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特集・コラム 2023-06-14

地域包括支援センターの業務内容を紹介|どんな相談が寄せられる? 今後の課題とは?

介護や福祉に関する支援を担う施設のなかのひとつに、地域包括支援センターがあります。地域包括支援センターという名前を知っていても、何をしているのか知らない、どんなことが相談できるかわからない、という人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、地域支援センターの業務内容を解説し、寄せられている相談の具体例や、今後の課題について紹介していきます。

地域包括支援センターの業務内容とは?

まずはじめに、地域包括支援センターは何をしている施設なのかについて見ていきましょう。

地域包括支援センターとは? どんな役割があるの?

地域支援センターとは、地域に暮らす高齢者のための支援施設です。高齢者の健康や生活全般、医療、福祉などを地域で支える相談窓口として存在しています。

介護や保健などの福祉のほかにも、毎日の生活のなかでの困り事なども相談することができます。また、高齢者本人とその家族はもちろん、高齢者の近所に住む人からの相談も受け付けており、高齢者のための総合的な相談窓口となっています。

地域包括支援センターの役割については別記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
地域包括支援センターとは? どんな役割があるの? 利用する2つのメリットを紹介

1. 包括的支援事業

地域包括支援センターの主な業務は、包括的支援事業です。包括的支援事業とは、地域の高齢者の支援を効率的におこなうための、総合的なマネジメントです。

具体的には、以下の4つの業務を指します。

1. 介護予防ケアマネジメント
2. 総合相談支援
3. 権利擁護
4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援

それぞれの業務について、詳しく見ていきましょう。

介護予防ケアマネジメント

介護予防ケアマネジメントとは、要支援の高齢者が要介護状態になるのをできるだけ遅らせたり、要介護状態になっても悪化をできる限り防ぐことを目的に、高齢者の生活を地域でサポートすることです。

要支援を受けた高齢者自身と相談しながら、介護予防ケアプランの作成をおこないます。また、ケアプランにそって、介護予防のためのサービスや心身機能を維持するための運動サークルなどを紹介します。

総合相談支援

地域包括支援センターは、高齢者に関する総合的な相談窓口の役割を担っています。地域の高齢者が、住み慣れた場所で自分らしく快適に自立した生活を送ることができるよう、さまざまな相談に応じます。

総合相談支援は、高齢者本人とその家族以外にも、その地域に住んでいる住人からも受け付けています。高齢者に関わることなら、誰からでもどんなことでも相談にのってくれます。

権利擁護

高齢者の生活に関わる支援として、権利擁護に関する業務もおこなっています。権利擁護とは、詐欺や金銭的被害、虐待などから、高齢者の尊厳を守ることです。

加齢による、判断力や認識力の不足から不利益を被らないよう、財産管理や身上保護の法律行為を本人の意志を踏まえて、意思決定支援をおこなう成年後見制度の活用を促進したり、手続きの支援をおこなったりします。

包括的・継続的ケアマネジメント支援

包括的・継続的ケアマネジメントの支援も重要な業務です。地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)のいわば後方支援で、介護支援専門員を対象とした研修会をおこなったり、困難な事例の相談にのったり、介護支援専門員同士のネットワークを確立したりします。

こういった支援をおこなうため、地域包括支援センターには介護支援専門員はもちろん、保健師(看護師)や社会福祉士など、福祉にかかわるさまざまな専門家が所属しています。

指定介護予防支援

介護保険制度の基本理念である「自立支援」にもとづき、要支援者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることが第一の目的です。高齢者が要介護状態となることや、要介護者の状態悪化などを予防するために介護予防ケアマネジメントを行う事業所のことを、指定介護予防支援事業所といいます。

地域包括支援センターは、この指定介護予防支援事業者となることで、地域の介護予防ケアマネジメントの主体となり、老人介護支援センターや指定居宅介護支援事業者などと連携することが求められます。

地域包括支援センターにはどんな相談が寄せられるの?

地域包括支援センターは、高齢者に関するさまざまな相談の総合窓口となっています。総合窓口とはいっても、どんな相談が寄せられているのかよくわからないかもしれません。

そこでここからは、センターに寄せられる相談事例と、対応する専門家について見ていきましょう。

相談事例1

高齢者の家族からの相談事例です。

「母は既に他界しており、高齢の父が一人暮らしをしている。一人でも生活できていたが、転倒して骨折してしまった。入院して骨折の治療をおこなったが、退院後は今までのように身の回りのことを自分でやるのが難しく、介護の必要性を考えている。しかし自分たち子どもは親元から遠く離れた地で暮らしているため、定期的に通うことが難しい。介護について相談したいが、どこで誰に相談すればいいのかすらわからない。」

