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介護・看護・リハビリ 2021-07-06

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.39】利用者がグチっぽくて、気持ちが削られる… 切り抜け方法は?

介護のお仕事は、人と向き合うお仕事です。中には気難しい人や扱いづらい人もいるでしょう。どんな利用者とも潤滑に対応するためには、聞く力が大切。今回は、この「聞く力」を取り上げます。

家事援助で頻繁に通う利用者が、グチぽくて辛い。どう対応するのがいい?

家事援助サービスを利用中の70代女性Tさん。「姑にはいじめられ、亭主には浮気され。…思い起こせば、ロクなことがなかったわ」が口癖で、口を開けばグチばかり。「あーあ。つくづくいやになるわ」「まったく、ろくな人生じゃなかったわ」と何度も繰り返し聞かされているうちに、担当の介護職はうんざり。いろいろとご苦労をされたんだなと思う一方で、あなただけが特別なワケじゃないというトゲトゲした気持ちも感じています。

家事援助に入る短い時間だけでも、お互いに気持ちよく過ごしたい。誰もが思うことですよね。では、こういう利用者にはどう向き合うのが良いのでしょうか。ポイントを押さえながら見ていきましょう。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

ポイント1:まずは「理解を示す声がけ」を

グチを言う背景には、主に2つの理由があると考えられます。ひとつは困ったことがあってそれを訴えている場合。もうひとつは、さびしさから自分の話を聞いてほしい場合です。Tさんの場合は、苦労話が主なので、さびしさからのグチだと考えていいでしょう。

家族と離れて暮らしている、一人暮らし、体調等の理由から人との交流が少なくなっているなど、高齢者のなかには、特に孤独感を感じている人も少なくありません。そんな状況で、追い打ちをかけるように自分の話に興味を示してもらえなかったら、誰だって悲しい気持ちになって、さらに心も荒んでしまいますよね。まずは、利用者の孤独感を増長しないよう、「いろいろとご苦労なさったんですね」など気持ちに寄り添い、理解を示す声かけから始めましょう。

ポイント2:相手を肯定する声かけで信頼関係を築く

ポイント1のような相手に寄り添い理解を示す言葉と一緒に、相手を肯定する言葉をかけることで、利用者との信頼関係を築きやすくなります。例えば、「いろいろな苦労を乗り越えてこられて、Tさんはすごいですね」「いろんな経験をされてきたTさんの人生は素晴らしいと思います」というように、グチの部分を受け止めつつ、相手を肯定する声かけです。

このような肯定感を積み重ねることで、利用者に「私の話をちゃんと聞いてくれている」と感じてもらえるようになれば、介護職との間の信頼関係もより良いものが築けるはずです。そうなれば次は、話の内容を楽しい方向に転換するきっかけとなる声かけです。「今度は楽しかった思い出も聞かせてくれませんか」など、お互いが気持ちよく過ごせる話題を投げかけてみましょう。

しかしこれは「ちゃんと聞いてくれた」という安心感、信頼感があればこそ。孤独感を抱えたままでは、「私の話を聞きたくなかったんだ」「言いたいことを遮られた」と相手は感じかねません。

グチっぽい利用者にしてはいけない2つのこと

1. 否定する
2. 聞き流す

グチっぽい利用者と、お互いに気持ち良い時間を共有するためには、共感と信頼感がポイントです。それを妨げるのがこの二つ。例えば、「もっと大変なひともいますよね」のようなTさん(利用者)の思いを否定するような声かけは、理解してもらえないと感じてさみしさや孤独感を増長させてしまう可能性が高いでしょう。また、寄り添う気持ちのない「へー。そうなんですね」というような聞き流す返答も同様です。自分と向き合ってくれていないことが伝わる対応は、得策ではありません。

自分自身が疲弊してしまわないためにも、放置をせずコツコツと対応を心がけることが近道と言えるのかもしれませんね。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

私の介護職歴の中にも、「娘が連絡もくれないのよ」「あんなに大事に育てたのにね」というようなことをデイサービスに来るたびにお話しされる利用者さんがいらっしゃいました。周りで聞いてる他の利用者さんたちが、「また言ってるよ…」と呟いてしまうこともあるような状況で、何とも言えない空気の悪さは、これを書いている今でも鮮明に思い出されます。

ですが、その方のお話に耳を傾けてみると、やはり寂しさや喪失感からくるものなんだなと感じたんですよね。なのでその時も、その方の気持ちに寄り添ってお話を伺い、「娘様の子育てでどんなことが大変でしたか?」とか、「どんな子どもだったんですか?」などと問いかけたりしましたよ。そうすると、嬉しそうに色々と思い出話をしてくれたんですよね。

グチっぽい利用者と接するときは、是非ともその方の言葉の裏側にある気持ちや背景を想像しながら向き合って見てください。これまで見えていなかったことを新たに感じとれるかもしれませんよ。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

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