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介護・看護・リハビリ 2021-06-02

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.34】買い物代行ついでに銀行も頼まれた! 家事援助でこれあり?

介護職は、性格も価値観も、家族関係も経済事情も異なる利用者・入所者と向き合うお仕事。だからこその面白みも困りごとも、この仕事の醍醐味です。当企画では、ありがちな「困りごと」の解決方法をご紹介します。

「足が痛くて銀行に行くのも辛いのよ。キャッシュカード預けるから、おろしてきてもらえる?」

一人暮らしのHさん(女性)は、週に3回、家事援助の介護サービスを受けています。息子夫婦は近所に暮らしているそうですが、あまり交流がないようです。一方で、ご近所や担当ヘルパーとは良好な関係を築いています。

そんなHさんですが、最近めっきり足腰が弱くなってきたようで、銀行に行くのも辛いそう。そんなある日、Hさんが担当ヘルパーに「買い物のついでに、お金おろしてきてもらえないかしら? キャッシュカード預けるから、ね。」と頼んできました。Hさんの気持ちも痛いほど分かりますが、業務範囲外のことです。

こんな時、どう対応するのが良いのでしょうか? ポイントを押さえてみていきましょう。

ポイント1:事業所から派遣されているヘルパーであることを忘れずに

利用者との付き合いが長くなってくると、関係性も濃密になってくるのは仕方ありません。情が移ってつい業務範囲を超えたサポートをしてあげたくなりますが、そこは冷静になりましょう。

良かれと思ってやったことが信頼関係を壊す引き金になることもしばしば起こります。お金絡みの問題はその最たるものです。普段は関わりのほとんどない家族が口を出してくることもよくあること。当事者同士しか実態が分からないようでは、トラブルになった時に事業所もフォローができません。業務範囲以外の依頼は安請け合いせず、一度、事業所に報告をしてから、対策を考えましょう。

ポイント2:利用者が自ら銀行に行ける方法を考える

業務範囲を超えたサポートはするべきではないですが、目の前にいる親しい人が助けてほしいと言っているのを放ってはおけませんよね。とはいえ、現金やキャッシュカードのやり取りは避けたいところ。

それなら発想を転換して、Hさん自らが銀行に行ける方法を考えてみましょう。例えば、お散歩のルートに銀行を組み込む、シルバーカーや車イスの導入を提案するのはどうでしょう。今後ずっと続く課題であれば、Hさんをはじめ、ご家族との話し合いを設けることも視野に入れて動くとよいでしょう。

お金に関することの対応で心得るべき2つのこと

1. 現金、通帳、キャッシュカード等のやりとりはしない
2. 事業所に必ず報告を入れる

しつこいようですが、お金にまつわる問題は、良かれと思ってやったことでも、ちょっとした掛け違いで信頼関係を壊す引き金になってしまいます。少しの隙も作らないのが理想です。

それにはまず、「現金、通帳、キャッシュカード」等のお金に関係するものは預からない、その前に受け取らない、もっと言えば触らないことです。どうしても避けられない場合は、「自分と利用者だけしか知らない」という状況は絶対に作らないこと。そのためには、現場で対応をする前に必ず事業所・上長へ報告を入れましょう。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

私自身も、デイサービスに従事していた時に同じような経験をしました。

エレベータのない団地の4階に住む利用者だったのですが、自宅に行ったときに、「階段の上り下りが大変だからお金をおろして来てくれないか」と通帳やキャッシュカードを渡されたり、振り込み用紙と現金を渡されて「振り込みをしてきてくれ」と頼まれたことがあったんです。

ケアマネージャーに相談したところ、その利用者は身寄りがなく独居だったこともあり、「デイサービスの職員に心を開いているのであれば、可能なら対応をお願いします。」ということに。そこで、買い物同行をするときにお金絡みの用事も一緒に済ませることにしました。ポイント2で紹介した対応と同じですね。

このような対応は、ケアマネージャーに相談してからであれば、基本的には問題ありません。対応できることも多いかと思います。所属する事業所の上長にも相談しながら、利用者の思いやQOLの向上に寄り添えるサービスが提供できるといいですね。

ですが、これは、デイサービスとしては「やり過ぎ」と言えなくもありません。続くようであれば、デイサービスではなく訪問介護などで対応できるよう、上長やケアマネージャー、ご家族と相談するようにしましょう。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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