相談事例2

高齢者自身の相談事例です。

「高齢を心配して息子夫婦が同居を申し出てくれ、息子の家へと引っ越した。しかし、この年で慣れない土地の新生活は難しく、外出をする気も起きず家にこもりがちになってしまっている。このままでは認知症も早まって息子夫婦に迷惑をかけてしまいそうで不安だ。」

相談事例3

高齢者の近所に住む人の相談事例です。

「近所に住んでいるお爺さんは、以前はよく散歩や買い物にでかけていて、顔を合わせると挨拶をしていた。しかし最近、日中に見かけることがほとんどなくなってしまった。何かあったのかと心配していたら、先日、はだしのまま夜の公園にいるのを見かけた。もしかしたら認知症なのかもしれないが、私は家族でもないので何ができるのかわからない。」

事例にはどんな専門家が対応するの?

地域包括支援センターには、社会福祉士・保健師(看護師)・主任介護支援専門員といった専門家が所属しています。それぞれの専門家の対応内容は、以下の通りです。

社会福祉士

地域包括支援センターに所属する社会福祉士は、主に総合相談の窓口となり、介護全般の支援や権利擁護を担当します。自宅や施設を訪問し、高齢者の安否の確認もそのうちの1つです。

相談事例1〜3で紹介したすべての相談の窓口となり、各専門家とのパイプ役となったり、権利擁護に関わる手続きの紹介や支援といった役割を果たします。

保健師・看護師

保健師・看護師は、医療的なアプローチから介護支援や介護予防マネジメントを担当します。必要に応じて病院や薬局、保健所などの施設と連携し、地域に住む高齢者の健康面を支えます。

相談事例の1と3に対応します。

主任介護支援専門員・介護支援専門員

主任介護支援専門員は介護の専門家として、包括的・継続的ケアマネジメント支援の中核を担います。介護全般の支援に関わり、介護サービス事業者と連携して、高齢者ひとりひとりに適切な介護をおこえるよう支える役割を果たします。

介護予防をおこなう介護支援専門員とともにケアプランを作成したり、介護支援専門員の育成や後方支援、介護環境の改善に取り組むのも主任介護支援専門員の重要な業務です。

相談事例の1~3すべてにおいて手続きのサポートや適切な介護サービス事業所の紹介、担当する専門家との連携などをおこないます。

地域包括支援センターの現状と今後の課題とは?

地域包括支援センターは、主に高齢者の健康面や生活を地域で支えるために設置されました。地域包括支援センターが設置された背景には、高齢化がすすんでいることがあげられます。

厚生労働省の発表によると、日本では65歳以上の高齢者の数が3,500万人を超えており、2042年には3,900万人とピークに達することが予想されています。今後ますます、人口に対する高齢者の割合は増加し続けるでしょう。

こういった高齢者たちが、尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築するために設置されたのが地域包括支援センターです。

引用元 厚生労働省:地域包括ケアシステム

現在では全国のすべての市町村にわたって5,404カ所が設置されています。

しかし、すべての地域包括支援センターが問題なく機能しているとは言いがたいのが現状です。

今後の課題とは?

住民の声のなかには、地域包括支援センターの対応がひどい、相談しても問題が解決しなかった、といった厳しいものもあります。これは、地域ごとにセンターの職員の数や質、業務量などに大きな差があるのが原因だと考えられます。

高齢者の介護は家族内だけで完結させるものではなく、地域でおこなうものです。そのため、高齢者介護に対する意識改革を促すために、センターが中核となって啓蒙活動をおこなう必要があるといえるでしょう。

そのためには、地域包括支援センター自体の知名度向上をはかり、地域との連携をさらに強化していくことが重要です。

地域包括支援センターは高齢者の快適な暮らしを支援する施設

地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の生活に関する相談全般の総合窓口となる施設です。高齢者自身やその家族のほかにも、近所に住む人など、高齢者に関わる問題なら誰でも、どんなことでも相談することができます。

しかし、地域によってサービスの質に差があるといった課題も抱えています。また、地域包括支援センターの存在自体を知らず、相談ができないまま問題を抱えて生活している人も少なくありません。

今後は地域包括支援センター自体の知名度を高めつつ、サービスの質を向上させていくことが課題と考えられるでしょう。

引用元
厚生労働省:地域包括支援センターについて
厚生労働省:3 地域包括支援センターの設置運営について(通知)
厚生労働省:地域包括ケアシステム
名古屋市社会福祉協議会:お仕事の紹介
袖ケ浦市:1 指定介護予防支援の概要名古屋市社会福祉協議会:お仕事の紹介
袖ケ浦市:1 指定介護予防支援の概要

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