地域包括支援センターの仕事とは? 職種別の仕事内容を紹介
介護福祉を担う公共の施設のひとつに、地域包括支援センターがあります。「地域」の名の通り、センターのある地域の介護福祉を担当していますが、いったいどんな仕事をしているのでしょうか?
今回は、地域包括支援センターが担う仕事や、どんな介護福祉の専門家が所属しているのか、所属別の仕事内容などを解説します。
地域包括支援センターの仕事とは?
まずは、地域包括支援センターがどんな仕事をする施設なのかを見ていきましょう。地域包括支援センターは、一言でいうと「地域の高齢者の介護福祉」を担当する施設です。高齢者の介護や医療・保健など、生活していくなかでの悩みに関する相談事を広く受け付けている、いわば総合窓口といえるでしょう。
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が常駐しており、寄せられた相談に対し、それぞれの専門家がときには連携をして対応してくれます。
地域包括支援センターとは?
地域包括支援センターは、厚生労働省が掲げる「地域包括支援ケア」の中核を担うために設置された施設です。
地域包括支援ケアとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう構築された、地域の包括的な支援・サービス提供体制のことです。
こういったシステムの構築が進められている背景には、日本の高齢化が急速に進んでいることがあげられます。65歳以上の人口は2018年に3,500万人以上、今後も増え続け、2042年にはピークの約3,900万人に達するといわれています。さらに、人口に対する高齢者の割合は増加の一途をたどると予想されているのが現状です。
こういった高齢者の生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要と考えられており、地域包括支援センターは中核を担う存在として期待されています。
地域包括支援センターの仕事については、別記事でも紹介していますのであわせてご覧ください。
地域包括支援センターとは? どんな役割があるの? 利用する2つのメリットを紹介
どんな方が利用できるの?
地域包括支援センターの利用対象は、対象地域に住む65歳以上の高齢者です。高齢者本人だけでなく高齢者の家族、高齢者の近所に住んでいる人など、どんな人からでも高齢者に関わる相談をすることができます。
たとえば、高齢者本人の「介護を受けたい」という相談はもちろん、高齢者の家族の「認知症で困っている」といったことや、近所の人が「最近姿を見かけなくて心配だ」といったことなど、幅広い相談にのってもらえます。
注意点として、高齢者本人以外が相談する場合、「高齢者本人」が住んでいる地域のセンターを頼る必要があります。離れて暮らしている子どもが高齢の親のことについて相談したい場合、親が住んでいる地域のセンターを利用してください。
どこに設置されているの?
地域包括支援センターは全国のすべての市町村に設置されています。令和4年4月末時点では5,404カ所あり、ブランチやサブセンターといったセンターにつなぐための窓口や支所も含めると、7,409カ所にものぼります。
地域包括支援センターの仕事とは?
地域包括支援センターが、高齢者の介護福祉の中核を担うことはおわかりいただけたのではないでしょうか。ここからは、地域包括支援センターの仕事内容をもう少し掘り下げて紹介したいと思います。
なお、詳しい業務内容については別記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
地域包括支援センターの業務内容を紹介|どんな相談が寄せられる? 今後の課題とは?
