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特集・コラム 2023-11-15

作業療法士を辞めたいと思う理由とは? 転職活動を成功させる2つのポイント

国家資格でもある作業療法士。対象者の日常生活動作のリハビリや支援をするのが、主な仕事です。しかし、実際に作業療法士として働いていて、「作業療法士に向いていないかもしれない」「作業療法士をやめたい」と悩んでる方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、作業療法士をやめたい理由、やめたいと感じたときにできる対処法、転職のポイントなどを解説します。

作業療法士をやめたいと思う理由とは?

作業療法士として働いている人のなかには、仕事をやめたいと考えたことがある人もいるのではないでしょうか。ここでは、作業療法士をやめたいと思う理由をご紹介します。

1.専門分野のリハビリができないことがある|理学療法士と混同される

病院や施設では、作業療法士のほかにも、基本的な身体機能の向上を目指してリハビリをおこなう理学療法士も働いているため、作業療法士と理学療法士はしばしば混同されてしまうことがあります。

職場にもよりますが、社会復帰や退院支援というよりも基本的な身体動作のリハビリを中心におこなう場所もみられ、理学療法士と変わらないといった不満を抱いてしまうこともあるようです。このような理由から、作業療法士の資格を生かせる職場に転職したいと思い、やめたいと考えることがあるといわれています。

2.指導してくれる先輩や上司がいない事業所に入ってしまった

規模の小さな施設やリハビリを重視していない施設などに就職してしまい、周囲にキャリアを積んだ先輩や上司がおらず、作業療法士としてのスキルを磨くことができないといった悩みを抱えるケースもあります。病院や施設によってはスタッフの入れ替わりが多く、はじめは同僚や上司がいても、すぐに退職や転職でいなくなってしまうことも。

このような環境から、実際に対象者に提供するケアについてのアドバイスをもらうことができず、やめたいと感じてしまうことがあるといいます。

3.残業が多い職場でつらい|勉強会・資料準備など

作業療法士が働く現場においても、働き方改革は課題となっています。就職先で定期的な勉強会や研修会、研究などの話し合い、発表に向けての資料作成などで業務終了後に残業しなければならないこともあるでしょう。対象者が多く、プランや記録などの資料作成が時間外におよんでしまうこともあります。

また、研修後に残った業務をしなければならない場合には、さらに帰宅時間が遅くなってしまうことも。プライベートな時間が少なくなってしまえば、休息と活動のバランスを保ちにくく、ストレスが溜まり、やめたいと感じてしまうようです。

4.職場の人間関係がうまくいかない

就職した場所で、人間関係の悩みにぶつかることもあるようです。作業療法士はほかのスタッフと協力し、コミュニケーションを図りながら対象者のケアをおこなうため、自分が苦手な人や関わりたくないと感じる人に対して、報告や連絡、相談をしなければならない場面もあります。

職場での人間関係がスムーズにいかないと仕事もやりづらくなってしまい、やめたいと思ってしまうそうです。

5.仕事の割に給料が安い

身体的にも精神的にも大変な仕事の割には給料が安い点も、やめたいという理由になります。令和4年度賃金構造基本統計調査によると、作業療法士の給料は、約28万でした。看護師が約34万なので、他の医療関係者と比べて低いことがわかります。

ただし、上記年収には作業療法士だけでなく、理学療法士や言語聴覚士など同じカテゴリで調査されている他の業種も入っていますので、その点を踏まえて参考にしてください。

引用元
令和4年賃金構造基本統計調査

6.患者対応がつらい

作業療法士が担当する患者は、年齢層も病気やケガなども様々です。どんな患者でも、日常生活に復帰できるようリハビリを続けていかなければいけません。

たとえば、精神的な疾患でリハビリを必要としている患者は、その日の気分により作業療法士への接し方が違ったり、リハビリへの取り組み方も違ったりする可能性もあります。そのようなときでも、患者の状況に合わせたケアを笑顔でしなければなりません。

そのため作業療法士自身の精神的な負担やストレスから、離職してしまう方もいるようです。

7.福利厚生が不十分

子育て中にも関わらず時短勤務ができない、育児補助がないなど、職場での福利厚生が十分でないことも、離職の理由にあります。

福利厚生については、職場によって違いが大きくなります。

充実していない場合は、民間保険会社などが提供している損害保険や給与サポート保険などで補ったり、日本理学療法士協会クラブオフという会員制のクラブに入会する必要があります。いずれも、個人で加入しなければなりません。

精神科での仕事が合わない

精神科での作業療法士の対象患者は、精神的に疾患のある方です。そのため、リハビリ内容は身体的なものだけではなく、心のリハビリも入ってきます。

コロコロ変わる患者の心の状況に作業療法士自身が病んでしまったり、奇声や暴力などを受けて恐怖を覚えてしまったりして、やめたいと思う方もいます。

心のリハビリは作業療法士ならではの業務内容で、やりがいを感じ最善を尽くそうとしたにも関わらずうまくいかず、働けなくなるケースもあるのです。

仕事をやめたくなったらどうすればいいの?

