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介護・看護・リハビリ 2020-10-11

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.13】「ばかばかしい…」とレクに参加しないFさんに、どう対応する?

介護技術だけでなく、コミュニケーション力や人間性、倫理観など、さまざまな知識・能力が求められる介護職。利用者の背景や状況、人となりも様々だから、現場での対応も一筋縄ではいかないこともあるでしょう。そんな日々に少しでも役立つ情報をお届けしようという当企画。今回は、レクリエーションに参加したがらない利用者への対応を考えます。

「子供だましでばかばかしいわ…」と、レクリエーションに参加しないFさん。そのままでもいい?

70代のFさんは、1年程前に転倒して骨折。それ以来、車イスでの生活を続けています。週に1回、デイサービスに通っていますが、Fさんはいつも、レクリエーションに参加するのを拒んでいます。

スタッフが声をかけても、「こんなものやるより、家でテレビでも見ている方がいい」「こんな子供だまし、ばかばかしくてできない」などと、否定的な発言ばかりが返ってきます。

利用者と一口で言っても、いろいろな性格の人がいます。Fさんのように、レクリエーションに参加したくないという人も少なくはありません。では、どう対応するのがよいのでしょうか? 丁寧に紐解いていきましょう。

ポイント1:『参加しない』という選択肢は最後に

<利用者の思いや立場を最優先する>ことは、確かに介護現場におけるトラブル回避の大原則です。だからといって、言われるままに許容することは、利用者のQOL低下につながりかねないので要注意です。

嫌がる理由の背景には、さまざまな事情が隠れています。例えばFさんの場合、車イス生活を受け入れられずイラついているのかもしれません。また、年齢とともにできなくなることが増えていく不安感が、攻撃的な言動を助長している可能性もあります。そうであるならば、介護職としてはそんなFさんにこそ、気分転換になるようなレクリエーションを提供したいところです。

ですから、まずは、どうしたらFさんが参加に前向きになってくれるかを探りましょう。

ポイント2:参加を嫌がる理由に着目し、やってみたいことを聞いてみる

提案したレクリエーションを「子供だましでばかばかしい」と言うFさん。「そう言わずにやりましょう!」と無理強いしても、さらに不機嫌になりかねません。

であれば逆に、やってみたいことを聞いてみるのも一つの手です。例えば、「どうすればみんなが楽しめるレクリエーションを提供できるのかをいつも考えているんですけど…。Fさんのお知恵を貸してもらえますか?」のように、相談を持ち掛けるように問いかけて、Fさんの好みを探ってみましょう。会話をするうちに打ち解けていけば、少しずつでも心を開いてくれるかもしれません。

レクリエーションを嫌がる利用者にしてはいけない2つのこと

1.参加を強要する
2.不参加のまま放置する

レクリエーションとは、脳や身体機能を活性化させたり、ADL(日常生活の動作)やQOL(生活の質)を上げたり、コミュニケーションを促したりと、高齢者の生活にプラスになる様々な効果が期待できるものです。必ずしも集団でやらなければいけないものでもなければ、「遊び」のようなことばかりでもありません。生活の中にある動作、例えばテーブル拭きや食器拭きなどもレクリエーションになり得るのです。

介護職であればその意義を理解していますが、利用者はそうとも限りません。無理強いや放置をしてより利用者の心を頑なにしてしまうよりも、その効果などを伝えつつコミュニケーションを図る方が得策です。まずは、利用者一人ひとりの思考をしっかり把握することから始めましょう。そうすれば段々とでも、参加の意欲を持ってもらえる糸口が見えてくるはずです。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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