介護記録はなぜ必要?わかりやすい介護記録の書き方を例文を交えて紹介
利用者の途中経過や特徴、サービスを提供する際の注意点などの介護記録を残しておく業務は、介護職として働く上でとても大切です。
しかし、「具体的な記録の書き方がわからない」という方や、「役に立つ介護記録がなかなか書けない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
本記事では、介護記録の必要性や具体的な書き方、実際の例文や書く際のコツについてそれぞれ紹介します。
介護記録の重要性を認識してはいるものの、記録をとるのに苦手意識を感じてしまい悩んでいる方は参考にしてみてください。
介護記録はなぜ必要?
介護職が現場で介護記録をとるべき理由は、以下の3点にまとめられます。
・職員の間での情報共有・コミュニケーションの円滑化につながる
・利用者と家族との間で情報共有をし、コミュニケーションの活性化させる
・事故やアクシデントが起こった際の証拠になる
介護サービスを提供する側、サービスを受ける側の双方にとって、必要な情報共有をうながすという意味で、介護記録をとることはとても重要です。
ここでは、介護記録をとるべき具体的な理由を見ていきましょう。
職員の間で情報を共有し、より良いサービスへとつなげていく
介護記録をしっかりとっておくと、介護職員や施設職員の間での情報共有に役立ちます。利用者の情報を職員間で共有することで、円滑に介護サービスを提供可能です。
大前提として、介護の現場には、介護士や看護師・医師・事務職員など、幅広い職種の職員が勤務しているケースも多々あります。そのため、介護記録を残しておくことで、職員同士で誤解なく、介護サービスを提供できる点がメリットです。
利用者や家族とのコミュニケーションを取る
介護記録を残しておくことは、利用者やその家族とコミュニケーションをとるためにも必要です。
たとえば、介護記録を残すことで、当日の介護の内容や出来事、その時の利用者の様子が詳しく伝えられ、利用者の家族が介護サービスの詳細を把握できます。介護スタッフと利用者のやりとりがわかることで、家族も安心して利用者を任せられるでしょう。
このように、介護記録を用意することで、介護サービスを理解し、施設と利用者、家族の間の信頼関係を構築することに役立つのです。
事故などのアクシデントが起こった際に証拠となる
介護記録は、万が一のトラブルやアクシデントが発生した際の証拠になります。介護の最中に利用者が事故で怪我や病気になってしまった場合に、介護記録を提示することで、介護の事実を証明し、適切な対応をとれたのかどうかの判断に活かせます。
介護の現場ではいつどのようなトラブルが発生するかわからない職場です。とりわけ、利用者に近づいて介護をする場合には責任問題に問われるケースも。
トラブルやアクシンデントが発生した際の証拠として残せる点が、介護記録をとる大きなメリットだといえます。
介護記録の書き方
介護記録の重要性については認識していても、いざ書こうと思うと、「何から書けばいいのだろう」と筆が止まってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか?
この章では、介護記録の具体的な書き方を以下の5点にまとめて紹介します。
・5W1Hを意識する
・「〜だ」「〜である」
・客観的な事実を書く
・専門用語や略語を使わない
・簡潔にまとめる
これらのポイントについて知って、介護記録を書く際の参考にしてみましょう。
5W1Hを意識する
介護記録をとる際は、「5W1H」を意識することが大切です。
・「Who(誰が)」
・「When(いつ)」
・「What(何を)」
・「Where(どこで)」
・「Why(なぜ)」
・「How(どのように)」
これらの要素を描写することで、シンプルで他人に伝わりやすい文章を執筆できます。
「どの時間にどこで何をしたのか」、「誰がどのようなサービスを提供したのか」、「どのように問題を解決するべきなのか」といった風に、5W1Hを意識しつつ、シンプルに情報を書き残すのが、伝わりやすい介護記録の特徴です。
「~だ」「~である」調で書く
介護記録は敬体である「です・ます調」や口語体ではなく、常態である「だ・である調」で文章を書くのが公的な文書を書くときのルールです。他人が介護記録を読んだときに、違和感を覚えないような文章を意識しましょう。
