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ヘルスケア 2023-07-13

ブラックな環境の治療院が生まれるほど、みんな困っている。鍼灸師から治療家サポーターへ転身 鈴木むつよさん

鍼灸師を経て、現在は治療家向けの経営や集客、イベントのサポートなどを中心に活動している鈴木むつよさん。前編では3坪の治療院の経営をどのように軌道にのせたか、鈴木さんが考える鍼灸院が成功するために必要なことを伺いました。

後編では鍼灸師の仕事をしていた鈴木さんがどのように初めての開業を経験し、その後講師業、コンサルタントなどの仕事を広げていったのかを伺います。次々と新しいことに挑戦する鈴木さん。その根底には困っている鍼灸師をサポートし、鍼灸師の素晴らしさ、楽しさが伝わっていってほしいという思いがあるようです。

今回、お話を伺ったのは…

鈴木むつよさん

鍼灸師

大学卒業後、就職した鍼灸院がブラックな職場環境だったため10カ月で退職し、翌日には出張という形で初めて開業。その後、京都、三重でマンション、テナントなどの小規模治療院の開業を何度も経験する。それらの経験を活かし、治療家向けサポートを仕事にすたるため、上京。治療家向けマーケティング会社での経営講師などを経て、現在は治療家の経営、集客、セミナー・イベント運営のサポートを中心に活動中。

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3名のお客さまからの開業。AKB方式で心をつかむ

ブラックな環境の鍼灸院で働いていたことなど、鈴木さんのnoteには赤裸々で、ためになる記事がいくつもあがっている

――最初に開業をしたのが、職場を辞めた次の日だったとのことですが、独立願望はあったのでしょうか?

元々、鍼灸師になったのも「最終的には自分1人で完結する仕事がしたい」という思いがあったんです。素直に人の言うことがあまり聞けるタイプではなかったので(笑)、自分で考えて、責任を持ちたい気持ちが強くて。ただこのときは独立したいと思って辞めたわけではなくて、私がブラックな環境でどんどん精神的に参ってしまって辞めざるを得なくなり、残された選択肢が出張での開業だったという感じですね。

当時勤めていた鍼灸院のお客さま3名がとても心配してくれて、その方たちのお宅に出張する形でスタートし、知り合いやご家族にも施術をさせていただいていました。

――10カ月しか働いていなかったということですが、それでも鈴木さんについてきてくださるお客さまがいたというのが素晴らしいですね。

あまり隠さずに等身大の自分を見せていたことがよかったのかもしれません。新卒だということ、鍼灸の資格を去年取ったばかりだということもありのままに伝えていました。勉強会に参加しているということも話していましたね。とりようによっては技術が不十分だととられるかもしれませんが、努力をしていると分かってもらえたと思います。時間はたくさんあってがんばるから、一緒に治していこうねという感じで伝えていました。

また、当時働いていたのが京都の地方だったということもあって、それを応援してくれる空気があったんです。お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんというような立ち位置でみなさん応援してくれていましたね。私はこれをAKB方式と呼んでいて。現段階では完成してはいないけれど、応援してもらって完成に近づくという感じですね。ただそれもあとから振り返れば分かることで、そのときは意図的にやっていたというより、やるしかないからできることを考えてやっていただけでした。ただただ毎日必死でしたね。

苦にならないことが、活躍の起爆剤になる

鍼灸師として活躍していた鈴木さん。開業、集客、経営が得意なことに気付き、治療家をサポートするサービスの提供を開始する

――そこから鍼灸師や治療家向けの講師業、コンサルタントを始めたきっかけは?

あるころから目の前の患者さんを見る以上に、集客、開業、経営などの分野が好きなんだという自覚が生まれてきたことがきっかけです。患者さんのことは大好きなのですが、もっと自分の力を活かしたいと思ったとき、その方面に進むことを決めたんです。治療院向けのマーケティングをやっている会社に入るために上京。経営塾の講師を任されることになりました。

コロナ禍になり会社からは退職したのですが、経営塾の講師、治療家さん向けのコンサルなどを経て、現在は治療家個人の方向けではなく、協会や会社など団体向けにサポート業務を行っています。あとは今、メイプル名古屋さんという鍼の販売をしている会社と組ませていただいていて、セミナーやイベントを主催したい先生のサポートにも力を入れていますね。

――セミナーやイベントを主催したり、自ら開催するなかで気をつけていることは?

無責任になんでもやっていいわけではない、ということです。反面、自分に何ができるのか、できないのかを正確にお伝えすることができれば、その経験やノウハウが人の役に立つことは十分にあり得ます。この業界内で行われているサービスは、質の悪いサービスやセミナーがあるのも残念ながら事実だと思っています。私自身は質の高いと思えるサービスをサポートすることで、そのあたりのレベルが上がっていけばいいなと考えています。

私は今、サービス販売プラットフォーム「MOSH」のアンバサダーもやっているのですが、このサービスを使えば、自分が提供するサービスの予約や決済が可能になります。オンライン、オフライン含めてのコミュニティや、セミナーの運営もとても楽になるはずです。このようなツールも取り入れながらチャレンジすれば、サービス立ち上げのハードルも高くなくなる便利な時代です。鍼灸師の仕事はお客さんがきて施術していくらという世界なので、講師業や同業界の人へのサービス提供など責任が持てる範囲で活動の柱が増えるのはいいことだと思います。

一度は離れた鍼灸業界。その楽しさを伝えていきたい

決済サービス「MOSH」のアンバサダーを務めるなど、鍼灸師が他業界と結びつく橋渡しもしている鈴木さん

――今後の目標を教えてください。

鍼灸師さんが迷わない、困らない、治療に集中できるサービスを提供していきたいですし、それを通して鍼灸師が楽しいと思ってもらえたらうれしいです。私は、治療技術に優れた鍼灸師さんがたくさんいると思っていて、自分にはできないことなので尊敬しているんです。そういう方たちが活躍できるようにサポートして、鍼灸の素晴らしさがもっと広がって業界全体が盛り上がっていけばうれしいという気持ちがありますね。

――前編では鍼灸の業界をスタンダードだと思っていると衰退していってしまうというお話もされていました。それでも鍼灸業界を盛り上げていきたいと思うのはなぜですか?

実は一時期は鍼灸業界が嫌いで離れていたこともありました。でも自分がさまざまな経験をしてから改めて振り返ってみると、困っている鍼灸師がとても多いということに気づいたんです。最初に勤めていた会社で私はすごく嫌な思いをしたんですけど、今考えてみると院長も経営面ですごく困っていたし、苦しんでいたんだと思うんですね。

鍼灸業界で経営面での課題を抱える人が多い背景として、その人自身が悪いというより、技術がついてきてお客さまが増えた結果、経営について学ぶこともなく経営者になってしまうという仕組みの問題だと思うんです。だからこそ私は技術以外の部分のサポートをしていきたいですし、経営について困ることが少なくなれば、もっと面白い業界になっていくのではないかと思っています。


コンサルタントとして大切にしていることを伺うと「相手がやりたいことを引き出し、その事例を伝えること。そして決して相手を否定しないこと」と教えてくれた鈴木さん。その言葉からは鍼灸師に対するリスペクトが感じられました。そのような姿勢の鈴木さんだからこそ、多くの鍼灸師から信頼を集めているのだと思います。

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