相談支援専門員とは?必要な実務経験や仕事内容、キャリアアップ方法について紹介
障害福祉サービスと障害を持つ人とを繋ぐ役割りを果たしている相談支援専門員について、具体的にどのような福祉サービスを提供しているかや、仕事内容などはご存知でしょうか。
本記事では、相談支援専門員の概要についてや、仕事の内容・なるために必要な実務経験や研修などについて紹介します。相談支援専門員に興味のある人は参考にしてみてください。
相談支援専門員とは?

相談支援専門員は、障害を持つ人やその家族に対して、福祉サービスに繋げたり、悩みをサポートしたりする職種のことです。相談支援専門員の役割は、障がい者が自立して生活ができるようにするためのサポートを充実させるために年々重要視されています。
障害福祉サービスに繋げることだけでなく、住居を確保する際や入居の支援、地域生活で困らないよう相談を受けたり、各事業所と連携して支援を受けられるようにサポートするのも大切な業務の1つです。
相談支援専門員として働くためには、介護・福祉分野における3〜10年の実務経験と相談支援従事者養成研修(初任者研修)の受講が求められます。くわしくは後ほど紹介します。
主に相談支援事業所と呼ばれる事業所で働くのが一般的で、特定相談支援事業所や一般相談支援事業所、障害児相談支援事業所の3種類の相談支援事業所があるのが特徴です。
相談支援専門員になるには?必要な実務経験や研修

相談支援専門員に国家資格はなく、専門員になるためには実務経験と研修の修了が必要です。必要な実務経験や、資格の概要について詳しく紹介します。どのような研修が必要なのかもチェックしていきましょう。
必要な実務経験
関わっている業務や持っている資格によって、実務経験の必要年数が変わります。相談支援や介護業務にすでに関わっている場合のそれぞれのパターンを紹介します。
相談支援に関わっている場合
同じく相談支援業務に携わっている方の中にも、以下の2つのパターンがあります。
| 求められる実務期間 | 内容 |
| 3年以上 | 平成18年10月1日に現に障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業、精神障害者地域生活支援センターの従事者である者で、平成18年9月30日までに当該相談支援業務に従事した期間 |
| 5年以上 | 1)障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業の従事者
2)児童相談所、身体障害者更生相談所、精神障害者地域生活支援センター、知的障害者更生相談所、福祉事務所の従業者 3)障害者支援施設※1、老人福祉施設※2、精神保健福祉センター、救護施設及び更生施設、介護、老人保健施設※3、の従業者 4)病院若しくは診療所の従業者(社会福祉主事任用資格者、Eの国家資格を有する者、上記アからウに掲げる従業者である期間が1年以上の者に限る)。 オ 障害者職業センターや障害者雇用支援センター、障害者就業m生活支援センターにおいて相談支援の業務の従事者 カ 特別支援学校その他これらに準ずる機関において障害のある児童及び生徒の就学相談、教育相談及び進路相談の業務の従事者 |
引用元:保健福祉振興財団|専門支援相談員の要件となる実務経験
このように、関わっている相談支援業務によって実務経験の長さは異なります。
介護業務に関わっている場合
介護(直接支援)にかかわる職種では、医療機関または、施設などで介護業務をしている人・都道府県知事が介護の業務に値すると認めた仕事をしている人が当てはまります。
この条件に当てはまる人の中から、実務経験年数が10年以上の人が、相談支援事業者初任者研修を受講して修了することで、相談支援専門員として従事できます。
<h4資格がある場合
資格がある場合も、持っている資格によって条件は異なりますが、相談支援専門員として従事できます。実務経験が5年以上必要な資格と3年以上必要な資格をそれぞれ以下で紹介します。
実務経験が5年以上必要な資格は、
・訪問介護員2級以上に相当する研修修了者
・社会福祉主事任用資格者
・保育士
・児童指導員任用資格者
などです。
実務経験が3年以上必要な資格は、相談支援・介護等の仕事をしていて、医師や看護師など国家資格が必要な業務期間が5年以上ある人となっています。
必要な研修
相談支援専門員になるために必要な研修は、相談支援従事者初任者研修・相談支援従事者現任研修などがあります。その概要について紹介します。
相談支援従事者初任者研修
相談支援従事者初任者研修は、ケアマネジメントの基本的な姿勢や、地域の障がい者が自立した地域生活を送れるように、必要な福祉・就労・保健・医療・教育等の利用支援や援助技術などを学ぶことを目的とした研修です。
カリキュラムを充実させるために研修制度が見直され、令和2年度から。合計42.5時間の研修など、充実したカリキュラムが実施されています。都道府県別で実施されているので、実施日や流れなどはそれぞれの自治体の情報を確認しましょう。
引用元
厚生労働省|相談支援専門員及びサービス管理責任者等の 研修制度の見直しについて
厚生労働省|「相談支援員」が新たに創設されました
相談支援従事者現任研修
相談支援専門員の資格は5年ごとに「相談支援従事者現任研修」を受けて更新する必要があります。
相談支援従事者現任研修は、過去5年間に2年以上の相談支援の実務経験があることや、2回目以降の現任研修では、過去5年間に2年以上の相談支援の実務経験があることもしくは現に相談支援業務に従事していることを研修の受講要件としています。
引用元
厚生労働省|相談支援専門員及びサービス管理責任者等の 研修制度の見直しについて
厚生労働省|「相談支援員」が新たに創設されました
相談支援専門員の仕事内容

