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ヘルスケア 2021-08-23

毎日が仮説の証明。だから日々自分も更新されていく【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.38 INSTRUCTIONS 清水 忍さん #2】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

前編に続き、パーソナルトレーニングジム「IPF」代表の清水 忍さんにフォーカス。アスリートから一般までの幅広いパーソナルトレーニングと、トレーナー育成に携わる清水さん。前編では、その経歴と、お仕事のベースとなっている経験、マインドについてお聞きしました。

中編となる今回は、清水さんがトレーナーの仕事に感じている魅力と、お仕事を成功させるための心得をインタビュー。幅広い活動が求められるトレーニング業界で働くためのヒントを探ります。

お話を伺ったのは…

「株式会社 INSTRUCTIONS」代表 清水 忍さん

トレーニングジム「IPF」ヘッドトレーナー。パーソナルトレーナーとしてプロアスリートから一般まで幅広いトレーニング指導を行う傍ら、トレーナー専門学校での講師、企業での健康プログラムの作成、ジムのアドバイザーなど教育を軸に活動。講師として輩出してきたトレーナーは2000人以上。メディアでの監修・出演なども多数。

仮説を立てて証明する。その繰り返しが仕事につながる

パーソナルトレーニングジム
「IPF(INSTRUCTIONS Performance&Fitness)」
代表として、幅広い層のトレーニングに携わっている

―清水さんが感じる、トレーナーのお仕事の魅力とは?

僕が楽しいと思うのは、「自分が日々更新されている」と感じられること。僕はトレーナーとしての仕事において、最初に「仮説を立てる」ということをしています。自分の持っている知識で、「このお客さんはこうかもしれない」と仮説を立て、それに基づいて指導をしていきます。日々が、その仮説の証明をしているというか、毎日答え合わせをしている感じなんです。

自分が立てた仮説が上手くいったという感覚はめちゃくちゃ楽しいし、かつ自分の知識と実力が上がっていくのを感じられます。

そしてその経験が何度か重なると、クライアントから「また見て欲しい」と切望していただける。この仕事にやりがいを感じられる瞬間です。

―この仕事にのめり込むようになったエピソードを教えてください。

30代でトレーナーに戻ってから「やる気が起きない人たちに、どうやったら運動してもらえるか」というのをテーマに掲げて指導をしていました。フィットネスクラブに通っていた糖尿病専門医のお客様が、それを見て「清水さんの教え方は、糖尿病患者に適している気がする」と声をかけてくれたんです。

確かに糖尿病の患者さんは、僕が力を入れている層と合致していました。ウォーキングしましょうと言ってするくらいなら、糖尿病にはなっていませんから。

そして大学病院が実施していた患者会で、登壇することになりました。その時の患者さんたちの反応が、僕を変えたと言っても過言ではありません。

僕がその時伝えたのは、いかにもっと運動をしたいと思ってもらえるかを考えたプログラムでした。「もうやめていいですよ」と言っても、何百人の患者さんたちがずっと運動しているんです。それまでは講演が終わったらさっさと帰っていた人たちが、終わってもトレーニングをしていて帰ろうとしない。主催者側からも「こんなシーン、初めて見た」と言われました。

そこからそういった依頼も増え、「もっとしっかり勉強しなくちゃ」と糖尿病について突き詰めて勉強するようになりました。勉強すると、変な言い方ですけど、糖尿病ってすごく面白い病気で。そうして勉強したことが、そのままお客様に貢献することにつながっています。その時のことは、僕をすごく変えてくれるきっかけになりました。

上へ行くには、探求心と時間感覚をなくすほどの仕事への意識が必要

幅広い活動をしている清水さん。
休日や休憩という概念は持っていないと言います

―トレーナーの仕事を成功させるための心得3か条を教えてください。

1. 探求心を持ち、どんなことでも知ろうとすること

トレーナー業界で活躍している方は、「自分の知らないことが1つでもあったら調べないと気が済まない」という人がほとんど。人の体に関することは当然すべてですが、社会情勢や経済なども含めて、どんなことにも探求心、知識欲を持っています。

それは様々なクライアントと仕事をするうえでも必要なことです。我々は指導者でありながら、接客業、サービス業の側面もあります。社会常識はもちろん、お客様と知識レベルをできるだけ近づけていかないと、会話になりません。探求心が持てないと、独りよがりで終わってしまうんです。

2. この仕事のためなら、どれだけ時間をかけてもいいと思える

成功しているトレーナーを見ていると、時間や休みの概念があまりない人が多いです。トップアスリートは、休日は「体を休めるという仕事」をしている。それと同じです。この仕事が好きでしょうがない、この仕事のためならどれだけ時間をかけても構わないという感覚がある人でないと、上の上に行くのは難しいと感じます。

3. 人に見られ、憧れられる仕事だという意識を持つ

トレーナーは、人に手本を見せる仕事です。指導を受けたいと思われるには、ある意味「憧れ」を持たれなければなりません。だから「自分は人から見られている」という感覚を持っていないといけない。穴があいたウエアをずっと着ているとか、ダサい眼鏡をかけているとか、そういう見た目も重要です。

正直な話、ルックスのいいトレーナーは有利です。でもルックスはいいのにイマイチというトレーナーもいる。立っている時のエネルギー、動きなどの「様」まで、かっこいいと思われると強いですよね。自分というものを演出することを心がけて欲しいです。私もそこは、もっと頑張らないといけませんが(笑)。

多くのニーズに応えられるのは大前提。その上で得意分野を持って

清水さんはトレーナーとして再起した際、
筋トレだけでないトレーナーのニーズに気づいたそうです

―これからトレーナーを目指す人にアドバイスをお願いします。

この世界に入りたい人は、経験上筋肉トレーニングから入って来る人が多いです。そういった人に伝えたいのは、この仕事=筋トレ、ボディメイクではないんだということです。

ボディメイクの大会に出てからトレーナーの世界に入って来る人もいれば、筋トレがしたくてトレーナーになった流れでボディメイクの大会に出る人もいます。でも、この世界はそれだけじゃない。みんながマッチョになりたいわけじゃないんです。

糖尿病の人もいれば、高齢者や子供もいるし、運動不足解消のため、持久力が欲しい、柔らかい筋肉が欲しいなど、ニーズはさまざまです。いろいろな願望があることに関心を持たずに、10年20年トレーナーをしている人もいますが、それはちょっともったいない。

いろんなニーズがあることを知り、それに全部応えつつ自分が得意な分野を持つのが理想です。トレーナーと言っても一言では片づけられないくらいのジャンルがあります。この世界の人たちが、どんな仕事をしているのかという情報をもっと持ってほしいです。

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幅広いニーズに応えなければならないトレーナーというお仕事。本気で応えるためには、時間を惜しまず知識を増やしていくことが大前提だと、清水さんは言います。アスリートのように高いレベルでトレーナーという仕事に取り組む姿勢が、成功するためには必要なのだと教えていただきました。次回、後編では、清水さんの指導法について詳しくお聞きします。

▽#3はこちら▽
「ヤル気を出させる指導法」で、結果が出るトレーニングを【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.38 INSTRUCTIONS 清水 忍さん #3】>>

取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥

Information

トレーニングジム IPF

住所:東京都世田谷区野沢4-21-15-1F
TEL:03-6753-6077

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