介護職の離職率はどれくらい? 離職の理由とは|介護職をすぐ辞めがちな人の6つの特徴
介護職は離職率が高く、長く働くことがむずかしいというイメージを持っている方もいるでしょう。実際、介護職の離職率は職種や環境次第では高くなることもありますが、その理由を把握し、必要な対策を講じれば長く働き続けることも可能です。
ここでは、そんな介護職の離職率や離職の理由、すぐに辞める人の特徴などをくわしくご紹介します。
介護職の離職率はどれくらいなの?
それでは介護職の離職率について、公益財団法人介護労働安定センターの調査結果をもとに、さまざまな角度からデータを分析してみましょう。ここからは、介護職ならではの傾向がみられます。
離職率は14.3%|介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査結果」より
介護労働安定センターが公表した2021年度の介護労働実態調査結果によると、介護職の離職率は14.3%となっています。
ちなみに前年度の離職率は14.9%、現時点でのピークは2007年の21.6%であることから、離職率は低下傾向にあるようです。
離職率の平均は過去最低を記録|勤続意欲は増加傾向に
最新の離職率に関しては、その数値が過去最低を記録している点にも大きな特徴です。このことから、業界内での取り組みなどが積極的におこなわれたことで就労者の勤続意欲は増加傾向にあります。
訪問介護員の離職率は13.6%
介護職のなかでも、デイサービスなどに従事する訪問介護員の離職率は13.6%となっています。これは、介護職全体の離職率に比べて低い数値です。そのため、働きやすい環境の整備などが積極的に進められていることがわかります。
サービス提供責任者の離職率は10.1%
幅広い介護サービスを提供するうえで欠かせないサービス提供責任者の離職率は、10.1%となっていました。
サービス提供責任者は介護業界における経験が豊富であるケースが多く、そのことも離職率の低さに関係していると考えられます。
介護職員の離職率は14.6%
介護にかかわる幅広い業務を担当する介護職員の離職率は、14.6%です。上述した2つの職種に比べると離職率は高くなっており、全体の離職率と比較しても+0.6%であることから、若干ではあるものの離職する人の多い職種といえます。
事業所別の離職率はどれくらい?
次に介護職の離職率について、職種ごとの違いや離職までの勤務年数などの側面から確認してみましょう。今回は訪問介護員と介護職員、サービス提供責任者の3職種についてご紹介します。
事業所状況別|民間企業と地方自治体
事業所状況別の離職率は民間企業が15.7%なのに対し、地方自治体は7.0%です。両者のあいだには8.7%もの開きがあることから、地方自治体の事業所のほうが働きやすい環境の整備などが積極的に進められていることがわかります。
事業所規模別|小規模~大規模
事業所規模別の離職率は、以下のとおりです。
・小規模(従業員数19人以下):16.4%
・中規模1(同20人以上49人以下):14.3%
・中規模2(同50人以上99人以下):12.4%
・大規模(同100人以上):12.5%
これらの数値は、大規模事業所をのぞいて減少傾向にあります。
介護サービス別の離職率はどれくらい?
職員の離職率は職種や事業所だけでなく、提供する介護サービスによっても異なります。どのサービス従事者の離職率が高いのかを、少しだけですがご紹介します。
・訪問介護:13.3%
・通所介護:15%
・特定施設入居者生活介護:16.2%
・介護老人福祉施設:13.4%
・介護老人保健施設:11.6%
特定施設入居者生活介護がもっとも高い
前述した介護サービス別で離職率を見た場合、その数値は特定施設入居者介護が16.2%ともっとも高くなっています。
ただし、前年の同数値は18.8%であったことから、改善が進んでいることも特筆すべき点として挙げられるでしょう。
介護職が離職を選ぶ理由とは?
