パフォーマーと福祉の仕事を両立。ガイドヘルパーが広げてくれた私の世界【介護リレーインタビュー Vol.50/同行援護事業所おとも】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
同行援護事業所おとも ガイドヘルパー(同行援護従業者)
金子寧々さん
小学校2年生からダブルダッチに取り組んでおり、ダブルダッチの世界大会優勝、ギネスなどの記録保持者。コロナ禍となった際に生活を安定させるため、介護の世界に飛び込み、その後ガイドヘルパーの資格を取得。現在はダブルダッチのパフォーマーとしても活動しながら、ガイドヘルパーと介護の仕事を両立している。
「ガイドヘルパー」とは、視覚障害のある人が外出する際に同行し、支援を行う人のことです。前編では、ダブルダッチの世界大会優勝、ギネス記録保持者であり、現在もパフォーマーとして活躍している金子さんが、ガイドヘルパーとして活動をするようになった背景についてお話を伺います。
人の役に立ち、新たな世界を知ることができる
――ガイドヘルパーになろうと思ったきっかけから教えてください。
私はガイドヘルパーの資格を取る前に、介護の仕事をしていました。介護の仕事に就いた理由は、夢を追いながら生活を安定させるためだったんです。
小学校2年生の頃からダブルダッチ(2本のロープを使って跳ぶなわとび)をずっと続けているのですが、教えてくれた先生がシルクドソレイユのパフォーマーでもあったので、その姿に憧れていました。そして私も夢を叶えるためにアメリカやメキシコなどに先生たちのパフォーマンスを何回も見学に行って勉強をしていましたが、コロナ禍になると公演が中止になり、思うように活動ができなくなってしまったんです。
コロナ禍になり先が見えなくなってきてしまったので、将来のために何か1つ資格を取りたいと思い、そうして飛び込んだのが介護の世界でした。姉が看護師をしており、その会社で介護の仕事の募集をしていたことと、幼い頃からおじいさんやおばあさんとお話するのが好きだったことが、介護の仕事を選んだ理由です。
その後、ダブルダッチのパフォーマーとしての活動も続けつつ、介護福祉士実務者研修、介護福祉士の資格を取得し、どっぶりと介護の世界につかっていきました。
――そこからなぜガイドヘルパーになろうと?
介護の仕事を毎日、楽しんでいたのですが、所属していた会社が運営する障害者のグループホームの人手が足りなくなったとのことで異動になったんです。そのグループホームに視覚障害のある方がいたので、会社からガイドヘルパーの資格である「同行援護従業者」を取ってほしいと言われ、取得しにいったところ、その勉強がとても楽しいと感じました。
ただ、同行援護の資格を取得した矢先に、会社から介護の部署に戻るよう辞令があり……。そこで最初は副業として「同行援護事業所おとも」でガイドヘルパーの仕事を始めたんです。その後ガイドヘルパーの仕事にのめり込んでしまい、今は介護の仕事は夜勤に切り替えて、日中の時間はなるべくガイドヘルパーの仕事をしているというのが、現在までの流れです。
――そのような流れだったのですね。ガイドヘルパーの勉強のどんな点を楽しいと思ったのですか?
元々、障害福祉の勉強をするのが好きだったので、視覚障害や同行援護についてさまざまなことを学び、気付きを得られるのがとても楽しかったんです。それと同時にこの仕事の可能性を感じました。
たとえば講座のなかには、実際に視覚障害のある方に同行援護をさせていただく演習もあったのですが、視覚障害の方の目線に立ったとき、目の前に障害物があったり、点字ブロックの上に立っている人がいたりするということが、どれだけ怖いことなのかが分かりました。そのときにもっと学んで利用者さんに安心してもらえる同行ができたらいいなと思いましたし、それこそがガイドヘルパーの仕事の意義なのではないかと感じたんです。だから資格を取得した際に「早く、現場に立ちたい!」とワクワクしたのを覚えています。
試験はなし。20時間の講座受講で同行援護従業者の資格を取得
――金子さんは同行援護従業者の資格を、どのように取得されたのですか?
私はあるスクールで「同行援護従業者養成研修」を受け、資格を取得しました。試験などはなく、3日間、20時間の研修を履修すれば修了認定される仕組みでしたね。
同行援護従業者養成研修には一般課程と応用課程があり、一般課程だけでも現場に立つことは可能です。サービス責任者となるには応用課程も取得する必要があります。応用過程ではさらに細かく同行援護について学ぶことができるので、私は応用過程も取得しました。
――スクールの費用はどれくらいかかりましたか?
2万7,000円ほどだったと思います。ちなみに今私が所属している「同行援護事業所おとも」でも「おともスクール」という資格取得のためのスクール運営をしており、ここでは1万6,500円、さらにご家族に視覚障害者の方がいると5,500円で受講することが可能です。私は別の場所で取得しましたが、ガイドヘルパーになるはじめの一歩として踏み込みやすい費用だと思いました。
同行援護のマッチングアプリを活用し、副業としてキャリアをスタート
――資格取得後、「同行援護事業所おとも」でガイドヘルパーの仕事を始められたということですね。
はい。副業としてガイドヘルパーの仕事ができる場所を探しているときに見つけたのが、「同行援護事業所おとも」が提供している「ガイドヘルパーズ」というアプリでした。このアプリでは、同行援護を必要としている視覚障害者の方と直接マッチングする仕組みになっていて、空き時間を有効活用できると思ったんです。
視覚障害のある方が出かけたいと思っても、タイムリーにガイドヘルパーを見つけることが難しいという現状があり、それを解消するために開発されたアプリなんだそうです。
――それは便利ですね。最初に同行援護をしたときはどんなことを感じましたか?
初めてのご依頼はお買い物と散策の同行だったのですが、緊張感はもちろんありながらも、やりがいと楽しさを感じました。
私は人とお話しするのが大好きなので、利用者さんと楽しくお話ができて、緊張もほぐれていったんです。また私から「こういうときはどうしたらいいですか」、「どういうことをされるといいサポートだと感じますか」という形でいろいろお聞きして、たくさん学ばせていただき、とても有意義な時間になったと感じました。
同行援護をするときは、目が見えていると気付かないような、小さな段差や、地面がコンクリートから砂利になるときの変化など、細かな情報を伝えなくてはなりません。初めてだったのでそれがスムーズにできなかったり、ぎこちなさはあったりしたと思うのですが、事故もなく安全に過ごせたことに、とにかくほっとしました。そしてもっとスムーズに同行援護ができるよう、もっと頑張ろう、経験を積もうと改めて思いました。
視覚障害者の方への同行援護に、楽しさと大きなやりがいを見つけたという金子さん。後編では、普段ガイドヘルパーとして心がけていることや、仕事のやりがいについて伺います。