トライアンドエラーを繰り返して、自分の理想のジムを広めていきたい【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.71 パーソナルトレーナー 計太さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、会社を立ち上げ、現在3店舗と順調に規模を拡大しているパーソナルトレーナーの計太さんに前編・後編に渡ってインタビュー。これから独立を目指す方や同業者をターゲットに、計太さんの独立までの経緯、スタッフとの関わり方などについて伺いました。
前編は、パーソナルトレーナを志したきっかけと独立までの経緯、集客のためにユーチューブを始めたと伺いました。後編は、どのようなターゲット層にどんな工夫のある投稿をして集客に繋げたのか、今後の展望とアドバイスについてお聞きします!
教えてくれたのは…
パーソナルトレーナー 計太さん
大学の教授を目指すも、トレーニングジムの実情にふれ、トレーナーになって大学院で学んだ知識を広めていくことを決意。その後、友人のツテでベンチャー企業に業務委託で入社し、念願のジム経営を任される。約2年ほど経験を積んだのち、退職と同時にジムを買収し、独立。会社「ボクノジム」を設立。また、登録者数11万人のユーチューブにより集客を伸ばして、今後は経営を中心に活動する予定。
着眼点を変えた斬新な内容で、再生回数もアップ。集客につながった
――集客のためにユーチューブを始めたとのことですが、投稿する際に意識したところはどんなところですか?
初めは顧客を得るため、チャンネル登録者数を増やすことを考えていたのでダイエットに興味ある人全般に向けた投稿をしていました。
特に、SEO対策については勉強しながら直近半年以内で話題になっているワードを検索して取り入れていましたね。例えば、ダイエットにまつわるワードでいうと「体脂肪」とか…。僕の肩書きも「ダイエットコーチ」と添えています。パーソナルトレーナーと謳うよりも「ダイエットコーチ」の方が視聴者も分かりやすいですし。
――ちなみに、どの投稿がきっかけで視聴者数が増えましたか?
「さつまいもの太りやすい食べ方」を紹介した動画です。内容はシンプルで、温めてしまうと血糖値が上がりやすくなってしまうので、焼き芋にしてしまうと太りやすいですよ、というもの。
普段から身近にある食べ物の意外な知識というところが、興味を持ってもらえたきっかけなのかなと感じています。
――なるほど、意外性が響いたのですね。反対に伸びなかった動画はありますか?
「睡眠」について投稿した時は全然再生数が上がらなかったですね。みなさん睡眠に関しては大事だと思っているはずで…日常的に仕事や家事などで忙しい中、なかなか時間が取れないとわかっているからこそ、数字に現れたんだと思います。
ですが、「睡眠」に限らず、再生回数が少ない動画でもダイエットに関してかなり重要な情報だったりするんです。再生回数を稼ぐよりも確実で役に立つ情報を中心に発信することが目標。今後も再生回数にこだわらず、投稿していこうと思っています。
――再生回数にこだわらないということですが、今後どんなことを重視した投稿をする予定ですか?
初めは集客を目的に取り組みましたが、安定してきたこともあり、今後はジムを利用してくださっている方々に向けて発信していきたいと思っています。なので、これ以上バズらせることは考えていませんね。
というのも、視聴者数をたくさん増やすために過剰に盛った情報や内容の薄い情報よりも、僕を信頼してくださっている方々にためになる情報を地道に提供し続けることが、のちの集客にも繋がると考えているからです。
会社の事業拡大とスタッフへの手厚いサポートを目指し、経営をメインに
――ユーチューブに取り組んだことで集客に成功されましたが、今後新たに力を入れて取り組みたいことはなんですか?
現在、トレーナーと経営をどちらも担っているのですが、今後はトレーナーを離れて経営を中心に仕事をしていこうと考えています。というのも、やはりどちらかに絞らないとあまりにも時間が取れなくて。今後の事業を拡大するためにも、経営に力を入れていきたいと思いました。
――さらなる事業拡大を目指されての決断なのですね。どんなことから着手される予定ですか?
そうですね。まずは、フランチャイズの展開をしていきたいです。「ジムを経営したい」とか、「独立したいけど一人では不安」という方々に権利を渡して経営を任せようかと。集客の仕方とか経営については僕が指導を行いながら、進めていければと思っています。
もう一つは、スタッフの今後について改めて見直していきたいですね。
――スタッフの今後と言いますと?
高齢になっても、パーソナルトレーナーの仕事をしている方って少ないんです。というのも、高齢まで健康で体が動かせるかというと、それはわからない。トレーナーという職業的な先行きの不安定さに対して、現場以外で活躍していける道筋を模索することも視野に入れて対策を考えたいなと思っています。例えば、今の段階ではまだ思案中ですが、プロテインまたはトレーニングに必須なアイテムの開発やジムでの新しいサービスを始めるなど…ですね。
――スタッフ想いなのが伝わってきます。普段からスタッフと接する上で心がけていることを教えてください。
強制しないことです。僕自身、自由に動きたくてこの仕事を始めたのでそこは必ず気をつけています。会社として新しい企画を考えた時も、強制はしません。参加したい人だけが集まって企画がスタートする、興味が湧かなければ無理強いはしない。僕からしたら、現場で頑張ってくれているだけですでに100点だと思っているんです。
先述した現場以外の活動についてももちろん、希望者を募ってあくまで個人の意見を尊重して取り入れていけたらいいなと考えています。
独立を目指す前に、まずは挑戦して成功体験をつくることがカギ
――スタッフの気持ちを理解し、尊重することで円滑な連携がとれるのですね。
そう思います。当ジムのスタッフの契約も社員ではなく、業務委託。それぞれ自分で時間や業務を自己管理してもらう形態を取っています。トレーナー業務ってセッションの数で収入が決まるので、数こなした後とかその間の時間とか強制しても仕方ないんです。
――徹底的ですね!トレーナーとして独立するためには柔軟な考えが必要だと感じました。
そう思いますね。トレーニングジムという市場について今後も伸び続けるか分からない中で、ある程度その時々に応じて柔軟に対応することが求められます。
現在、低価格で条件のいいジムがたくさん普及しています。競争率の高い中で、「ここのジムならではの強み」をしっかり見つけられないと、独立したあとは難しいと感じますね。
あとは、トライアンドエラーを繰り返しできる人は向いていると思います。トレーナーの経営に限らず、「考えて試して実行する」。これができるならどの仕事でも挑戦できます。とりあえず、実践してみて成功体験が得られたらそれが必ず強みになると思うので、どんどん挑戦して経験をつくることをおすすめします。
円滑に経営をしていくためにしたこと3つ
1.確かな情報を提示し、顧客の方の不安を取り除くメニューを展開
2.お客様に満足してもらえるように、有益で確かな情報を提供する
3.スタッフには自分の意見を強制せず、個人の意見や気持ちを尊重する
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多 二三雄