離職を選ぶ理由はひとそれぞれですが、全体としてはある程度の傾向がありそうです。おもな理由を把握しておけば、働きながら離職を回避するための対策を講じられるでしょう。
ここでは、2021年度の介護労働実態調査結果から考えられる離職理由としては以下のものが挙げられます。
1. 職場の人間関係に問題があった
介護職に限らず、職場の人間関係は離職する大きな要因のひとつです。とくに介護職はひとりで仕事を進めることはできず、必ずチームでサービスを提供するため、人間関係に問題をかかえてしまうと、仕事を続けるのが困難になります。
また職員間の人間関係だけでなく、利用者さんとの関係が悪化することで離職する場合もあるのは、人を相手にする介護業界ならではの特徴です。
2. ライフステージの変化|結婚・出産・育児など
近年では人生の節目で自身のキャリアを変えることがよくありますが、そのなかには結婚などの大イベントも含まれます。
とくに出産は女性しか経験しないライフステージの変化で、その後の育児も考えて介護から離職するという傾向が強いです。
3. 将来に対する不安|ビジョンが見えない
自分の人生を考えたときに、具体的なビジョンが見えてこないなど、将来に対する不安が介護職からの離職につながることもあるでしょう。
資格取得によるキャリアアップの道筋はあるものの、多くのスタッフは未経験・無資格からのスタートになるため、明確な目標が見えない人もいるのが実際のところです。
4. 収入面での不満
介護職の収入は業務内容や労働環境に見合っていない、というイメージをもつ人が多いですが、とくに入所施設の介護職は、同じ夜勤のある看護師よりも給与水準は低めです。
処遇改善のための施策も講じられていますが、ほかの業種と比べた場合給与が低いというデメリットを打ち消すにはいたっていないのが実情です。
5. もっと自分に合う仕事や職場を見つけた
介護職は人材不足が恒常化しており、とくに経験者や有資格者に対するニーズは高いです。そのため給与面をはじめより条件のいい職場を求め、現在の職場を離れる人が多いという傾向もあります。
また、職場内の人間関係に不満があり、新たな環境に身を置きたいと離職する場合も考えられるでしょう。
介護職をすぐ辞めがちな人の6つの特徴や傾向とは?
介護職において離職にいたる理由には、就業者自身の考え方や仕事との向き合い方に関するものも少なくありません。そのため、介護職を長く続けたい場合は、自分自身がそのための取り組みを意識的におこなうことも忘れないようにしましょう。
ここでは、そのような取り組みをする際にも知っておきたい介護職を辞めがちな人の6つの特徴をご紹介します。
1. 将来の目標やビジョンがない
どのような職種でもいえることですが、将来の目標やビジョンがなく、ただ漠然と働いているだけの人は仕事を辞めがちです。
介護職においては、新たな資格の取得やよりよい待遇で働くための転職を目標として設定するだけでも日々の業務に対するモチベーションを維持でき、長く働き続けられるでしょう。
2. 体力がなく、力仕事が苦手
介護職では体力がなく、力仕事が苦手な人も離職しやすい傾向があります。とくに利用者さんに対して身体的介護サービスを提供する場合には力仕事が発生しやすく、体力がないと働き続けることがむずかしくなることも珍しくありません。
そのため、介護職では自分自身の健康維持や体力増強のための取り組みをすることも大切です。
3. コミュニケーションを避けがち
介護職ではコミュニケーションが苦手で人と積極的に関わろうとしない人も離職しやすい傾向があります。介護の仕事では一緒に働く同僚だけでなく利用者さんともコミュニケーションをとる機会が多く、コミュニケーション不足が人間関係の悪化を招くケースも少なくありません。
このことから、介護職では周囲の人と積極的にコミュニケーションをとることも働き続けるうえでは不可欠です。
4. 新しい知識や技術を覚えるのが苦手
新しい知識や技術を覚えるのが苦手な人も、介護職では離職を選びやすくなっています。介護の仕事ではサービスの質の向上や利用者さんのニーズに応えるために、つねに新しい知識や技術を習得することが求められ、その姿勢を保てない人は仕事についていけなくなることも珍しくありません。
このことから、介護職では就職後も新しいことを学習する意欲を保ち続けることが重要となるでしょう。
5. 責任を求められる仕事が苦手
介護職では、責任を求められる仕事が苦手な人も離職しやすい傾向にあります。介護サービスを必要とする利用者さんは自力での生活が困難であることから、そのサービスを提供する側には自然と責任が発生するからです。そのため、プレッシャーに弱い人も離職を選択するケースが少なくありません。
このことから責任を全うするうえでも、介護職に従事する人にはたしかな知識や技術を身につけることが求められます。
6. 臨機応変に対応できない
臨機応変な対応ができず、マニュアルどおりでない対応に不安を感じる人もまた、介護職では離職を選びやすい傾向があります。これは介護サービスの提供時に利用者さんやその家族の要望に応えることが重要となり、提供する側には臨機応変な対応が求められるためです。
そのため、介護職ではマニュアルどおりではない対応をおこなえるようにしておくことも忘れないようにしましょう。
すぐ辞めてしまうのは職場に理由がある場合も!
