楽しみながら思考力を養う!紙皿を使ったレク2選【介護レクリエーションvol.37】
現場で役立つレクリエーションのアイデアをご紹介する「介護レクリエーション」。今回は、体を動かしながら「思考力」を養うことができる紙皿を使ったレクリエーションを、中級レクリエーション・インストラクターの大野孝徳さんに教えていただきます。
「今回ご紹介するレクリエーションは、『陣取り』と『円盤投げ』。どちらも〈紙皿〉を使って簡単に準備でき、参加者がチーム戦で盛り上がれるゲームです」(大野さん)
『陣取り』とは、どんなゲームですか?
「『Aチームは白・Bチームは赤』と色分けした2チームの参加者が、表が白色・裏が赤色の紙皿を投げ、自チームの色の紙皿の数を競います。投げた時に紙皿が裏返ると相手チームの得点になってしまうので、集中力が必要になります」(大野さん)
では『円盤投げ』は?
「床に置いた得点カードに向けて紙皿で作った円盤を投げ、得点数を競うゲームです。どちらのゲームも、紙皿を握る・投げる動作が必要になります」(大野さん)
2つのレクリエーションによって期待できる、身体・精神面の効果は?
「握る・投げる動作による指と腕の運動と、得点数の計算など〈考える〉シチュエーションによる思考力向上の効果が期待できます。また、チームで得点を競うゲームのため、協調性や競争心の育成にもつながります」(大野さん)
それでは早速、『陣取り』と『円盤投げ』の遊び方をご紹介します。
陣取り
【対象者】どちらかの上肢機能が可動する方
【レクの目的】手指・腕の運動、集中力・競争心を育む、他者との交流
【人数】4人以上
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】紙皿(直径20㎝以上)人数分の枚数、レジャーシート(大きめサイズ)、参加者が使用する椅子
【所要時間】5分~
【レクリエーションの内容】2チームに分かれた参加者が表裏で色が異なる紙皿を投げ、自チームの色の紙皿の数を競うゲームです。スタッフは「チームで力を合わせて投げましょう」など競争心を促す声掛けを行い、全員でゲームを楽しみましょう。
レクを始める前の準備
・紙皿の裏を赤く塗るか、裏に赤い紙を貼り、表裏で色を分けます。
遊び方
1.参加者を同じ人数で2チーム(紙皿が白のチーム・赤のチーム)に分け、レジャーシートを広げたエリアを作ります。参加者はエリアの両側から1~1.5m離れた位置に各チーム1列で座り、紙皿を1人1枚ずつ持ちます。
2.スタッフの「よーいドン」のかけ声に合わせて、参加者が紙皿をエリアに向かって投げ入れます。
3. 投げ終わったら、エリアに入っている自チームの色の数を得点としてカウントします。このとき、投げた紙皿が裏返っていると相手チームの得点になります。得点をカウントする際は、参加者に「白と赤、どちらが多いでしょう?」などと声をかけて全員で得点数を数えましょう。計算を通して脳の活性化を促すことができます。
4.3回戦行ったらゲーム終了です。総得点数を数え、得点が多かったチームが勝ちになります。
進め方のコツ
・ゲームを始める前に、参加者に対し「紙皿は表裏の数が違います。Aチームは投げ終わったお皿の色が白、Bチームは赤だと得点になります。自分のチームが勝つように投げてください」などと説明するほか、ホワイトボードなどに見本(Aチームは白、Bチームは赤)のお皿を貼るなど、参加者の認知症状に合わせて目で確認できる環境をつくるのもおすすめです。
円盤投げ
【対象者】どちらかの上肢機能が可動する方
【レクの目的】手指・腕の運動、思考力・競争心を養う、他者との交流
【人数】2人以上
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】紙皿(直径20㎝)20枚以上、A4サイズの用紙(得点カード用)8~16枚、参加者が使用する椅子
【所要時間】5分~
【レクリエーションの内容】床に置いた得点カードに向けて、紙皿で作った円盤を投げ、得点数を競うゲームです。A4サイズの的(得点カード)内に円盤を収めるために、距離感覚や力加減の調整が必要になります。
レクを始める前の準備
・紙皿2枚の表面を貼り合わせ、円盤を10個作ります。うち5個の円盤は両面を赤く塗るか赤い紙を貼り、チームごとに円盤を色分けしましょう。
・A4用紙に「1点」「3点」「5点」など点数を書き、得点カードを作ります。点数の配分は自由で構いません。
例えば、「1点」を5枚、「5点」を3枚、「10点」を2枚など、高得点の紙を少なめにすると、参加者が高い得点を狙って投げようとするので、より強く競争心を引き出すことができます。
遊び方
1. 参加者を同じ人数で2チームに分け、床に得点カードをランダムに並べた得点エリアを作ります。両チーム1番目の参加者は、各チーム1人ずつ得点エリアから1m離れた位置に座り、円盤を5枚ずつ持ちます。
2.スタッフの「よーいドン」のかけ声に合わせて、参加者が円盤を得点エリアに向かって1枚ずつ投げます。
3.円盤を5回投げ終わり、円盤が乗った得点カードに記載されている点数の合計が大きいほうが勝ちです。このとき、得点数を各自またはチームで計算すると、思考力向上に役立ちます。スタッフは勝敗をホワイトボードなどに記録しておきましょう。
4. 2番目以降の人も同様に対戦し、参加者全員の対戦が終わった時点で勝ち星の多かったチームの勝ちになります。
進め方のコツ
・4人程度の少人数で行う場合は、チーム戦ではなく個人戦にすることもできます。その場合は「誰が投げた紙皿か」がわかるように、紙皿に各自の名前やマーク(絵や記号)などを記載しておきましょう。
今回は、加齢とともに衰えてしまいがちな〈思考力〉を楽しみながら養うことができるレクリエーションをご紹介しました。いずれも参加者の体力や体調に合わせて、座っても立っても楽しむことができるゲームです。参加者の状況に沿ってアレンジを加えながら、是非現場に取り入れてみてください。
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イラスト:SMILES FACTORY
文:寺西香織(レ・キャトル)
教えてくれたのは…
大野 孝徳さん
合同会社A-assist代表、介護福祉士、介護予防指導士、中級レクリエーション・インストラクター。学生時代は子ども会集団指導者講師として岐阜県内でレクリエーション指導に従事。そこでの経験が評価され、介護業界に入職。介護職・相談員・管理職、在宅・施設両面での介護業務と、介護現場において幅広く活躍。2016年に独立し、A-assistを設立。訪問型介護予防体操教室やレクリエーションサポート活動を展開。現在も現場に入り介護福祉士として従事する傍ら、「え~(良い)アシスト」を提供するべく全国を対象に事業を展開している。