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特集・コラム 2023-05-25

専門理学療法士とはどんな職業?認定理学療法士との違いやなり方を紹介

専門理学療法士の仕事に興味を持っている人もいるのではないでしょうか。しかし、普通の理学療法士や認定理学療法士との違いや、どうやったらなれるのかなど、疑問点も多いかもしれません。

そこで、今回は専門理学療法士について詳しく解説します。認定理学療法士との違いも比較するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。

そもそも「理学療法士」とは?


理学療法士とは、ケガや病気などで障害がある人に対し、立ち上がったり歩いたりという基本的な動作やリハビリをサポートする専門家のこと。理学療法士として働くためには、国家資格が必要です。

詳しくは下記のページをご覧ください。
理学療法士とは? 仕事内容と活躍の場を紹介|理学療法士の資格を取得するには

生涯学習制度の改定による変化

理学療法士という職業が誕生してから50年以上が経ち、生活様式や社会情勢なども大きく変化しています。

2022年度に新しい生涯学習制度が始まり、理学療法士の仕事も世の中のニーズの多様化に合わせ、知識や技術の維持・向上に向けて5年ごとの更新制が設けられました。

専門理学療法士とは


専門理学療法士とは、理学療法士の中でもより専門性を極めた資格。基礎・神経・運動器・物理など専門的な13分野(もとは7分野だったが細分化された)の理学療法のうち、1つ以上の分野で高い専門知識を習得する必要があります。

その分野における、理学療法のスペシャリストといえる職業です。

認定理学療法士とはどう違う?

同じく理学療法士に関連する資格で「認定理学療法士」という資格もあります。各分野中1つ以上の専門性を高めるという点では同じですが、専門理学療法士のほうが上位資格です。

5年ごとの更新が必要

一度専門理学療法士になれば永続的に活動できる、というわけではありません。専門理学療法士も認定理学療法士も、登録理学療法士であることが前提条件で、5年ごとに更新しなければならないという決まりがあります。

また、登録理学療法士としての更新も別途必要です。

登録理学療法士とは

理学療法士の資格を取ったうえで、公益社団法人日本理学療法士協会に入会し、最低2年間の前期研修と最低3年間の後期研修を修了することによって「登録理学療法士」になれます。

登録理学療法士も5年更新制で、取得後も自己研鑽に励むことが求められています。スキルアップやキャリアアップの過程の中で、希望する人は、専門性の高い認定理学療法士や、さらに専門性を極めた専門理学療法士を目指しましょう。

専門理学療法士になるには|資格の取得方法


専門理学療法士の資格取得申請までには5つのステップがあるので、1つずつ紹介します。なお、すべてのステップを終えたのちに申請し、口頭試問に合格すれば晴れて資格取得です。認定証を受け取れます。

1. 指定研修カリキュラムを受ける

まず、日本理学療法士協会が主催する指定研修カリキュラムをeラーニングで受講します。内容は、「医療安全学:医療倫理」や「医療面接」「臨床推論」など、12コマを90分で合計18時間です。

2. ブロック学会に参加する

次に、「関東甲信越」や「中国」など地方ブロックごとの学会に参加します。みなし8コマ、合計12時間です。開催方法は、オンライン形式や会場とオンラインのハイブリッドなど、ブロックによって異なります。

3. 都道府県学会に参加する

つづいて、都道府県士会が主催する都道府県学会に参加します。みなし4コマ、合計6時間です。

4. 学術大会で発表を行う

日本理学療法学会連合の会員団体が主催する学術大会において、発表を行わなければなりません。2023年は5月27日(土)・28日(日)にオンラインで開催され、みなし5コマ、合計7.5時間です。

5. 論文を提出する

所定の点数基準に該当する、査読付き原著論文を提出します。

協会が指定する雑誌(英文雑誌A・英文雑誌B・和文雑誌のいずれかに分類されたもの)に、協会が認める期間中に採択もしくは掲載されたものが申請対象。自分でマイページに登録します。みなし30コマ、合計45時間です。

専門理学療法士になるメリット


専門理学療法士になるためには勉強しなければならず、労力や時間が必要ですが、それでも資格を取得することのメリットはあります。2つの点をお伝えしましょう。

他の理学療法士との差別化を図れる

専門理学療法士の資格を持っている人は全国的に少数です(具体的な数は後述します)。特定分野に強い理学療法士ということで重宝される可能性があり、一般的な理学療法士との差別化を狙えます。

専門分野に特化できる

理学療法士になっても、いろいろな分野を満遍なく習得している状態では、自分の強みがなく悩む人もいます。そこで、専門性を高めることによって自分が極めたい分野に特化でき、スペシャリストとしての強みを持てることもメリットです。

専門理学療法士の人数はどれくらい?


日本理学療法士協会の総会員数133,990名のうち、専門理学療法士は実数1,715名、のべ4,188名(※2022年6月1日データ)と、理学療法士全体のうち1.2%程度なので少ないです。

都道府県別で見ると、最も多いのが東京都で176名、次いで愛知県113名、神奈川県110名。まだまだ今後の増加に期待が高まるといえます。

認定理学療法士のほうが多い

一方、認定理学療法士は、実数14,594名、のべ16,823名です。全体の約10.9%、専門理学療法士の8.5倍いることがわかります。

専門理学療法士の将来性


理学療法士の国家試験合格者数は、平成2年度に1万名を超え、平成24年度に10万名を超えました。さらに、令和4年度には20万人を超えて202,423名に。

これだけ増えてしまうと、そもそも理学療法士という職業自体の将来性に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。そこで、今後の展望について考えてみましょう。

超高齢化や活躍シーンの増加でニーズが増える可能性が高い

人生100年時代といわれ、令和3年度の高齢化率(高齢者の割合)は28.9%と非常に高いです。そのため、リハビリや介護を必要とする人もたくさんおり、病院だけでなく福祉施設や保健所などでも理学療法士のニーズは高まっています。

専門理学療法士は専門分野でのスキルが高いことから、その分野においてより需要にマッチする可能性が高いので、将来性にも期待できるといえるでしょう。

専門理学療法士になって活躍の場を広げよう


専門理学療法士は、理学療法士の中でも特定の分野において専門的な知識と技術を身につけた人に与えられる称号のような資格。取得は簡単ではありませんが、理学療法士として高みを目指したい人にはおすすめなので、ぜひ挑戦してみてください。

引用元

日本理学療法士協会:生涯学習制度について
日本理学療法士協会:専門理学療法士制度
日本理学療法士協会:登録理学療法士制度について|生涯学習
日本理学療法士協会:認定・専門理学療法士 指定研修カリキュラム シラバス
日本理学療法士協会:学術研修大会(全国)|講習会・研修会
日本理学療法士協会:生涯学習制度 認定・専門理学療法士 新規申請マニュアル
日本理学療法士協会:各資格の取得状況|生涯学習
日本理学療法士協会:②専門理学療法士 都道府県別取得者数 ※2022年6月1日データ
日本理学療法士協会:統計情報|協会の取り組み
内閣府:令和4年版高齢社会白書(全体版)

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