相談支援専門員の仕事内容は、4つに分類されているのが特徴です。支援の対象と業務内容について具体的に紹介します。
基本相談支援|もっとも基本となる相談を受ける
1つ目は、基本相談支援の業務です。障がい者やその家族の困っていることや悩みなどをヒアリングします。はじめて利用する人もまずは基本相談支援の窓口へ行くとよいでしょう。
相談支援専門員は、障がい者やその家族の相談内容に沿って計画相談支援・地域相談支援・障害児相談支援に繋げます。基本相談支援は、相談支援全体のベースとなっており、幅広い相談内容に対処しなければなりません。
計画相談支援
2つ目は、計画相談支援の業務です。障がい者が福祉サービスを利用するために調整するのが仕事内容となります。
計画相談支援は「サービス利用支援」と「継続サービス利用支援」の2つに分けられるのでそれぞれの概要を確認しましょう。
サービス利用支援
サービス利用支援は、障がい者が「障害者総合支援法」に基づくサービスを受けるために、利用計画案を立てます。市町村の指定による指定特定相談支援事業者が、障がい者ひとりひとりに必要なサービスの利用計画案を立て、その後各サービス事業者との調整をします。
継続サービス利用支援
上記支援が決定しサービスが始まったあとに、トラブルが起きていないかなどを定期的に確認しなければなりません。これを「継続サービス利用支援」と呼びます。
地域相談支援
3つ目は、地域相談支援の業務です。障がい者の福祉サービスの申請や、各機関への連絡・調整などをします。細かく分類すると「地域移行支援」と「地域定着支援」があるのでそれぞれの概要を確認しましょう。
地域移行支援
地域移行支援は、入院や施設に入所している18歳以上の障がい者を対象に退院したあとや施設退所後の支援をするものです。業務の内容は、住む家の確保や入居の際のサポート、福祉サービスの体験・利用の支援などをおこないます。
地域定着支援
地域定着支援は、自立している障がい者に対するサポートをします。障がい者が地域で生活するために必要な支援をするのが仕事です。具体的な業務内容は、緊急時の対応確保・24時間体制での連絡確保などです。
障害児相談支援
4つ目は、障害児相談支援の業務です。障がい者とその家族が児童発達支援センター・放課後等デイサービスなどの利用を希望したときに、障害児支援利用計画書を作成します。
こちらもさらにわけると、「障害児支援利用援助」と「継続障害児支援利用援助」の業務があるので、それぞれの概要を説明します。
障害児支援利用援助
障害児支援利用援助は、障がい児やその家族が通所支援サービスの利用を希望し申請をしたときに、通所給付が決定する前に「障害児支援利用計画案」を作成します。
その後、通所給付が決まったら関連事業所との連携や調整を行い、利用開始までをサポートする支援です。
継続障害児支援利用援助
通所給付が決まって利用を開始したあとは、「継続障害児支援利用援助」をします。サービスを利用する中で、問題がないかなどを定期的にモニタリングし、それぞれのサービスに関連する事業者と連携や調整をする業務です。
相談支援専門員の主な就職先

相談支援専門員はどのような場所で働いているのでしょうか。主な就職先には、相談支援事業所や基幹相談支援センターがあります。具体的に見ていきましょう。。
相談支援事業所
相談支援専門員の就職先の1つとして「相談支援事業所」があります。相談支援事業所は、一般相談支援事業所・障害児相談支援事業所・特定相談支援事業所の3つに分類されます。
一般相談支援事業所は、基本相談支援・地域相談支援(地域定着支援・地域移行支援)などの業務をします。
障害児相談支援事業所では、継続障害児支援利用援助や障害児支援利用援助などがメインの業務です。
特定相談支援事業所では、基本相談支援・計画相談支援(サービス利用支援・継続サービス利用支援)などの業務にあたります。
基幹相談支援センター
地域の相談支援業務で拠点としての役割を担い、障がい者支援の総合的な業務をしているのが基幹相談支援センターです。障害の程度に関わらず相談できるので、どこに相談したらいいかわからないという人もここに相談するといいでしょう。
基幹相談支援センターの業務内容である相談業務では、以下のように幅広い業務に対応しています。
・障がい者や障害児などの相談に応じて必要な情報を提供
・障がい者の相談に応じ、必要な調査を実施してからの助言・指導
・地域において相談支援や障害児支援に従事する人に対しての助言・指導
・関係機関との連携を強化するための取り組みの実施
支援者の人材教育・障がい者の権利を守る・虐待を予防する・地域の相談支援体制を強化する取り組み・地域定着のサポートなども担っているのが特徴です。。
相談支援専門員としてキャリアアップするなら資格取得がおすすめ

