ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2023-08-18

精神科における作業療法士の仕事内容とは?精神科で働くOTの役割や給料、就職先や展望を紹介

作業療法士の「作業」とは、家事や仕事をすること、地域活動や余暇など、生きる上で必要な行動全般を指します。病気や事故などの影響で、それらの作業が困難な方を対象にリハビリをおこなうのが仕事ですが、精神科の作業療法士に求められる役割とは、どんなものがあるのでしょうか?

精神科の作業療法士の仕事内容や就職先、仕事をするうえでの魅力や将来性などを詳しく解説していきますので、作業療法士として精神科で働くことに興味がある方は是非参考にしてみてください。

精神科の作業療法士(OT)の仕事内容とは?

精神科で働く作業療法士が担当するのは、うつ病や認知症、統合失調症などの精神的な疾患や障害が原因で、幻覚や妄想、不安障害などがあり、社会生活が困難な方です。そのような方の日常生活の困難を解決、または向上・改善させるために、さまざまな活動や働きかけをしていきます。

精神科の作業療法士の詳しい仕事内容を見ていきましょう。

1.信頼関係を築く

患者本人の生活のしづらさや能力を見極め、リハビリを実施していきます。そのための信頼関係を構築するのも大切な仕事だといえるでしょう。

疾患や障害が原因とはいえ、困りごとや必要な関わりは一人ひとり違います。患者がリハビリに安心して取り組めるような環境を整えることが、のちのリハビリにおいても重要です。

2.患者に合わせた目標と作業療法の立案

患者との関係を作るなかで、本人の基本的な能力や応用力、社会への適応能力、さらには利用できる人的・物理的な資源環境の有無などを評価し、見極めます。それらを総合的に判断し、患者本人が自信を取り戻して社会への前向きな関わりができるようになるための、作業療法の計画を立て、目標を設定。

作業療法のリハビリを通して、患者本人へのカウンセリングをもとに能力の評価や作業療法の見直しをその都度おこない、チームカンファレンスの内容との整合性にも注意を払う必要があります。

3.リハビリを通して目標達成・フォローアップ

精神科の作業療法士は患者の現状を把握し、その改善や回復の目標達成のためのアプローチがメインの仕事といっていいでしょう。最終的には退院を視野に入れたリハビリによって、目標を達成します。

ただし、目標を達成し、終了となっても必要であればフォローアップを続けるのも重要な仕事です。

精神科のチーム医療|作業療法士が連携する他業種の専門家


精神科では、チーム一丸となって患者を支えます。作業療法士はそのチームの中での役割をしっかりと認識し、専門知識を活かしたアプローチをするのが仕事です。

診断をしたり治療方針を決定したりするのは医師ですが、患者の一日に寄り添う看護師や精神保健福祉士、臨床心理士などとの情報共有なども重要で、それぞれの専門領域から患者に関わります。

患者にとってベストなアプローチ方法を導きだすためにチームカンファレンスを重ね、総合的な目標設定とのズレがないかなどの確認も必要です。

精神科と心療内科の違い

精神的な負担を感じたときにかかる医療機関は、精神科のほかに心療内科がありますが、実は精神科と心療内科は区別されています。

精神科は、冒頭でもお伝えしたとおり、統合失調症やうつ病・認知症・アルコール依存症や薬物依存症・パニック障害や強迫性障害などの精神的な病気を抱えた方を、対象としています。

一方で、心療内科は強いストレスなど心理的なことが要因で、身体に症状が出ている方が対象です。具体的には、胃潰瘍やぜんそく・頭痛・腹痛・動悸・高血圧などの身体的な症状の背景にストレスがある場合を指します。

精神科の施設はいろいろ|作業療法士の就職先は?


精神領域で働く作業療法士の活躍の場は、精神病院だけではありません。そこで、精神障害を抱える方を対象とした施設をいくつか紹介していきましょう。

精神病院

精神科では前述したとおり、チームで患者と関わります。作業療法士の担当は、実生活での困りごとがあるうつ病や統合失調症、認知症などの患者に、それぞれの状態に合わせたリハビリをおこないます。

リハビリの内容は患者の病状に合わせ、生活技能訓練や社会復帰のためのデスクワークの練習などのほか、手芸や工作などのレクリエーションなどの立案をするのが大切です。

精神科では、患者との信頼関係構築が欠かせません。ところが、信頼関係構築のための関わりが、場合によっては患者が敵意を抱いたり、恋愛感情をもったりする「感情転移」のきっかけになることがあります。トラブルを避けるためにも適度な距離感を保つ必要があります。

精神障害者社会復帰施設

ここからは、精神障がい者向けの社会復帰施設を紹介します。社会復帰施設には、患者本人の病状の軽重や支援環境の有無によって内容が異なるいくつかの種類があります。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法にもとづいた支援機関で、各都道府県や政令指定都市に設置されています。精神的な病によって起こる、さまざまな困りごとの相談を受けたり、医療機関や支援施設などの情報提供をしたりといった役割を担う専門機関です。

医師や臨床心理士、精神保健福祉士などの専門家が在籍しており、精神科のデイケアや就労支援もおこないます。作業療法士は、就労に向けた、日常生活・就労のための訓練を実施するのが主な仕事です。他の専門家と連携して精神疾患を抱える本人や障がい者、また、その家族や依存症患者などへの支援をします。

