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介護・看護・リハビリ 2021-12-08

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.48】「誤嚥」事故は年末年始に集中! 対処法を復習しておこう!

介護現場での困りごとの対処法をご紹介する当企画。年末年始が目前に迫った今回は、12~1月に集中する「誤嚥」による窒息への対応手順をおさらいします。

「誤嚥」による窒息は12~1月に集中! 万が一に備えてしっかりと対応できるようにしておきたい

「誤嚥」とは、食べ物や唾液が何らかの理由で誤ってのどと気管に入ってしまうこと。肺炎の原因にもなりますが、大きなものが入り、詰まってしまった場合は窒息してしまいます。年末年始は、普段はあまり食べないものを口にする機会が増えるので、この「誤嚥」からの「窒息」事故が1年で一番多い時季。今こそ対処法をおさらいしておきましょう。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

 

ポイント1:「窒息のサイン」

窒息状態になった人は、親指と人差し指でのどをつかむ仕草をします。傍からすると、自分で自分の首をしめているように見える状態です。この仕草は、「窒息のサイン(チョークサイン)」と呼ばれるもの。気がついたらすぐに、応援を呼び、対応をしましょう。


すでに意識がない場合は、応援・救急車を呼び、心肺蘇生、AEDを行います。救急車の到着まで、継続的にバイタルサインをチェックしておきましょう。


ポイント2:「完全閉塞」か「不完全閉塞」か

のどに何かが詰まって窒息した場合、気道が完全にふさがってしまう「完全閉塞」と、気道の一部が塞がる「不完全閉塞」があります。それぞれの場合の見分け方と対処法を見ていきましょう。

■「不完全閉塞」の場合
【特徴】呼吸がしにくい、咳が出る、声が枯れる
【対処】積極的に咳をさせ、詰まったものが飛び出すように促
※対処中に詰まったものが奥へ行き、咳が弱くなったり、できなくなったりした場合は「完全閉塞」の対処を。

■「完全閉塞」の場合
【特徴】チアノーゼ、胸とおなかが交互に膨らみへこむ
【対処】誤嚥したものを吐き出させる

・背部叩打法
利用者の後ろから、左右の肩甲骨の間を手のひらの付け根で力強く何度も叩く

・腹部突き上げ法(ハイムリック法)
1.利用者の後ろからウエスト付近に右手をまわす
2.左手でへその位置を確認
3.左手で握りこぶしをつくり、親指側を利用者のヘソの少し上、みぞおちよりも下に当てる
4.右手で握りこぶしにした左手を握り、手前上方に向かって突き上げる

■上記の対処で吐き出せない場合
【対処】吸引器で吸引する
※それでも吐き出せない場合は救急車を呼びましょう。

どちらの場合も、意識があるのが大前提です。また、「腹部突き上げ法」を行った場合、内臓を痛めることもあるため、医師や救急隊員に実施した旨を必ず伝えましょう。

ポイント3:誤嚥したものを吐き出した後は…

上記の対応で誤嚥したものをうまく吐き出せた場合は、その後、呼吸状態の観察を。呼吸が落ち着いたようであれば、主治医に連絡・報告して指示を受け、呼吸困難が続く場合は救急車を呼びましょう。

「誤嚥」による呼吸困難時の対処でやってはいけない2つのこと

1.口から指を入れて詰まったものを取ろうとする
2.詰まったものを掃除機で吸い取ろうとする

明らかに「詰まらせた!」という状態を目の前にすると、早く取り出さなければと焦る気持ちも分かります。ですが、口から指を入れる方法では、詰まったものをさらに奥へと押し込んでしまうこともあるので、上記に述べたような対処法を必ずとるようにしましょう。また、利用者宅で遭遇した場合、吸引器のかわりに掃除機で…と考えがよぎるのも分かりますが、掃除機ではほとんど効果はないだけでなく、むしろ危険すらあります。訪問介護で利用者の嚥下障害が気になるのであれば、掃除機のホースに取り付けられる「吸引ノズル」を用意しておくとよいでしょう。

不慮の事故による死亡の原因には、交通事故や溺死などありますが、近年上位にあるのが「窒息」です。高齢になればなるほど、嚥下機能は衰えてしまうので、高齢化社会を反映していますよね。「誤嚥」は、おかゆにする、食べ物を細かく刻む、といった予防をしていたからといって起こらないわけではありません。介護の現場で働く身ならば、いつ遭遇してもおかしくないことです。日常的に窒息への対応や訓練を意識して行うようにしておきましょう。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

誤嚥は介護現場で働いていると経験したことがある人も多いはずです。詰まらせるものは、食べ物だけに限りません。私自身、認知症の方が食べ物ではないものを飲み込んでしまって窒息しかけた場面に居合わせたこともありました。

窒息というと、大きなものや硬いものなどを飲み込んでなるというイメージがありますが、感覚的に小さいと思っているものでも、実はお年寄りの食道にとっては大きなものもあり、「こんな大きさのもので窒息するのか…」と驚きを感じることも多々あります。固定概念にとらわれず、どんなものでも窒息につながる危険があることを心にとどめておきましょう。

また、誤嚥や窒息は、飲み込んだものを詰まらせることが原因ですが、その背景には「身体機能の衰え」があることを理解しておく必要があります。毎日現場で利用者・入居者を見ていると、日々少しづつ衰えていくのが当たり前に感じてしまいがちですが、日頃から観察する目を忘れずに状態把握をしておくように心がけましょう。そうすれば、ある日、ふとしたことで変化の幅に気づきやすくなるでしょう。日々の観察は、事故回避のためにも重要なポイントになると思います。

文:細川光恵
参考:「介護現場で使える急変時対応便利帖」株式会社翔泳社、「完全図解 新しい介護」講談社

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