ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2023-08-26

何をしていいか分からなかった自分を変えた「アスレティックトレーナー」という仕事 島田幸夫さん

「アスレティックトレーナー」とは、主にスポーツ選手がケガから復帰する際の手助けをしたり、パフォーマンス向上のサポートをする仕事。スポーツ選手以外にも体に不調を抱えた人に対するトレーニングをすることができるため、注目を集めています。今回取材をさせていただいた島田さんは、27歳からアスレティックトレーナーとして活躍してきたそうです。

元々は病院内にあるフィットネスクラブでメディカルトレーナーをしていた島田さんですが、そのときに感じたあるもどかしさがきっかけで、アスレティックトレーナーの道に進むことになったといいます。

今回、お話を伺ったのは…

島田幸夫さん

大学卒業後、病院内にあるフィットネスクラブでメディカルトレーナーとして3年の経験を積む。もっと身体のメカニズムについて学びたいという思いから「アスレティックトレーナー」を目指し専門学校へ入学。27歳からアスレティックトレーナーとして、パーソナルジムを中心に指導を行う。2020年からフィットネス指導者向け講座「カラダ改善指導講座」も運営。2023年には株式会社Glee Harborを設立し、代表取締役に就任。都内スタジオ設立に向けて準備中。

Instagram:@yuki_trainer_college

現場で感じた「様子を見ましょう」のもどかしさ

アスレティックトレーナーとして、不調を抱える人が改善できるよう寄り添ってきた島田さん

――アスレティックトレーナーとは、具体的にはどういうものなのでしょうか?

主に競技スポーツ選手がケガを治して復帰する際や、パフォーマンスを高めるためのサポートをするトレーナーのことをいいます。イメージ的には、医療領域であるリハビリと、フィットネスとの間の存在という感じでしょうか。僕の場合は現状、スポーツ選手に特化したサービスを提供しているわけではなくて、一般の方向けのトレーニングを提供しています。とくに痛みや、動かしにくいところがある方など体の機能に不調を抱えている方のトレーニングを得意としています。

――なぜ、アスレティックトレーナーを目指そうと思ったのでしょうか?

ちょっとややこしいのですが、元々は、病院内にあるフィットネスクラブでメディカルトレーナーとして3年間仕事をしていました。トレーナーの道に進んだのは大学で一緒にスポーツをしていた友人がケガをして、リハビリする姿を見て感動したのがきっかけで。リハビリを担当するには理学療法士になる必要がありますが、通っていた大学では資格をとれなかったので、思いついたのがメディカルトレーナーの仕事でした。ただ働いているうちに段々ともやもやが増えてきたんです。

――どんなもやもやですか?

リハビリに近い仕事をしたいという思いからメディカルトレーナーになりましたが、正直、名前負けをしているという思いがありました。病院内のフィットネスという立地上、痛みがある、動きに制限があるというお悩みを抱えている方にお越しいただくことが多かったのですが、その方がどういう状況で、なぜ痛みが出ているか、自分が何をできるかが分からない状態だったんです

自分にできるのは「様子を見ましょう」、「無理はしないようにしましょう」という言葉かけだけ。何もできない自分がはがゆく、体のメカニズムに関する知識をもっとつけたいという思いが強くなりました。体の機能の知識というと、当然理学療法士の領域ではあるのですが、体の知識を持っているかどうかはトレーナーとしても、大きな違いになると思っていたんです。アスレティックトレーナーの資格をとる過程で、身体の仕組みや働きについて学べることが分かったので、メディカルトレーナーの仕事はやめて2年間学校に通いながら学びつつ、パーソナルトレーナーとして働いていました

体の知識を得たことで、自信を持って指導ができるように

知識を得たことで指導にも変化が出たと島田さん

――アスレティックトレーナーとしての第一歩はどのように踏み出したのでしょうか?

パーソナルトレーニングジムで、正社員のパーソナルトレーナーとして活動を始めました。その後コロナ禍となり、いつかは独立したいという思いもあったので、2023年7月に株式会社Glee Harborを設立し、今に至ります。今年の秋にはスタジオを構えようと思っており、その準備も進めているところです。

――体の知識を学んだことで、指導には変化がありましたか?

はい。体の知識について学ぶ前と比べると、症状がなぜ起きているかの評価ができるようになり、自信を持って指導ができるようになったと思います。どのようにすれば痛みや機能が改善するのか、仮説を立てられるようになりましたし、実際に変化が起きる確率があがったと思います。また自分が対応できること、できないことの範囲の切り分けもしっかりできるようになり、お客さまからの信頼度もあがったのではないかと。

たとえば腰の痛みの場合。まずいつから痛いのか、どうすると痛いのか、持病があるのかどうかをヒアリングします。それらを踏まえて痛みは何からきているのか仮説を立てます。体が硬いからなのか、何らかの疾患があるのか、体を支えたり制御する力がないからなのか。柔軟性がないことによる痛みの場合は、動いてほしいところにアプローチする方法をとることで、改善がみられるようになるんです。

信頼関係を築くために必要なのは、「見通し」と「傾聴」

島田さんのインスタ投稿。島田さんがこれまで培ってきたトレーナーとしてのノウハウを発信している

――トレーナーとして心がけてきたことはどんなことでしょうか?

お客さまに安心してもらい、信頼関係を作っていくことが何より大事だと思っています。具体的に心がけてきたことが2つあり、ひとつは見通しを立てて、伝えること。初回の方の場合はとくに丁寧に、今日はどんなことをして、ここに変化が起きていく可能性が高いです、これを続けていくとこんなふうに変わっていくと思います、という感じでその日の見通しをお伝えするようにしています。

もうひとつは、お客さまの話をきちんと聞く姿勢を持つこと。深く、丁寧に耳を傾けながら、共感的理解を持つ、いわゆる「傾聴」の姿勢を大事にしてきました。専門的なアドバイスをするのはとにかく後で、まずはご本人が抱えていること、不安になっていることをちゃんと出してもらえるようにしています。

――信頼関係が大事なんですね。

はい。信頼関係というととにかく丁寧に伝えるというイメージかもしれませんが、最終的には家族や友人と接するような形で関われたらいいなと思っているので、堅苦しくならないように、あえて言葉を崩してフランクな対応をすることもあります。近い関係性を築くには運動をするための時間ではなくて、僕に会いに行く時間だと思ってもらう必要があると思うんです。そういった関係性は一朝一夕に築けるものではないと思うので、成果を提供しながら、じっくり関係を築いていければと思っています。


後編では島田さんが3年前から提供をはじめた、フィットネス指導者向けの講座「カラダ改善指導講座」について伺います。開講のきっかけは過去の自分と同じような悩みを持つ人をなくしたいという島田さんの思い。週に1回、1年間をかけてフィットネス、メディカルの知識を徹底的に学び、マンツーマンのフォローアップもしっかりいれることで、毎回定員になる人気の講座だそうです。後編もお楽しみに!

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事