作業療法士として働くうえで、今後やめたいと思う瞬間が訪れることもあるかもしれません。ここでは、仕事をやめたくなったときに実践できる対処法をご紹介します。

1.問題点を洗い出して改善策を提案する

作業療法士として働いていて、残業が多いなどさまざまな問題点が不満として出てくることもあるでしょう。仕事をやめたいと思ったときには、まずはなにが問題となっているのか、なにに不満を感じているのかをきちんと整理することが大切です。

そのうえで、どのようにしたら解決の方向へ向かうことができるのかを、職場のスタッフと一緒に考えることができるような流れをつくりましょう。

2. スタッフとの距離感を見直す

職場の人間関係で悩んでいる人は、スタッフとの距離の取り方を振り返ってみましょう。上司といろいろなことを話せる間柄になった場合はなんでも言えるぶん、不快に感じてしまうことやストレスを感じてしまうこともあります。

スタッフとの距離が近い場合には、ストレスの軽減を目的として、一度相手から遠ざかってみるのが大切です。まったく会話しないということではなく、業務上必要なことについては相談し、少し距離をおくことができるよう工夫してみましょう。

3. 違う分野で作業療法をおこなう|ほかの施設・病院へ転職する

作業療法士をしていて、今の職場で資格を活かすことができていないと感じている場合や残業が少なく働きやすいところを希望する場合は、ほかの施設や病院に転職をするというのもひとつの方法です。つづいては、作業療法士として活躍できる就職先をご紹介します。

急性期病院|後遺症の軽減などを目的としたリハビリ

急性期病院では、病気やケガで手術や治療をおこなった患者のリハビリなどを中心におこないます。患者は、モニターや点滴などをつけている状態が多いので、作業療法士は座る、食べるなどといった基本的な動作の練習を、患者の状態をみながら実施していきます。

患者の容体が安定するまでの急性期の作業療法について、知識や技術を身につけることができるのがメリットです。一方、デメリットは、急性期病院では基本的動作のリハビリをおこなう理学療法士のニーズが高く、場所によっては作業療法士としての専門性を発揮しにくいことが挙げられます。

回復期病院|日常生活動作の改善を目指すリハビリ

回復期病院は急性期を超えて、容体が安定した患者が入院する病院です。作業療法士の役割は、社会復帰や退院をみすえて日常生活動作の向上、改善を目的としたリハビリをおこないます。

回復期病院で働くメリットは、職場復帰や福祉用具やバリアフリーなどの住居の見直しに対する提案をおこない、社会復帰や退院支援を学ぶことができることです。ただし、急性期のケアや支援を学びたいという人は、物足りなさを感じるところがデメリットといえるでしょう。

療養型病院|日常生活動作の維持や向上を目指すリハビリ

療養型病院は、医療的なケアを必要としながらも病状が安定しており、長い期間療養の必要がある人が入院する病院です。

自宅へ戻る人や転院する人など、長期入院で日常生活動作の低下が懸念される患者に対して、動作を維持するためのリハビリや退院に向けた支援などをおこなえるのがメリットです。しかし、患者の入退院は頻繁ではなく、イベントやレクレーションといった活動も少ないため、リハビリの内容も単調になりやすいのがデメリットといえます。

精神科病院|社会復帰を目指すケアやリハビリ

精神科病院は、統合失調症やうつ病などさまざまな精神疾患を抱える人が入院している病院です。ここで働く作業療法士は、精神疾患を抱える患者が退院してスムーズに社会復帰ができるようなリハビリやケアをおこないます。

レクリエーションやイベントなどで患者が楽しみながら、自然とリハビリもできるようなプログラムを考える経験ができるのがメリットです。一方で、患者とのコミュニケーションでは、うまくいかないことにぶつかり、ケアやサポートがうまく進まないことでストレスを感じやすいところはデメリットといえるでしょう。

介護老人保健施設|在宅復帰を目的としたリハビリ

介護老人保健施設は、病院での治療を終えて在宅復帰までにリハビリを必要とする人が行く施設です。治療というよりはリハビリをメインとするため、作業療法士が能力を発揮しやすい環境が整った施設といえます。

医師や看護師、栄養士や他のリハビリ専門スタッフなどさまざまな職種のスタッフとともに働くことができるのもメリットです。一方で、理学療法士によるリハビリに力を入れているところでは、作業療法士としての資格を活かせないというジレンマを感じることがあるのがデメリットといえます。

デイサービス|機能訓練としてリハビリをおこなう

デイサービスは利用者が日中の時間をほかの利用者やスタッフと過ごし、孤立しやすい高齢者の心身の健康や家族の介護負担の軽減を目的とした施設です。日中はレクリエーションなどさまざまな活動をとおして、楽しみながら日常生活動作ができるようリハビリを提供します。

創作活動やレクレーションなど集団に対してのかかわりが多いメリットがある一方で、個別にじっくり対象者と関わりたいという人には物足りないと感じるところがデメリットになるかもしれません。

