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介護・看護・リハビリ 2020-01-13

ユニット型介護施設と24時間シート

従来の多床室型の特別養護老人ホームでは、起床や食事、入浴、就寝など、入居者全員が同じ生活スケジュールに従って、介護を受けることが一般的でした。しかし、近年のユニットケア型の施設では、利用者一人ひとりのライフスタイルに合わせた個別ケアを大切にしています。

しかし、個別ケアを提供するとは言っても、そう簡単なものではありません。利用者によって寝たい時間や好きなもの、こだわりなどは様々ですし、それを日勤・夜勤問わず、すべての職員が共有しておかなければならないのですから。そこで便利なのが、今回の記事でご紹介する「24時間シート」なのです。

24時間シートの目的

「朝食時の飲み物は利用者全員に温かい日本茶を出している」という施設も少なくないと思います。しかし、飲みたい物は人それぞれです。Aさんは『温かい紅茶』を飲みたいと思っており、Bさんは『アイスコーヒー』、Cさんは『常温のほうじ茶』などのように、人によって欲しい飲み物は違うのです。そこで、それぞれの好みを「24時間シート」に記録し対応することによって、利用者一人ひとりに満足した暮らしを営んでもらうことが目的なのです。

24時間シートは「必ずこのシートの手順に従って行動しましょう」という意味ではありません。趣味や好みを職員全員で共有し、「どうしたら一人ひとりの生活をサポートできるか」などの課題・目標を理解するための、現場サイドのツールなのです。

「何が欲しいかわからない」
「必要なサポートがわからない」
「特定の職員しか知らない」

このような状況を無くし、利用者には「自分の望む生活が送れる」「職員によってケアに違いが出るようなことがなくなる」といったメリットがあり、運営側やスタッフとしては「新人とベテランなど、職員間の差がなくなり、ケアの標準化ができる」「情報共有をしているので急な欠員への対応が容易」「どの時間帯に人手が足りないかなどがわかり、効率的な人員運用ができる」「利用者のご家族に介護内容を説明しやすい」などのメリットがあります。

24時間シートの使い方&記入例

まず、用紙の左端に時間軸を記載します。利用者Aさんの起床から就寝までの一日の生活・行動(起床・入浴・昼食・趣味活動など)をAさんに聞き、隣の「日課」欄に記入します。記入した行動ごとに要望や好みを聞き、「意向・好み」欄に記入します。ユニット型介護施設では自立支援が基本ですから、自分でできることも聞き、記入します。それらの内容から、サポートが必要なことを検討します。

<24時間 生活シート 記入例>

氏名  リジョブ 花子        作成日 2016.8.15
時間 日課 意向・好み 自分でできること サポートが必要なこと
7:00 起床
・テレビを見る
・電気を点ける
・目覚めても10分ほどはベッドに入っていたい時がある ・電気とテレビを点ける ・起きるかどうか、声をかけて確認する
7:10 トイレ ・起きるとすぐにトイレに行きたい ・手すりを使って立ち上がる
・車椅子に移る
・起きるかどうか、声をかけて確認する
着替え ・カーディガンを羽織る ・着替え(上のみ) ・下の着替え
・どのカーディガンを着るか確認の声かけ
リビングに行く ・車椅子で自走できる ・テレビと電気を消し、カーテンを開ける
7:30 朝食 ・牛乳とソフト食
・テレビでニュース番組をみたい
・皆で一緒に食事をしたい
・牛乳を飲む
・テレビを点ける
・テレビのリモコンを手元に置く
・レンジで牛乳を温め、手元に置く
・朝食を置く

このように入力した24時間シートを活用することにより、利用者の毎日の暮らしぶりが可視化され、ニーズに沿ったサービス提供ができ、利用者の急な変化にも気づき対応できるのです。

24時間シートと介護サービス計画の違い

24時間シートを導入した際に注意しなければならないのが、ケアプラン、介護サービス計画や個別援助計画などとの違いです。中でも24時間シートと介護サービス計画は使用目的が異なり、書式形態や記載事項も異なりますが、両者の内容をしっかり理解していないと「本当に両方必要なのか」という視点になってしまいます。

介護サービス計画は、利用者の生活や心身状態の維持や改善のために必要なことを計画し、実施した結果・効果を評価・見直しするためのものです。一方、24時間シートは利用者の1日の生活の中の項目に対して、「利用者の希望」「利用者ができること」「サポートする内容」を中心に注意点等をまとめ、質の高い機能的なケアのあり方をもとめたものです。

介護サービス計画の目的
【ニーズ】心身状態の維持や改善に必要なことを記載

24時間シートの目的
【デマンド】利用者が希望すること、自分達(職員)が質の高いケアをするために記載

より便利な24時間シートのアプリソフト

24時間シートは利用者一人に対して1枚作る必要があるため大変な仕事ですし、利用者の心身状態や好みが変化すると、その都度シートの変更をする必要があるため、継続していくことは大変なようです。「何か楽にできる方法ってないんですか?」という質問も来るくらいですから。

実は24時間シートをパソコンのソフトにしている会社は既に数社あります。そして、多く利用されているものの中に、福祉業務支援ソフト「24Hシートシステム」があります。これまで手書きで入力していた24時間シートをパソコン上で入力することができ、聞き取りシートが標準化されているので、何を聞き取りすれば良いのかを迷わない仕組みになっています。

もちろん、事業所特有の聞き取り内容を追加するなど、カスタマイズも可能です。24時間シートとケース記録が一画面に同時表示されるので、24時間シートのケア内容を確認しながら毎日のケース記録が入力できるのもポイントです。また、24時間シートとケース記録と日報が連動しているため、職員間の情報共有が効率的です。

「24Hシートシステム」以外にも「本人の状況、午前、午後といったカテゴリごとに入力できるもの」「ケアの改善の糸口を見付け、けがや事故を未然に防ぐことに特化したもの」など様々なソフトがあります。新しく施設を開設する、仕事量が多すぎて困っている、そんな事業主の皆さん、24時間シートのアプリを試してみてはいかがでしょうか。

24時間シートはユニット介護施設にとって非常に重要なものです。

・利用者が望む生活が送れる。
・スタッフによってケアの差がなくなる。
・スタッフ間で情報の共有ができる。
・効率的な人員運用ができる。
・けがや事故のリスクを軽減する。

など、たくさんのメリットがあるので、これらのようなことで困っている事業主様、管理者様は24時間シートを活用して、利用者が暮らしやすくスタッフが働きやすい施設を目指してはいかがでしょうか。

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