1. 総合相談支援|高齢者・家族の相談受付
地域包括支援センターの仕事の一つめは、総合相談支援。高齢者の福祉に関する相談の総合窓口となり、各専門家と連携します。地域の高齢者が住み慣れた場所で快適に暮らすことができるよう、支援を効率的におこなうためのケアマネジメントです。
2. 権利擁護|成年後見制度の活用促進など
二つめは、権利擁護に関する業務です。権利擁護とは、高齢者の権利を守るための仕事です。たとえば、詐欺や悪徳商売などによる金銭的被害や虐待などから、高齢者を守ることを目的としています。
加齢による認知の衰えなどで、自分自身で判断や手続きができない高齢者のため、成年後見制度の活用促進もしています。
3. 包括的・継続的ケアマネジメント支援|介護支援員のサポート
三つめの仕事は、包括的・継続的ケアマネジメント支援です。包括的・継続的ケアマネジメント支援とは、住民の対応ではなく、対応をする側の専門家である介護支援専門員(ケアマネ)の後方支援にあたります。
介護支援専門員を対象にした研修会や交流会を開催したり、困難事例の相談にのったりといったことをおこないます。
4. 介護予防ケアマネジメント|ケアプランの作成など
四つめに紹介するのは、介護予防ケアマネジメント業務です。介護予防とは、要支援認定を受けた高齢者が要介護状態に移行してしまうことをできる限り遅らせたり、要介護認定の人の状態を悪化させないようにしたりするためにサポートすることです。
高齢者本人の意思を確認しながら介護予防ケアプランの作成をし、ケアプランをもとに介護予防のためのサービスと連携します。
5. 指定介護予防支援
要支援者が要介護状態に移行することや、要介護者の状態が悪化することなどを予防するために介護予防ケアマネジメントを行う事業所のことを、指定介護予防支援事業所といいます。指定介護予防支援は、介護保険制度の基本理念である「自立支援」にもとづき、要支援者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることが第一の目的です。
地域包括支援センターは、指定介護予防支援事業者となることで、地域の介護予防ケアマネジメントの中心となり、介護支援センターや指定居宅介護支援事業者などといったほかの施設や業者と連携することが求められます。
職種別の仕事内容を紹介
地域包括支援センターには、社会福祉士・保健師(看護師)・主任介護支援専門員・介護支援専門員が常駐しています。ここからは、地域包括支援センターに寄せられた相談に対し、どの職種の人が対応するのか、どんな仕事をしているのかについて紹介します。
社会福祉士
地域包括支援センターに常駐する社会福祉士の主な仕事は、相談の総合窓口です。利用者からの相談を受け、各専門家とのパイプ役を担ったり、高齢者の自宅や施設を訪れて安否の確認をおこなったりします。
保健師・看護師
保健師・看護師は、病院でおこなうような直接の医療行為をおこなうことはほとんどなく、医療的アプローチが必要となる介護支援や介護予防マネジメントを担当しています。病院や施設など外部の施設とも連携し、高齢者が健康的な生活を送れるようにサポートします。
主任介護支援専門員|主任ケアマネジャー
主任介護支援専門員は、主に包括的・継続的ケアマネジメント支援を担当します。ケアプランの作成をおこなうこともありますが、介護支援専門員を統括する立場として適切な介護をおこなえるよう支援をします。
介護支援専門員の育成や、居宅介護保険事業所に所属する介護支援専門員との連携など、介護環境の改善に取り組むのも重要な業務です。
介護支援専門員|ケアマネジャー
介護支援専門員は地域住民からの相談業務のほか、実際にケアプランを作成し、高齢者が安定した生活を送ることができるよう支援します。主任介護支援専門員が支援専門員の管理や支援をする立場であるのに対し、介護支援専門員は高齢者やその家族と直接関わることが多い、より介護の現場に近い立場となります。
地域包括支援センターでは寄せられた相談に専門家が対応している
地域包括支援センターは、地域の高齢者の介護福祉の中核を担う公共の施設です。日本全国の各市町村に設置されており、その地域に住む高齢者が自立して自分らしく生活できるよう、適切な介護福祉を届けることを目的としています。
地域包括支援センターでは、高齢者に関わる悩みや疑問であれば、高齢者本人はもちろん、その家族や近所に住む人など、誰でもどんな相談でも無料で利用することができます。
所属する介護福祉の専門家が、相談内容に応じて適切なサービスや事業所を紹介してくれます。地域の高齢者の生活を支えるため、些細なことでも気軽に利用してみてはいかがでしょうか。
引用元
厚生労働省:地域包括支援センターについて
厚生労働省:3 地域包括支援センターの設置運営について(通知)
厚生労働省:地域包括ケアシステム
名古屋市社会福祉協議会:社会福祉士のお仕事
名古屋市社会福祉協議会:保健師(看護師)のお仕事
名古屋市社会福祉協議会:主任介護支援専門員のお仕事
名古屋市社会福祉協議会:介護支援専門員(パート)のお仕事
e-Gov法令検索:指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準
袖ケ浦市:1 指定介護予防支援の概要