訪問リハビリ|診療補助とリハビリをおこなう

訪問リハビリは、実際にリハビリ専門のスタッフが利用者の自宅に行き、必要なリハビリを提供したり、診療の補助をおこなったりします。

訪問リハビリでは、利用者の自宅の状況に即したリハビリ内容を提供できるというのがメリットです。しかし、病院や施設のような必要な器具などはそろっていないため、そういった状況でリハビリを提供しなければならないのはデメリットといえるでしょう

機能訓練指導員としてはたらく

作業療法士としての資格を活かして、機能訓練指導員として働くことができます。機能訓練指導員は、日常生活動作の向上を目指してアプローチをおこなう職業です。看護師や理学療法士、作業療法士等、全8種類の国家資格のうち、いずれかの資格を有していることが条件となっています。

入浴や更衣、食事などの日常生活訓練もおこないながら、生活の中で治療や援助などをしていくため、「生活リハビリ」に興味のある人や、多くの職種との連携が必要なことからコミュニケーション能力が高い方などが向いているでしょう。

機能訓練指導員は現場に一人以上の配置が義務付けられていますが、一人しか配置されていない施設も多いです。そのため、一人でも対応できるように、ある程度の経験を持った方の方がよいかもしれません。

しかし、経験が浅くても日常生活動作のリハビリに強い作業療法士は、機能訓練指導員としてじゅうぶんに役割を果たすことができるでしょう。

機能訓練指導員についてはこちら
機能訓練指導員とは?どんな資格が必要なの?|機能訓練指導員が活躍できる職場ややりがい・魅力を紹介

作業療法士が機能訓練指導員になるメリットは?

機能訓練指導員も作業療法士も、機能訓練やリハビリの専門家です。「立つ」「座る」などの身体的なリハビリに加え、入浴や食事などの介助もできるため、専門的な知識などを活かすことができます。

趣味やレクレーションなどの活動を通して、患者の心にアプローチすることもできるので、機能訓練指導員としての要素は十分持っています。

経験を活かして異業種へ転職する

作業療法士として培った経験を活かして違う職種へ転職することもおすすめです。

医療事務・医療秘書・看護助手などの資格を必要としない医療関係の他の職種や、リハビリの知識やコミュニケーション能力などを活かして福祉用具貸与事業所やリハビリ機器などの営業職など幅広い範囲での転職が可能です。

大学や専門学校で新たなスキルを身に着ける方法も

大学や専門学校に通い、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取得するのもおすすめです。
社会福祉士を目指す場合、福祉系大学に通ったり、短期養成校に通い指定科目を履修したり、相談援助実務をするなどの規定があります。精神保健福祉士を目指す場合も同様に指定科目の履修や実務経験などが必要です。

各資格の詳しい内容についてはこちら
社会福祉士になるには?国家試験の受験資格を得る方法や必要な実務経験について紹介

精神保健福祉士の仕事内容と資格についてご紹介!実務経験は受験資格の対象になる?

転職活動を成功させる2つのポイントとは?

転職をする際には、「自分に合う職場をみつけることができるかどうか」がカギとなります。そのためにはまず自分の適性を知り、なぜ今の職場をやめたいと思ったのかに立ち返る必要があるでしょう。キャリアアップを目指したい、よい人間関係の職場で働きたいなど、優先順位を決めて職場探しをすることが大切です。

では、自分に合った職場を見つけるためにはどのようにすれば良いのでしょうか?ここでは2つのポイントについて紹介します。

1. 次の職場を見つけてから退職する

やめたいと思っても、すぐに退職してしまわないようにしましょう。やめてしまっても、すぐに新しい就職先がみつかるわけではありません。「やめたはいいが就職先がなかなか決まらない」「収入がないと生活が不安だ」などの焦りが生まれ、その結果、希望とは違う転職をしてしまう可能性があります。

今すぐにやめてしまいたい気持ちは理解できますが、今の職場で働きながら、しっかりと自分に合った職場を見つけましょう。

2. 優先順位をつけて探す

自分がどうしてやめたいと思ったのか、どのような職場であれば悩みが解決するのか、きちんと把握しておきましょう。

たとえば、給与面で不満があって転職する場合、今の収入よりも高いところにするなど安易に考えるのでなく、職場の環境や人間関係などわかる範囲で把握しておきましょう。収入は上がったが残業の時間が増えたなどの理由から、またやめたいと思うようなことのないようにしておくことが必要です。

自分に合わせた解決方法を選んで、できることからはじめよう!

あくまで人それぞれですが、「人間関係がよい職場で働きたい」「もっとスキルアップを目指したい」など、転職したいと感じるタイミングが訪れるかもしれません。作業療法士は国家資格なので、病院や介護施設などさまざまな場所で資格を活かして働けるのが強みです。

また、作業療法士の資格があれば、機能訓練指導員としての働き方も可能となります。転職の際にはなにを優先するのかを把握したうえで、在職中に、ゆっくりと時間をかけて、自分に合った職場を選ぶことが大切です。まずは情報収集など、できるところからはじめてみてはいかがでしょうか。

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