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ヘルスケア 2021-06-17

教育と臨床の現場に立つ、教員柔道整復師の働き方【ヘルスケアのお仕事 Vol.32 日体接骨院 熊谷将史さん #1】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

今回ご登場いただくのは、日本体育大学医療専門学校で教鞭をとりながら、付属接骨院にて臨床の現場にもたっている、柔道整復師・熊谷将史さんです。熊谷さんは、柔道整復師として日体接骨院に勤務してから3年後、柔道整復師の専門学校で教師としても働き始めました。

前編では、そんな熊谷さんの接骨院での仕事と、教師の仕事の違いにフォーカス。臨床現場と教育現場を平行している、熊谷さんの働き方をご紹介します。

教えてくれたのは…

「日体接骨院」
院長 熊谷将史さん

日体柔整専門学校(現・日本体育大学医療専門学校)を卒業後、日体接骨院に勤務。その後、専科教員免許を取得し、日本体育大学医療専門学校 整復健康学科 柔道整復コースの教員に。教鞭を取りながら接骨院に勤務しつつ、ボランティア活動として地域のスポーツ大会での救護活動にも取り組んでいる。

働いているのは「学生の学びの場」でもある接骨院

熊谷さんが働く「日体接骨院」は、
日本体育大学医療専門学校の付属院。
日頃から学生たちが現場での実習に訪れます

―まず、日体接骨院がどんな院なのか教えてください。

僕が勤務している「日体接骨院」は、専門学校の付属接骨院です。

他院との大きな違いは、学生が臨床現場を学ぶ場でもあるという点です。「授業で学んだ技術が、現場でどう活かされているのかを実際に見せる」という面があるので、マッサージよりは怪我に対する柔整技術での治療がメインになります。

もちろん、怪我を治療する過程で必要なマッサージなどの手技も行います。ただ、いわゆる「マッサージ60分○○円」ということは、メインにはしていません。

また、日体大の系列でもあり世田谷キャンパスが近いので、部活動をしている大学生の患者さんが多いという特徴もあります。

―熊谷さんは、接骨院で勤務しつつ、教員のお仕事もされています。教員になった経緯を教えてください。

僕自身、日体医療専門学校(当時は日体柔整専門学校)に入学して、柔道整復術を学びました。当時から日体接骨院での実習授業もあり、現場の先生や院自体にすごくいい印象があって。ちょうど卒業のタイミングで募集があったので就職したんです。

院のスタッフとして働き出し、実際に自分のことを教えてくれた先生が近くにいる環境のなかで、教員へのあこがれが大きくなっていきました。また、教員として授業を持ちながら接骨院で働く、というレアな環境がすでに整っていたということもあり、専科教員免許を取ることにしたんです。

3年間の実務経験を積んだ後、免許取得のための講習を受け、学校側に教員になりたいと希望を伝えて、教員になりました。

教師の魅力は、現場での経験を実体験として学生に伝えられること

授業中の様子。熊谷さんは、
柔整整復コースの柔道整復実技領域担当教師として、
実技の授業や接骨院での実習を指導しています

―教員になってよかったと感じることはありますか?

自分が実際に現場に立って感じたこと、怪我に対して施術をする大変さなどを学生に伝えられることが、すごくうれしいなと思います。教科書に書いてあることだけでは、やっぱりわからないこともありますから。

教科書にプラスαで教えられるのは、接骨院に勤務しながら教員をしていることのメリットのひとつだと思います。

―熊谷さんは実技の授業を担当されているそうですが、臨床現場と授業で実技に大きな違いはありますか?

授業では、包帯やテーピングなどを巻いているところや固定材料を作る姿などを、実際に見せながら教えていきます。

現場で行う場合は、痛がっている患者さんが目の前にいる状況ですから、作業はスピード重視です。でも、そのスピードで作業しているところを学生に見せて、さあ作ってみなさいと言ってもできません。

だから、授業で技術を見せる際は、プラモデルを組み立てるように、ひとつひとつ作業をコマ送りにする感じですね。現場では5分で行う作業を、1時間半かけて見せていく、というのが大きな違いだと思います。

「現場ではスピードが大事。でも、それができるためには、
ひとつひとつの工程をきちんと理解している必要があります」

―ご自身の経験から、学生によく伝えていることがあれば教えてください。

僕たちの職業で一番よくないのは、見た目でわかりやすい怪我以外のものを見落とすことだと思います。

授業では、大きな怪我に対してどうするのか、ということをメインで扱います。でも現場で診るのは、大きな怪我ばかりじゃないんです。患者さんが原因を認識していない小さな怪我が痛みにつながっていることもある。もしかしたら、内科的な疾患や過去の病歴が、痛みの原因かもしれません。

だから、「とにかく痛いから来た」という人に対して、ただ揉んで電気をかけて…ではなく、きちんと背景を知る努力をしないといけない。柔道整復師は、誰が見ても明らかにわかるような怪我以外も診て原因を追究し、治す方向に導かないといけない、と伝えています。

実際に勤務する接骨院が、怪我メインで診る場所ではない可能性もあります。マッサージをメインにしている接骨院も実際多いのが現状です。でも柔道整復師であれば、見えない痛みの原因まで追究することは、変わらないのかなと思います。

―現在の働き方について教えてください。

接骨院は、月・火・木・金の12:30~19:00に開院しています。14:45から患者さんが帰られるまでは、学生が実習を受けに来ます。

休診日の水曜は、専門学校で授業。10:40~12:10は1年生の包帯固定学、13:00~14:30は2年生の上肢に対する整復法や固定法の授業です。

昨年から院長として働いています。昨年はコロナ禍で、学校に合わせて開院していたので、開院時間もギュッと短く、すべて予約制で受け入れていました。学校附属の接骨院ということもあり、母体は学校にあるので、経営にそこまで重きをおかなくてよいという面もあります。

今年から通常勤務に戻り、患者さんの来院は多くて1日30人ほど。3人の柔道整復師で診させていただいています。

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学生時代の実習場所であり、自分を教えてくれた教師が働いていた『日体接骨院』で働き出した熊谷さん。教師になるのに恵まれた環境があったことから、ご自身も教師への道を歩み始めました。臨床現場に立つ教師になって7年。その経験を後進に伝えられることが嬉しいと熊谷さんは言います。「前提として、学生に技術を見せる場でなければならない」と語る姿に、基本を大切にしながらお仕事に携わっていることが伝わりました。

次回は、熊谷さんが所属する「日体接骨院」が行っている、地域ボランティアの活動についてお聞きします。

▽#2はこちら▽
地域ボランティアで接骨院の認知を高めたい【ヘルスケアのお仕事 Vol.32 日体接骨院 熊谷将史さん #2】>>

取材・文:山本二季
撮影:米玉利朋子(G.P.FLAG)

Infomation

日本体育大学医療専門学校 付属 日体接骨院

住所:東京都世田谷区用賀2-2-7
TEL:03-5717-6162

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