セラピスト1本にしぼったことが、飛躍の転機に セラピスト・溝上奈々子さん
収入の柱は、複数持つべき。自営業やフリーランスとして働いていればとくに、そのようなアドバイスを受けたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、あえて仕事を1つにしぼったことが、飛躍の転機になったという人もいます。それが東京の自宅サロンで漢方アロマトリートメント専用サロンを開く、セラピストの溝上奈々子さんです。
ヨガインストラクターとしても活動していた溝上さんは、2023年から仕事をセラピスト1本にしぼることを決意。そこから半年足らずでSNSのフォロワー数が4000人ほど増え、2ヶ月先まで予約が埋まる人気のサロンになったといます。なぜそのようなことが可能になったのでしょうか。お話を伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
溝上奈々子さん
セラピスト
子育てをしながらパート勤務をしていた30歳のときに、ヨガインストラクターを目指すことを決意。それと同時に体について学ぶきっかけになればとセラピストとしての仕事も始める。2015年にヨガインストラクターとしてデビューし、セラピストと並行して活動を続けていたが、2023年を機にセラピスト1本にしぼる。
現在は自宅で漢方アロマトリートメント専用サロンを経営しており、2ヶ月先まで予約の埋まる人気のセラピストに。10歳4歳の2児の母でもある。
技術と知識を極めたいという思いから、セラピスト1本に
――2ヶ月先まで予約が埋まる人気のサロンだと伺いました。なぜそのようなことが可能になったのでしょうか?
大きな転機となったのが、ヨガインストラクターを辞め、セラピスト1本にしぼったことでした。今でも友人相手であればヨガのレッスンを担当させてもらうこともあるのですが、SNSでヨガに関する発信はやめ、一般の生徒さんをとるのをやめたんです。
元々はヨガインストラクターとして一流になるために体について学ぶことも必要だと思い、選んだのがセラピストの仕事でしたが、だんだんとセラピストを極めたい気持ちが強くなってきました。ただセラピストの学びの費用は高いことが多く、この先どうしようか悩んでいたときに、ヨガインストラクターとセラピストの両方を続けてどっちつかずになるよりは、セラピストにしぼったほうがいいのではないかと思うようになったんです。
――ヨガではなく、セラピストを選んだ理由は?
セラピストの仕事がどんどん好きになったのが大きかったですね。セラピストの魅力はお客さまの変化をすぐに感じられること。いらっしゃったときには疲れた顔をしていた方が、帰るときにはすっきりとした表情で、心からの笑顔で帰っていかれる。自分がしたことでこんなに喜んでいただけることに、やりがいを感じます。また体の構造について学ぶことが好きなのも、セラピストを選んだ理由のひとつです。
ヨガをするのは今でも好きで続けていますが、レッスンを受ける立場でいる方が自分にはあっていると思うようになりました。
――セラピスト1本にしぼったことで、どんな変化がありましたか?
SNSに力を入れていこうと思い、プロのカメラマンにお願いして、施術の動画や写真を撮ってもらったんです。そこで撮影したある動画をリールとしてインスタに投稿したところ、その動画がバズり、フォロワー数が約4000人、LINEの登録者数が200人増えました。そこから予約がどんどんと入るようになっていきましたね。
それまでインスタにはヨガとセラピストとしての施術の動画も両方あげていたのですが、どっちつかずの状況を作りだしてしまっていたのかもしれません。セラピストにしぼってからのほうが、インスタからの集客率が確実にあがっていきました。
不調の改善に効果的な、漢方アロマトリートメント専用サロンとして
――漢方アロマトリートメントとはどんな施術なのですか?
その名の通り、漢方の入ったオイルを使ったトリートメントになります。オイルに配合された漢方の成分が経皮吸収されて全身を巡り、不調を改善していくのが特徴です。母が更年期障害に悩んでいたときに知人からすすめられたらしく、私も使わせてもらったのがきっかけで、漢方アロマのことを知りました。
私はずっと生理不順で、生理が7ヶ月こないなんてこともよくあったんです。でも毎日塗るようになった次の月から、生理周期が正常になって。その効果に驚き、自分の施術にも取り入れたいと思って、すぐに漢方アロマトリートメントの講座に通い出しました。サロンで提供するようになってからはお客さまからも不調が改善したという声をいただくことも多く、好評です。
――セラピストとして心がけてきたことは?
常にお客さまの気持ちを考えることです。疲れている方や体の不調に悩んでいる方がたくさんいらっしゃるので、お客さまにストレスをかけたり、不快な思いをさせたりしたくないという思いで、施術に臨んでいます。
お客さまに触れる一瞬まで気を抜かない
――施術で具体的に気をつけていることはありますか?
お客さまの体に直接触れる仕事なので、皮膚と皮膚がどう触れあったら心地いいか、オイル塗布をする瞬間、少しでも不快感を与えないようにするにはどうしたらいいのかなど、細かいところにまで気を配るようにしています。施術中、お客さまに対して感謝の気持ちを持っていると、丁寧な施術ができる気がします。
――施術後に心がけていることは?
施術後の体についたオイルを拭く作業を、私が担当することにしました。大体のオイルトリートメントのサロンは、施術が終わったらタオルをお渡しして、ご自分で拭いていただくのが主流なのですが、あるサロンにいったときに拭いてもらったことがあって、すごく心地よかったため、うちのサロンでも取り入れることにしました。
施術中はうとうとしていることが多いと思うので、施術が終わった瞬間に「お疲れ様でした」と起こされてしまうと、名残惜しさを感じることもあると思うんです。このサロンでは、施術が終わったら一旦これで終了ですと声はかけて、そこから全身のオイルを丁寧に時間をかけてホットタオルで拭いています。そうすると徐々に意識がはっきりしてきて、拭き終わったころには満足していただき、施術を終わらせることができます。細かなことですが、こういったことの積み重ねがお客さまの満足につながっているのではないかと思いますね。
後編では、溝上さんが自宅サロン開業に至った経緯について伺います。出産、コロナ禍を機に踏み切った自宅サロンの経営。お客さまが増えていき、別の場所にサロンを構えようと考えたこともあったそうですが、子育ての時間も大切にしたいとの思いから、自宅サロン経営を続けているそうです。後編もお楽しみに!