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特集・コラム 2022-06-04

介護の現場で使うラポールの意味とは|高齢者との信頼関係の築き方について紹介

介護の現場では、高齢者との信頼関係を築く必要があります。しかし、「なかなかうまく関係が築けない」と悩む人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ラポールを形成するために必要な基本姿勢とコミュニケーションのポイントとテクニック、ラポールが形成されることによって介護をおこなう際に役立つことをくわしくご紹介します。

介護の現場で使うラポールの意味とは

ラポールとは心理学用語で、心理カウンセラーが対象者との間に築く、援助の基本となる信頼関係のことです。介護の現場でも、支援や援助を提供する側とされる側の良好な関係性が成立していることをラポールの形成といいます。

ラポールの形成には、介助や介護を必要とする高齢者が安心して助言を聞き、介助や介護を受けるだけでなく、家族や介護職員も高齢者を信頼し、感情の交流を持てるかどうかも重要です。つまり、ラポールとは一方向から提供される感情の動きだけではなく、相互関係を示す言葉でもあります。

ラポールを形成するコミュニケーションのポイント

ラポールは人間関係の基礎となるものであり、シンプルなコミュニケーションの積み重ねと相手を尊重する態度など、テクニック以前のポイントが重要です。ビジネスでも活用される人間関係の心理学などでは、資格取得講座の最初で「ラポールの作り方」について学びます。

ここでは、ラポールを形成するために必要な基本姿勢とコミュニケーションのポイントとテクニックを確認しておきましょう。

基本は傾聴・受容・共感

ラポールを形成するためのコミュニケーションの基本は、「傾聴」「受容」「共感」の姿勢です。相手の話を否定するのではなく、その背景に思いをはせながらしっかり聴き、相手に心を開いて思いを受け止め、相手の気持ちに寄り添わなければなりません。

上記の姿勢を保つことで、ラポールを形成するために準備したいことや心がけたいポイント、気をつけて実践したいことをご紹介します。

相手をよく知る

ラポールを形成するためには、「自分のことを知っていてくれる」「自分に興味を持ってくれている」と感じてもらうことが重要です。

そのためには、相手の困りごとや思いを把握する以外にも、生年月日や出身地、家族構成はもちろん、趣味や特技、現役時代の仕事などの情報も得ておくことが必要となります。会話のきっかけにできる情報を得ておくことで、相手の立場に立ったコミュニケーションを可能にすることが大切です。

シンプルでわかりやすい言葉

ラポールを形成するための時期に限らず、高齢者とのコミュニケーションでは相手が理解しやすい言葉を使うことが大切です。介護職が日常的に使うものでも専門用語やカタカナ用語は避け、なるべくシンプルでわかりやすい言葉を選びましょう。

テクニックに偏らず、シンプルでわかりやすいことを基準にすることで、「理解できる」「私にもわかる」という安心感を相手に与えられるうえ、言葉の意味が間違って伝わることを防止できます。

素直でオープンな気持ちで接する

ラポールを形成する際は、相手からの自分への信頼感を求める前に、自分から相手への素直でオープンな気持ちを持つことが大切です。なにを考え、なにを感じているのかに興味を持ち、疑問を感じたら、いろいろ考えすぎずに素直に聞いてみるとよいでしょう。

また、相手に聞いてばかりでは双方向の関係になりませんので、自分が感じたことも率直に言葉にしてみます。相手の希望を叶えられないこともあるかもしれませんが、素直でオープンな気持ちで接していることが伝わると関係がよくなるはずです。

敬意を持って接する

人生の先輩である高齢者に敬意を持って、相手に接することを心がけることが大切です。敬意を持って接することで、いい関係が築きやすくなります。

声をかけるときには、子ども扱いせず丁寧な言葉遣いで、相手と同じ目の高さで威圧感を与えないように気をつけることが大切です。

聞き上手になり相手のペースに合わせる

聞き上手になり、相手のペースに合わせて話を聞くことで、相手は「自分の話をしっかり聞いてくれる人」だと認識します。

また、会話のなかで適宜相づちを入れて、相手の話を聞いているという態度を示しましょう。そうすることで、高齢者との信頼関係が築きやすくなります。

相手との相性が合わないと感じたときの対処法について

ラポールを形成しようとしても、どうしてもうまくいかないこともあるでしょう。相手との相性が合わないと感じたときはどうすればよいのでしょうか。

ここでは、介護や介助をおこなう相手との相性が合わないと感じたときの対処法についてご紹介します。

責任者などに相談してみる

介護の現場で仕事をする際には、誰に対しても平等に介護や介助を提供しなければなりませんが、うまくいかないこともあるものです。そんなときは、責任者に相談してみるとよいでしょう。

介護の現場では、対応する人を変えてみることで案外スムーズに物事が進むことも少なくありません。

仕事として相手の良さを見つけるよう意識する

相性が合わないと感じる相手が複数いる場合には、仕事の一環として相手の良いところを探してみるようにしましょう。

苦手意識にとらわれずに、まずは相手のよさを見つけるようにしてください。自分が相手に対してプラスの感情を持つことを試してみるとよいでしょう。

ラポール形成が大切な理由

ラポール形成は、カウンセラーだけでなく介護職や教職、ビジネスシーンでの顧客との関係など、対人関係が重要になるすべての場面で必要なものです。ラポールが形成されていることで、円滑な関係を保ち、お互いの話を聞く体制が整います。

また、相手の話を理解しようという気持ちが高まるので同じ内容の話をしても説得力が高いように感じてもらえますし、抵抗のあることでも任せてみようと思ってもらえるでしょう。

お互いの言葉を聞き入れやすくなる

ラポールが形成されると、お互いの言葉を聞き入れる体制が整うので、コミュニケーションが円滑に進みます。相手に対する警戒心が相手を信用する気持ちに変わり、「相手から害を与えられたり、不利益をこうむったりするのではないか」という心配が軽減するでしょう。

介護の現場では、「明確な根拠があるわけではないけれど、なんとなく安心する」という感覚的な信頼感は、いくつもの証拠を示して理詰めで説得するよりも効果的です。

提案やケアがしやすくなる

ラポールが形成されると、相手を信頼する気持ちが高まり、心理的にも安定するものです。そうすることで、「この人のいうことだからやってみよう」「この人になら、困っていることを話しても大丈夫」と提案やケアを受け入れてくれるようになることもあるようです。

ラポールが形成されていることで敷居が低くなり、提案の内容よりも、信頼する相手から提案してもらえること自体にうれしさを感じる場合もあります。さらに介護の現場では、トイレ誘導や入浴介助といった「恥ずかしい」「嫌だ」と感じる場面でも、ラポールが形成されていることで安心して任せてもらえるようになります。

ラポールの意味を理解して信頼関係を築こう

ラポールは相手との人間関係やコミュニケーションの基礎であり、ラポールを形成することで相手に対する心理的な敷居が下がり、信頼感が高まります。とくに、言葉だけでなく身体に触れて支援する介護の現場では、ラポールの形成が相手の安心感や安定に繋がるので、言葉の意味以外にもポイントやテクニックを押さえておくことが重要です。

カウンセラーの資格はなくても、ラポールの意味を理解して、利用者に安心して介護を受けてもらう土台となる関係を作りましょう。

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