【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.22】『くにしま鍼灸整体院』國嶋 徹さん流 鍼灸師の手技&技術
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
これまで「くにしま鍼灸整体院」院長 國嶋 徹さんに、鍼灸師を目指したきっかけや、お仕事の魅力について伺いました。今回は、國嶋さんが施術を行うときに大切にしていることや、施術の流れについてご紹介します。
体の表面に現れていることから、体の内側を読み解く
―基本的な施術の流れを教えてください。
まずは問診票に記入していただき、それをもとに口頭での問診を行います。その後、脈、舌、お腹の触診を行い、鍼による治療を行います。
―問診で意識していることはありますか?
問診で重要なのは、患者さんのニーズを確認することです。とくに鍼灸院では、サービス業という側面もありますから、最終評価は患者さんの体感になります。そこが東洋医学のいいところでもあると思うんですが、患者さんの主訴がもっとも大切なところです。
例えば、肩が「凝る」と言うか、「張る」と言うか。「張る」と言う人は、体が緊張していて、気が張っているんです。つまり、外的なストレスに原因があるんじゃないかと推測できる。そういう言葉尻を拾っていくことも、ニーズや不調感を明確にするためには重要かなと思います。
―治療前の診察で重視していることはありますか?
一番は、体表観察です。肌の柔軟性や色、乾燥具合、毛穴が立っているか、荒れているか、冷えがあるか…。肌は外界との境界なので、変化が起きるということは何かがあるということなんですよね。サインが出ているツボに関する器官や部位に、何かがあって反応が出ている。そうして様々な情報を読み取り、症状に対する仮説を立てていきます。
でも、とくに混んでいる日の診察では、なかなか時間がなくて、脈・舌・お腹のチェックと、ある程度の触診で、症状の原因を考え出さないといけないことも多いんです。だから、体表観察をシンプルにできるように、問診票を書いていただくようになりました。
問診票で症状のスクリーニングをして、患者さんのニーズを聞き取り、体表観察をすることで原因を探っていく。最後に、原穴という診断点に触れて痛みがあるかを確認し、診断を確定させます。治療の前段階がしっかりできていれば、あとはマニュアルにのっとって治療していくだけです。
現代人の生活に合わせ、背中の治療を重視
―鍼治療で意識していることは何ですか?
治療の際は、その症状の大元になる問題を先に処置します。本治法と標治法というものなんですが、痛みのある局所「標」に鍼を打つだけでなく、原因となる根幹「本」を治療する方法です。「本」と「標」の両方を処置することで、症状が改善しやすくなります。例えば風邪をひいて、体が熱に傾いていたら、熱を冷ますといった不調の大元の処置をして、そのあと鼻水や咳など個別の症状に関係する場所を選んで治療していきます。
鍼を刺すツボは、最初の診断で原因に当たりをつけているので、それに沿って決まっていきます。ツボは組み合わせることで相乗効果が出るものなので、どう組み合わせるかっていうのが、腕の見せ所です。
鍼の太さや深さは、肌のキメの細かさや、脈の強さ、肌質などを見て決めています。体のエネルギー量を見る感じですかね。例えば、色白で肌に水が浮いた感じの人は、深くて強い刺激をすると脳貧血を起こしやすかったり。ゴツゴツしていて褐色肌で、皮膚が厚そうな人は深めに刺したほうがよかったり。
―國嶋さんの治療の特徴は何ですか?
僕の師匠は背中の疲れをとることを大切にしていたので、僕もそこは重視しています。鍼灸の理論は昔の人が作ったもので、その伝統的なやり方だと手足の末端を重視しているんです。だから、背面に鍼をうつことが少なかったりします。
でも現代人の生活スタイルは、デスクワークなど座っていることが多い。本当に、肩甲骨から上がガチガチだったり、ストレートネックだったり、腰がフラット気味だったりと、背面に症状が出ている人は多いです。昔と今の生活スタイルが違うことを踏まえて、今のニーズに応えられるように、背中へのアプローチも煮詰めているところです。
―治療後は?
ニーズに応えられたかの確認ですね。先ほども言いましたが、もちろん治療後の顔色や脈の打ち方など、僕自身も評価しますが、最終評価は患者さんの体感も加わります。ここが難しいところで、患者さんにとって僕は「先生」なので、本音が聞けるとは限らないんですよね。「効いてない」とは言わないことが多い。逆に、僕の中ではあまり治療による変化を感じられなかった場合でも、患者さんご自身が変化を感じていただければ、それはそれでOKだったり。なので、出来る限り患者さんと擦り合わせ確認して、次回につながるようにしています。
お客様のニーズを絞り込むために、さまざまな角度から診断を立てていく國嶋さん。いろんなアプローチを試しながら鍼灸を追求しているところだと語ってくださいました。
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【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.22】『くにしま鍼灸整体院』國嶋 徹さんが鍼灸師を目指したきっかけ>>
取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥
教えてくれたのは…
鍼灸師 國嶋 徹さん
慶応大学卒業後、都市銀行にて2年間勤務。その後スポーツトレーナーを目指し鍼灸学校に入学。港区の有名鍼灸院に弟子入りし、16年間勤務後、独立し「くにしま鍼灸整体院」を開く。ダンサーや音楽演奏家、歌手、スポーツ選手など幅広く施術している。