相談支援専門員の上位資格として、主任相談支援専門員という資格があります。相談支援専門員をマネジメントする立場として、ソーシャルワーカーとしての役割が大きいです。
相談支援専門員としての専門性を高め、キャリアアップにつなげていきましょう。
主任相談支援専門員研修の内容
主任相談支援専門員になるためには、主任相談支援専門員研修を受講しなければなりません。相談支援専門員として3年以上の実務経験がないと受講できないので注意です。
主任相談支援専門員研修では、以下のようなカリキュラムを受講します。
| 内容 | 受講時間 |
| 障害福祉の動向及び主任相談支援専門員の役割と視点に関する講義 | 3時間 |
| 運営管理に関する講義 | 3時間 |
| 相談支援事業者の人材育成に関する
講義及び演習 |
13時間 |
| 地域援助技術に関する講義及び演習 | 11時間 |
| 合計時間 | 30時間 |
引用元:厚生労働省|相談支援の質の向上に向けた取組の経緯 -相談支援専門員の研修制度の見直しについて
主任相談支援専門員が果たす役割
主任相談支援専門員は、相談支援事業所や基幹相談支援センターにおいて相談支援専門員たちを統括し、関係機関との連絡調整係を担います。障がい者支援をおこなっている地域において、中核的なポジションを占めていくポテンシャルのある仕事だといえるでしょう。
相談支援専門員の枠を超えて、地域や関係機関へも働きかけたい方におすすめです。
相談支援相談員の仕事に向いている人の特徴

相談支援専門員は相手の気持ちに寄り添って、相手にとってベストな助言・指導をしていかなければなりません。その中で、仕事に向いている人にはいくつかの共通点があります。
相談支援専門員として働きたいという方は、適性についてチェックしてみましょう。
1,積極的にコミュニケーションがとれる
相談支援専門員は、何よりもまずコミュニケーションを円滑にとれることが大前提です。
利用者やその家族から悩みについてヒアリングしていく中で、相手が不安に感じていることや知りたいことを探り当て、それに向けてアプローチしていくスキルが求められます。
また、スタッフや関係機関とコミュニケーションをとる機会も多いため、相手の話をよく聞き、相手に対して自分の話をわかりやすく伝えられるスキルは必要不可欠でしょう。
2.責任感が強く主体的に動ける
相談支援専門員は、利用者の悩みや不安という繊細な部分にアプローチしていく仕事です。あなたの助言・指導内容によっては、相手の人生を良くも悪くも左右する力があります。
そのため、利用者からの相談に責任を持って対応し、その後の利用者の生活が好転していくように、ベストな助言・指導内容を考案・実行していくことが大切だといえます。
責任感が強く、利用者の不安や悩みの解消に対して主体的に動ける方におすすめです。
3.冷静に状況判断できる
相談支援専門員として働いていくためには、相手に感情移入しすぎて客観的な判断ができなくなってしまっては、最適な支援からは遠ざかってしまう可能性があります。
日々の生活のモニタリングなどの客観的な経過観察といった機会を通じて、過度に主観的になりすぎず、客観的な目線を意識し冷静に状況判断していくことが重要です。
状況を客観視して冷静な判断を下せるという方には向いている仕事だといえます。
要件を確認して相談支援専門員をめざそう

今回は、相談支援専門員についての概要や、仕事の内容、なるために必要な実務経験や研修、キャリアアップにおすすめの資格、向いている人の特徴について紹介しました。
相談支援専門員として3年以上の実務経験を積めば、主任相談支援専門員を目指す選択肢が出てきます。現場の統括リーダーや関係機関との調整役としてさらに活躍できるでしょう。
相談支援専門員には、円滑なコミュニケーション能力や相手の人生を背負っていることを自覚する責任感の強さ、冷静な判断能力などの資質が求められるのが特徴です。
相談支援専門員は、令和2年にカリキュラムが変わり、障がい者への細やかな対応や利用計画の質の向上がより強く求められています。実務経験年数などを確認したうえで、相談支援専門員を目指していきましょう。












