してくれることもありますね。そういったイベントを節々に取り入れることで、飽きずに続けていただけるように努力する必要があるなと思います。
また昨年開発したメノポウヨガ®や腰楽スッキリヨガ®というのも、生徒様が飽きずに継続して通っていただける要素になっていると思います。もっと健康なものが手に入るという面でも、すごく喜んでいただけていると感じます。
――新しいプログラムの開発も良い効果があったんですね。
はい。コロナ禍になり、みなさんの健康意識が変化した中で、メインのお客様層である50・60代の方々が喜んでくださるプログラムを作りたいというのが、開発のきっかけでした。また今年11月15日から八王子にオープンする、ヨガ資格が取れる「シーメノヨガスクール」のビジネスの軸としても考えて開発しています。
八王子でのスクール運営を通して、大月市への恩返しを
――このタイミングで八王子にスクールを出された理由は?
知らない土地でヨガスタジオをスタートして、9年も運営させていただきました。このノウハウというか地方特有の運営方法というか、私がこれまでやってきたことを一度アウトプットしたいなと思ったんです。コロナ禍になり地方移住される方も増えている中で、先人として何かお役に立てるはずという気持ちもありました。
その場所として八王子を選んだ理由は、スタジオのある大月市からアクセスがよく、埼玉など他の地方ともつながっているからです。また同じスタイルの養成スクールが、都心のほうにはあっても郊外にはあまりないので、そういったビジネス面でも八王子は理想的でした。
地方の人口がどんどん減っていく中、八王子にひとつお店を出してネットワークの中核的な役割を作ることが、大月市のスタジオを守ることにもつながるんじゃないかと考えています。
――今後の展望は?
この9年で地域に根付かせていただいたので、今後は都心へのアクセスが良い大月市の立地を活かして、大月市と八王子近郊の東京をつなぐヨガスタジオとして発信していけたらと思っています。大月市でヨガを伝えたいインストラクターや大月市に通いたい生徒様を募り、どこからでもどなたでも、ヨガを通して大月市に足を運んでいただけるような受け入れ態勢を作りたいです。
またシニア向けのヨガレッスンも充実させたいです。私を受け入れていただいた大月市の方々への感謝の気持ちを忘れずに、これからも地域の方々の健康のために、できることに尽力していけたらと思っています。
――最後に地方開業を目指す方にアドバイスをお願いします。
大切なのは、いかに信頼を得られるか、絆を深められるか。それが結果的に新規の方を繋いでくださるので、ありきたりなんですけど、時間を割いてスタジオに来てくださる方を大事にすること。真摯に土地の方々と向き合い、その土地の文化にも溶け込み、絆を深めることが、すべて集客につながるんじゃないでしょうか。
取材・文/山本二季
Information
住所:山梨県大月市大月1-11-18 チドリヤ2F
住所:東京都八王子市明神町4-1-2 ストーク八王子206号室