客観的な事実を書く
介護記録を残す際は、客観的な事実・情報を書くように心がけましょう。他の人に共有してもメリットが少ない介護者の感想や推測は、介護記録に残す必要性は低いです。
ただし、実際の介護者目線でみたときに重要だと思われる利用者の言動の変化や、介護に必要だと思われる要素などがあれば、介護記録に残しておくことは大切だといえます。
第三者が読んでも理解しやすい文章かどうかを大前提として考えておきましょう。
専門用語や略語を使わない
介護記録はその他の職員や利用者の家族などの第三者も閲覧する記録です。そのため、介護職の現場で一般的に使われているような専門用語や略語を使っていても、第三者目線から読んだときに「何のことだろう?」と混乱してしまうこともあります。
専門用語やわかりづらい表現は極力使わずに、介護記録をとることを心がけましょう。
簡潔にまとめる
介護記録は情報共有が目的なので、誰が読んでも必要な情報が頭に入ってくるような、シンプルで伝わりやすい文章を書くことが大切です。正確に出来事を記載して、介護アプローチの根拠と結果を具体的に記載しましょう。
一文を極力短くして、最短・簡潔に伝わる介護記録を目指してみましょう。
わかりやすい介護記録の例文
介護記録の基本要素を知ったところで、今度は以下の4つの例文を見ていきます。
1.食事の場面を想定した良い例文
2.食事の場面を想定した悪い例文
3.トラブルがあった時の良い例文
4.トラブルがあった時の悪い例文
それぞれの例文を参考に、自分の職場ではどのような介護記録をとるべきかを考えてみましょう。
食事の場面での良い例文
12:05頃Aさんは昼食の際におかずに手をつけず、食欲がない様子。10分後、「もう食べられませんか?」と質問すると、「これ以上はもう食べられない」と返答されたので、昼食のおぼんを下げた。
出来事が発生した時間や客観的な事実、介護者の行動がシンプルに伝わる例文です。
食事の場面での悪い例文
Aさんが昼食を残していたので、「たぶん食欲がないんだろうな」と思い、おぼんを下げた。おそらく朝食を食べすぎたせいだろう。明日の朝食担当に伝えて、朝食の量を調整するべきだと考える。
出来事が発生した具体的な時刻と客観性が欠けている悪い例文です。また、単なる推測で次の段階でとる行動を決めている点も、マイナスポイントだといえます。
トラブルがあった時の良い例文
13:10Aさんが他の利用者とコミュニケーションをとっていると、突然、Aさんが「おなかが痛い」と訴える。緊急性を感じ、すぐさま内勤の医師と看護師に連絡をし、診察室まで同伴した。
トラブルが発生した時刻と事実、その場面でとった行動の原因と事実が記録されており、伝わりやすい介護記録になっています。
トラブルがあった時の悪い例文
Aさんが他の利用者と会話している最中、体調不良になったので、スタッフを呼んだ。
トラブル発生時の時刻や利用者とスタッフとのやりとりに関する記載がなく、なぜ「スタッフを呼ぶ」という行動をとったのか、読み取るのが難しいでしょう。
体調不良の内容もわからず、第三者目線で見た時に読みやすい介護記録とはいえません。
効率よく介護記録を書く時のコツ
良い介護記録を書こうと思ったら、以下のようなコツを知っておくと便利です。
・記録用にいくつかのテンプレートを用意しておく
・介護中の出来事や気づいたことをメモする
・よく使う単語や表現をまとめておく
介護記録は日常業務の一部なので、ある程度のテンプレートを考えておくと、介護記録作成の時短につながります。また、介護中の出来事についてメモしておくと、振り返ったときに、スムーズに介護記録を書くことができるでしょう。
ちなみに、よく使う単語や表現についてまとめておくと、言葉が出てこずに記録がなかなか進まないという際に便利なのでおすすめです。
わかりやすい介護記録を効率よく書こう
この記事では、介護記録の重要性や基本的な書き方、具体例や介護記録をスムーズに書くためのコツについて紹介しました。
介護記録は5W1Hを意識しながら、事実を客観的に書くことが大切です。主観的な感想や憶測で記録を残すと、必要な情報が伝わりにくい記録になってしまう可能性もあります。
端的で第三者目線で見たときにわかりやすい介護記録を心がけましょう。