介護職員同士のコミュニケーションが重要な理由とは? コミュニケーション目標のおすすめを紹介
介護施設において、スタッフ同士のコミュニケーションは非常に重要となります。細やかなコミュニケーションがチームワークを高め、介護サービスの質を向上させるからです。
しかし、さまざまな年代のスタッフが一緒に働く介護施設では「円滑にコミュニケーションをとるのが難しい」と感じている人は多いのではないでしょうか。
今回は、介護施設でコミュニケーションが大切な理由やコミュニケーションのコツなどをご紹介します。
スタッフ同士のコミュニケーションが重要な理由とは?
介護の現場では、スタッフ同士のチームワークが必要となります。介護サービスの質は、施設全体の連携や協力に左右されるため、スタッフ同士が日頃から細やかなコミュニケーションをとることが重要です。
ここでは、介護サービスにおいてチームワークが欠かせない理由と、チームワークが整っていない施設の特徴を解説いたします。
1. チームケアを円滑におこなうため
チームケアを円滑におこない、利用者に質の高いサービスを提供するためには、チームワークが重要です。
チームケアとは、以下の職種が連携して介護サービスをおこなうことをいいます。
・介護士
・医師
・看護師
・理学療法士
・介護支援専門員
チームケアではひとりの利用者にさまざまな職種のスタッフが関わっているため、意思疎通がとれていなければ現場が混乱しかねません。
2. 利用者に最適なサービスを提供するため
スタッフがお互いの苦手分野をフォローし合い、利用者に最適なサービスを提供するために、チームワークが必要です。
介護スタッフは万能ではありません。「レクリエーションは得意だけど入浴は苦手」「おむつ交換は上手いのだけどコミュニケーションが苦手」など得意なことや苦手なことがあるはずです。
しかし、チームワークを高め、お互いにフォローし、教え合うことで施設全体のサービスの質を高められます。
3. サービスのクオリティを均一にするため
施設のサービスを均一化して利用者が安心して介護サービスを受けるためには、チームワークが欠かせません。
介護施設では、ひとりの利用者に複数の介護士が関わります。介護士によって作業手順や内容が異なれば、利用者は戸惑い「あの人はこうやってくれたのに…」など不安や不信感が芽生えかねません。
チームワークを高めて、すべてのスタッフが同じサービスを提供できるように、情報や技術を提供し合うことが重要です。
チームワークに問題がある介護施設の特徴
スタッフのコミュニケーションが不足している施設は、チームワークに問題がある場合が多く、以下のような特徴があります。
・チームケアが円滑に機能していない
スタッフ全体にチームケアの重要性が周知されておらず、それぞれの職種の専門性や役割を理解していない職員がいる
・スタッフ間に情報が共有されていない
情報共有の基本である「報・連・相」が徹底されていない施設が多い
・サービス内容が均一化されていない
「自分のやり方が正しい」と考えるスタッフが多く、サービスの手順や内容が均一化されていないことが多い
チームワークの要! スタッフ間のコミュニケーションを円滑にするには?
介護の現場で必要なチームワークを高めるためには、スタッフ間のコミュニケーションが大切です。ここでは、スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にするポイントをご紹介します。
1. 相手の立場に立って考えてみる
スタッフ間で「意見が食い違ったとき」や「考えが理解できないとき」は、ひと呼吸いれて相手の立場に立って考えてみましょう。
「なぜそう考えたのか」「なぜそのような行動をとるのか」を相手になったつもりで想像すれば、新しい発見があるはずです。「相手がその考えに至った経緯」がわかれば、共感できるポイントが見つかるかもしれません。
2. 共感を大切にする
自分と違う考えを否定したり、自分の考えを相手に押しつけたりせずに、共感を大切にしましょう。どんな人でも共感されれば安心するものです。
上述したようにまず相手の立場に立ち、相手のバックボーンを想像することで、共感できるポイントを見つけられます。自分と価値観が違っても、「そういう考えもあるのか」と一度受け入れてみるのがおすすめです。
3. 適度な距離感を保つ
アットホームな施設や職員の人数が少ない施設などでは、スタッフ同士が適度な距離感を保つことが大切です。
精神的な距離が近いと、自分と他人の境界線が曖昧になり、「執着心」や「依存心」が芽生えることがあります。このような相手を「馴れ馴れしい」「面倒くさい」と感じる人は多いことでしょう。相手の立場に立ち、相手の気持ちを尊重することで、適度な距離感を保てます。
4. 言葉以外のコミュニケーションも大切にする
口調や表情、身振りなど、言葉以外でのコミュニケーションも大切な要素となります。アメリカの心理学者・メラビアンによれば「人に与える印象の9割は言葉以外の非言語コミュニケーションで決まる」からです。
・明るい笑顔であいさつを交わす
・穏やかで落ち着いた声であいづちを打つ
・清潔な身だしなみを心がける
これらを意識することで、相手が受ける印象は好ましいものに変わります。
チームワークをさらによくするためには?
