介護職の給料は安すぎる?給与アップの方法や厚生労働省の制度について解説
介護の現場では、日々介護士たちが利用者のケアを行っています。しかし、肉体労働や夜勤など体力勝負にもかかわらず、介護職の給料は安すぎるという声もよく聞くことでしょう。実際のところ、介護職の給料はどれくらいなのでしょうか。
今回は、介護現場で働く人々の収入の実情に迫りつつ、給与を上げるにはどうすればいいのかという方法も紹介します。介護職に就きたい方や給料アップを目指したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
介護職の給料は安すぎる?平均年収などの実態に迫る!
介護職の給与はどれくらいなのでしょうか。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員のうち常勤の人の基本給は月額182,260円、非常勤の人は月額130,820円と発表されています。基本給に手当や一時金などが加算されるため、月収としては常勤315,850円、非常勤196,630円です。
また、年収としては、同じく厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、施設介護員の平均年収が352.8万円という結果でした。こちらの数値には一般の介護職員だけでなく、介護福祉士やパートタイマー、アルバイトなども含まれています。
なお、すべての職種の年収の平均は、国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査結果」より433万円と報告されており、比較しづらい部分もありますが、介護職の給料はやはり低いと見られます。
介護職はなぜ給料が安い?理由を解説
では、なぜ介護職の給与はこれほど低いのでしょうか。介護職の給料が安い理由について解説します。
介護報酬の上限
介護報酬とは、事業者が利用者に提供した介護サービスに対して、介護保険から支払われる報酬のことです。
介護保険法に基づき、要介護度やサービス内容、事業所の所在地の相場などによって報酬額が決められており、上限があるため、事業所の企業努力だけでは職員の給料を上げられないという側面があります。
介護職の専門性軽視
介護の現場では、特別な資格を持っていなくても働くことができます。そのため、介護職には「誰でもできる」というイメージがついてしまい、専門性が軽視されがちです。
実際には利用者の自立支援や臨機応変な対応が求められるなど難易度の高い仕事ですが、一般的に認知されていないため、給料が安いと考えられます。
人手不足
超高齢社会の日本において、高齢者など介護を要する人数は増える一方、介護職は慢性的な人員不足で需要が下がりません。さらに、無資格でも就けるため比較的就職しやすいことから、給与を上げなくても就業希望者が減らないのです。
このことが、結果的に介護職全体の給料を下げることにつながっています。
介護業界は内部留保額が高い
内部留保とは、「過去の利益の蓄積額」であり、施設の安定した運営などのために貯められているお金のことです。介護業界は内部留保額が高いという統計があり、それが給料に響いているのではないか、ということが示唆されています。
少し古いデータですが、平成24年の厚生労働省による特別養護老人ホームの内部留保調査では、1施設あたりおよそ3.1億円の内部留保があるという結果が報告されました。
非正規雇用の職員は給料が上がりにくい
前述したように、介護現場では資格がなくても働けることから、パートやアルバイト、派遣社員も多いです。非正規・非常勤職員は労働時間が短いことから、正職員よりもさらに昇給しづらいと考えられます。
介護職の給料アップの方法6つ
介護職で昇給を目指すにはどうすればいいのでしょうか。給料を上げるための方法を紹介します。
介護福祉士などの資格を取得する
介護職員のなかでも「介護福祉士」は国家資格で、資格の有無により給料が変わるため、持っていると待遇が有利です。資格を持たずに介護現場で働いている方が給与を上げたい場合、資格取得を目指すとよいでしょう。
資格なしの場合と比べて、介護福祉士の月収は約5万円高いという結果も出ています。
管理職などを目指してキャリアアップする
役職がつくと、職場での責任は重くなりますが、基本給が上がり役職手当ももらえるため給料がアップするでしょう。
施設長・介護長や訪問介護事業所の管理者などを目指してキャリアアップしましょう。事業所によっては、所定の研修を受けたり資格の条件を満たしたりする必要があります。
サービス提供責任者などの相談業務に就く
介護職では、相談業務によって給料アップが見込めます。具体的には、サービス提供責任者・ケアマネージャー(介護支援相談員)・生活相談員などの職種です。決められた資格の取得や研修を受ける必要がありますが、月額数万円のアップを目指せるでしょう。
夜勤を増やす
体力に自信がある方や夜働くことに抵抗がない方は、夜勤を増やして夜勤手当で稼ぐのもおすすめです。夜勤手当は1回につき5,000円以上もらえることが一般的なので、昼間働くよりも効率的に収入を上げることができます。
勤続年数を増やす
年単位などで昇給を設けている施設の場合、同じ職場に長い期間在籍し続けると給料が上がりやすくなります。たとえば、前述した厚生労働省の令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、常勤の勤続1~2年の人と20年以上の人では月給に10万円以上の差がありました。
ただし、事業所によっては勤続年数が長くなっても大して昇給がない、ということもあるため、必ずしも上がるとはいえません。
転職する
今の職場では給与の面で正当な評価をされていない、と感じる場合は、転職も視野に入れましょう。転職活動をするときは、同じパターンに陥らないよう昇給制度や給与体系などをきちんと確認することが大切です。条件の良いところに転職し、収入アップを目指しましょう。
厚生労働省の介護職員処遇改善加算について
介護現場での給料の見直し政策の一環として、厚生労働省の「介護職員処遇改善加算」があります。介護職員処遇改善加算とは、設定された要件を満たした事業所に対して賃金の改善を図るための加算措置です。
Ⅰ~Ⅴの5つの区分に分かれており、最少(Ⅴ)で職員1人あたり月額12,000円、最大(Ⅰ)で37,000円相当の加算を得ることができます。
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護現場全体のうち93.5%が加算を取得しており、なかでも75.6%が最大加算を受けていることが公表されています。
介護職の給料は今後アップする可能性もある
給料が安すぎるという現実から介護の現場を離れる方も少なくないなか、国でも介護職の給与改善を目指すさまざまな取り組みが行われています。
介護職員処遇改善加算の導入だけでなく、2021年には介護報酬の改定も行われ、現在満足のいく賃金を得られていない方も、今後給料が上がっていく可能性は十分にあるでしょう。
ただし、待遇が変わらない場合は転職も視野に入れ、転職サイトの求人情報もチェックしてみてください。
なお、今回の記事に関連して、以下の2記事でも介護職の仕事内容や給料の話に触れています。気になる方は、あわせてお読みください。
介護職員とは? 仕事内容と将来性を紹介|介護職員を目指すには資格が必要なの?
介護職員のお給料・平均給与はどれくらいなの?|収入UPを目指せる5つの方法を紹介
引用元サイト
厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果
厚生労働省 第1回社会保障審議会後期高齢者医療のあり方に関する特別部会資料