精神障害者生活訓練施設

精神障害者生活訓練施設は、援護寮ともいわれ、精神障害によって日常生活の自立が困難な方に向けた支援をおこなう施設です。社会復帰を目指し、生活の立て直しをはかるために入所させ、必要な訓練や指導をします。

在宅で支援を必要とする患者の場合、家族の病気や事故、冠婚葬祭などの理由で一時的に支えるのが難しくなった場合、ショートステイで短期入所できる施設もあり、作業療法士が自宅を訪問して1対1でリハビリをおこなうことも可能です。

精神障害者入所・通所授産施設

働く意欲がありながら、精神障害が原因で就労が困難な方に対し、社会復帰を目指した訓練をおこなう施設です。入所授産施設と通所授産施設があり、入所授産施設では、就労が困難でかつ住居を確保できない方に、生活の場を提供し、必要な訓練をおこなって自立を目指します。

通所授産施設は必要な訓練をしたり、職業を与えたりして正式な社会復帰を促すための施設で、作業療法士は専門知識を活かしてリハビリの計画立案や実施をするのが仕事です。

精神障害者福祉工場

通常の事業所で就労するのが難しい精神障がい者のために働く場を提供し、さらに社会復帰のために必要な指導もおこなうことで、社会復帰や社会経済活動への参加を促すための施設です。

就労継続支援B型や就労移行支援事業所などもこれにあたり、現状の把握や必要な支援などの目標を設定し、そのためのリハビリをおこないます。

精神科の作業療法士はきつい?精神科で働くことの魅力とは


精神科の患者は精神的な病気を抱えているため、細かな気配りが必要で、関係構築や関わり方に難しさを感じることもあるでしょう。精神科の作業療法士は、他領域の作業療法士に比べてきついというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

精神科の作業療法士は、困難を抱える患者の状態がよくなり、笑顔が増えたり退院という目標を達成できたりしたときに、大きなやりがいを感じられる仕事です。

また、病院なので日曜日が休日のことが多く、プライベートな予定を立てやすかったり、休みを利用して研修や講習会に参加したりできるのがメリット。キャリアアップのための計画も立てやすいといえるでしょう。

仕事上で大変なこと

精神科では、適度な距離感を保つことを意識しなければならないため、大変だと感じることもあるかもしれません。

特に入所施設の場合、他の人との関わりが薄く、人間関係が病院内だけに限られることも多いことが考えられます。その分、作業療法士との関係が濃くなりがちで、過度な感情移入や必要以上の関わりをもつことで、意図せずに敵意や恋愛感情をもたれてしまうことにつながることも。

また、患者によっては自傷行為や異食などの問題行動がみられることがあり、そういった方に対しては予防のため、物品の管理にも気を遣う必要があります。

作業療法士の給料や将来の展望


作業療法士として働いている方、あるいは将来の仕事として資格取得を目指している方にとって、給料や将来の展望は気になるところです。

そこで、作業療法士の給料や将来性、就職について紹介します。

作業療法士の給料は高い?

作業療法士の年収の全国平均は430.7万円、月額平均は25.5万円で、他業種も含めた平均年収に近い額だといえます。ただし地域差もあるのが実情です。

たとえば東京都や大阪府の作業療法士の平均年収は470万円以上なのに対し、群馬県や沖縄県などでは380万円台、秋田県では347.2万円となっており、どこで就職するかも影響する可能性があるといえるでしょう。

作業療法士の給料や給料アップの方法などは以下の記事も参考にしてください。
作業療法士の給料はどれくらい?将来性や給与をアップさせる4つの方法を紹介

精神科の作業療法士、将来の展望は?

作業療法士の有効求人倍率は4.03で、かなり高い水準です。理由のひとつとして、精神疾患を抱える患者や、高齢化にともなう認知症患者の増加が考えられます。

特に高齢化の加速とともに認知症患者は今後も増えると予想され、作業療法士の活躍の場もこれまでの病院や施設だけでなく、地域包括支援センターなどの地域福祉分野にまで拡大しているため、ますます需要は高まるといえるでしょう。

作業療法士の数も増えてきてはいますが、需要に対してまだまだ足りない状態で、多くの施設で人材が不足しているのが現状です。

精神科の施設に就職するには?

精神科への就職を考えている場合、広い視野をもつことが大切です。精神科の施設は全国にありますが、施設の数には地域差があり、そういった施設があまりない地域では就職活動が難航することも考えられます。

作業療法士の平均給料も地域差が大きいため、場所にこだわらず、全国を対象に就職活動をすることで、自分にぴったりの職場が見つかる確率は高まるでしょう。

精神科の作業療法士は需要の高い仕事


精神科の作業療法士は、患者の困難の解消や改善、回復に向けた作業療法の立案とリハビリをおこなうため、患者との関わりが深い仕事です。その分、目標を達成した喜びや達成感も大きく、やりがいを感じられる場面も多いでしょう。

高齢化にともなう認知症の増加など、時代の流れも後押しし、作業療法士の需要はますます高まると考えられます。作業療法のプロとして患者に関わり、やりがいをもってさまざまな施設で活躍しましょう。

引用元

精神科の作業療法士ができること|一般社団法人 日本作業療法士協会

用語の定義|厚生労働省

精神障害者社会復帰施設の概要|厚生労働省

こころを専門に診る病院の種類は?|厚生労働省

障害福祉領域における作業療法士実践事例集|一般社団法人 日本作業療法士協会

作業療法士(OT)|jobtag

精神保健医療福祉体制の参考資料|厚生労働省

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの作業療法士求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