スタッフ間のコミュニケーションが円滑になったら、施設全体のチームワークをさらに高めていきましょう。ここでは、チームワークを向上させるためのポイントをご紹介します。
1. チームとしての目標を設定する
チームの目標を設定することで、全員が同じゴールに向かって努力できるようになり、チームワークが高まります。肝心なことは一部のリーダーが目標を設定するのではなく「チームで話し合って決めること」です。
自分たちで決めた目標を共有することで、目標達成への意欲が高まり、全員が協力して行動できるようになります。その結果、チームワークの向上につながるということです。
2. かんたんなミーティングを習慣にする
チームワークを高めるには、毎日10分ほどのかんたんなミーティングをおこなうとよいでしょう。毎日ミーティングで全員が顔を合わせることは、コミュニケーションの促進や情報を共有する効果があります。
仕事上の小さな問題や悩みをミーティングで話題にすることで、チーム全体が共有して、スピーディに解決できます。習慣にすることでチームワークの向上だけでなく、サービスの質の向上にも役立つでしょう。
3. 積極的にコミュニケーションをとる
チームワークを高めるためには、スタッフ同士が普段から積極的にコミュニケーションをとることが大切です。スタッフ間で気軽に会話ができる雰囲気があれば、ミーティングの場で活発に議論できます。
とくにチームのリーダーは、経験の浅いスタッフも気軽に相談でき、全員の意見が尊重される土壌づくりを普段から心がけましょう。
おすすめのコミュニケーション目標を紹介
施設全体のチームワークを高めるためには、新人・中堅・ベテランがそれぞれに合った目標を持ってコミュニケーションを促進していくことが大切です。ここでは、それぞれどのような目標を決めるといいかをご紹介します。
新人|コミュニケーションを学んで実践する
1年目から3年目ほどのスタッフは、「自主的にコミュニケーションを学び実践すること」を目標にしましょう。業務内容を覚えることと並行して、コミュニケーションのノウハウを書籍から学ぶのがおすすめです。
コミュニケーションのコツを理解すれば、職場での人間関係をうまく築けるようになります。学ぶだけでなく「笑顔であいさつする」「報・連・相を心がける」「自分の考えをきちんと伝える」などを、積極的に実践することも大切です。
中堅|新人へのコミュニケーション指導もできるように
4年目から6年目ほどの方におすすめのコミュニケーション目標は、「新人スタッフにコミュニケーション指導をする」「自分のミスについては素直に報告する」などです。
新人スタッフの手本となるように、利用者や他部門のスタッフと積極的にコミュニケーションをとって得た意見や課題を、業務に活かしましょう。
また、中堅になると自分の仕事に自信が持てるようになりますが、周りの意見を真摯に受け止めて、自分のミスや反省点はきちんと報告することも大切です。
ベテラン|責任者としてチームをとりまとめる
7年目以降の方におすすめのコミュニケーション目標は、「責任者としてチームを取りまとめて円滑に進むようにする」「問題や課題の責任をほかのスタッフに任せない」などです。
チームケアの責任者として、すべてのスタッフが働きやすい職場となるように環境を整えましょう。また、施設内でコミュニケーションだけでなく、サービス向上のために関係各所との交流や意見交換も求められます。
介護サービスの質を上げるにはスタッフ間の円滑なコミュニケーションが欠かせない
スタッフ同士の円滑なコミュニケーションは、質のよいサービスに欠かせない重要な要素です。それぞれのスタッフが役割に合ったコミュニケーション目標を立てて実践することで、快適な職場環境を整えられるようになります。
細やかなコミュニケーションが施設全体のチームワークを高め、チームケアを円滑にし、利用者への快適なサービスの提供につながっていくということを理解しておきましょう。