介護職に従事する人が離職をする理由には、個人的なものだけでなく施設側に関係するものも少なくありません。そのため、長く介護職に従事するには、職場選びや職場の問題点の改善を施設側に働きかけることも重要です。
このことを踏まえたうえで、介護職に従事する人の離職につながりやすい施設側の理由を見ていきましょう。
1. 教育体制に問題がある
離職率の高い介護系の職場には、教育体制に問題のあるところが少なくありません。たとえば、新人が入ってもちゃんと教育をするための体制が整っていない職場では、いつまでたっても仕事を覚えられず、不信感から離職する職員が多くなってしまうケースが多くあります。
このことから、施設側には採用した職員にしっかりと業務内容を落とし込むことが求められるでしょう。
2. 契約を守らない|募集要項との違い
雇用契約を結んだ際の契約内容を守らない職場でも、離職率は高くなってしまう傾向があります。具体的には勤務時間や給与などに関わる契約内容との相違が離職へとつながってしまうケースが多く、施設側はその内容を順守しなければなりません。
また、求人広告などに記載した募集要項との違いも、離職を引き起こす要因となるケースが多いです。
3. 問題を解決しようとしない|相談できる環境がない
施設側に問題を解決しようとする姿勢が感じられない場合にも、職員は離職を選ぶことが多くなります。昨今ではパワハラやセクハラなどの問題が離職へつながるケースが多く、施設側にはこれらの問題へしっかりとした対応をすることが求められるからです。
また、職場内でこのような問題に直面している職員が相談できる環境を整えることも、職員の離職を回避するためには重要となります。
転職しても大丈夫? 介護職の需要は高い?
ここまで介護職の離職率をご紹介しましたが、離職後ほとんどの人は新たな職場を探すことになります。介護職としての経験は、転職する際どのように活かされるのでしょうか。
介護業界はまだまだ人材不足! 介護職の需要は高い
介護に対するニーズは増える一方で、介護施設や介護サービスを提供する事業所も増加傾向です。
その一方介護の仕事に就く人の数が追いついていないため、人材不足は介護業界全体に共通する問題として、どの事業所でも対策を立てています。
長く働ける職場を見つけるには?
介護職を長く続けるには、働きやすい職場を見つけることが大変重要です。上述したような問題のある職場は、就職・転職活動をしている段階で候補から外したほうがよいでしょう。ここでは、長く働ける職場を見つける方法をご紹介します。
1. 採用人数や募集期間
事業所規模に対して採用人数が多すぎるのは、職員の定着率が低く離職するスタッフが多いことの裏返しです。また、つねに求人募集が出ているところも、職員の離職が向上化しているということを示しています。
一部例外はあるものの、そういった事業所は職場環境があまり良好でないことが予想されるでしょう。
2. 給料や待遇
求人情報を確認する際は、給与をはじめとした待遇面も注意しておきたいところです。とくに極端に高い給与が示されている事業所は、定着しない人材を早期に補充するため、給与を高くしていることもあります。
そういったところは職場環境が悪く、離職するスタッフが多いということも考えられるので、給与だけで職場を決めるのは非常に危険です。
3. 施設を見学してみよう
より自分に適したところで働くためには、文字でしかわからない求人情報だけで職場を決めず、実際に施設や事業所を見学してみることをおすすめします。
職員や利用者の表情を見れば施設の良し悪しが一目瞭然ですが、ほかにもスタッフや利用者数、施設の衛生面などからも、人材が定着しているかどうかがある程度推測できるでしょう。
介護職の離職率は低め! 長く勤められる職場を探そう
介護職は業務内容が非常にハードな割に労働条件に恵まれないという特徴がありましたが、それによる人材の流出を防ぐための対策もなされています。
ここまでご紹介した離職の傾向を頭に入れながら、より長く働ける職場を探すことで、自分の福祉(しあわせ)にもつながるでしょう。
引用元
介護労働安定センター 令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について
介護労働安定センター 令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書