意識消失時に介護職員が行うべき対応とは? スムーズな緊急対応のためにできることとは
介護職員として利用者を介護するにあたって、押さえておくべきなのが意識消失時の適切な対応方法です。このようなときは、パニックに陥ることなく冷静に対応する必要があります。
しかし、適切な対応について知らず、万が一NGな対応をしてしまえば、利用者の命に危険が及ぶ可能性があります。
そこで今回は、介護職員として働く方や転職を検討する方へ向けて、利用者の意識消失時に介護職員がおこなうべき対応を解説します。本記事を参考に、適切な対応について押さえておきましょう。
意識消失時に介護職員が行うべき対応とは?
適切な対応を押さえておく前に、意識消失の概要について押さえておきましょう。ここでは意識消失の概要にあわせて、介護職員がおこなうべき対応について解説します。しっかり目を通しておきましょう。
以下の記事でも、急変時の救命処置に関して監修付きで解説していますので、あわせて確認してみてください。
【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.27】利用者が急変! まずは何をすればいい?
意識消失とは?
意識消失とは、別名を「意識障害」や「失神(気絶)」と呼び、呼びかけにも反応がないことを指します。高齢者のうち約30%は転倒を起こしやすく、全転倒だった場合の30%は失神を原因とするものと言われています。原因は自然な老化をはじめ、高血圧や糖尿病、心疾患など複数の疾患とされています。
引用元
意識障害・失神|社会福祉法人 恩賜財団済生会
第1回 高齢者の方の失神について|在宅療養支援診療所 医療法人 社団 鳳優会
なお、意識障害の程度は軽度な物から「傾眠」「昏迷」「半昏睡」「昏睡」などに分類されます。それぞれの特徴は下表のとおりです。
傾眠 | 外部刺激や情報に反応があり覚醒するものの、放っておくと眠ってしまう |
昏迷 | 体を揺らしたり大声で呼びかけたりなど、強い刺激を与えると反応がある |
半昏睡 | 強い刺激に反応して刺激を避けたり顔をしかめたりする |
昏睡 | 外部からの刺激にまったく反応しない
眼は閉じたまま開かない |
意識消失時に介護職員が行うべき対応とは?
利用者の意識消失が確認できたときは、これから紹介する5つの項目に沿って適切な対応を行いましょう。
名前を呼んで反応を確かめる
意識消失がみられたときは、まず名前を呼んで反応の有無を確かめましょう。名前を呼びかけながら「大丈夫ですか」「聞こえますか」などと声かけし、意識レベルをみながら次の行動パターンを判断します。
呼びかけに対しても反応がない場合は、症状が重度で緊急性の高いものと判断し、緊急処置と救急車の要請を行いましょう。
医療資格者がいる場合
もし、施設や事業所に医療資格者がいる場合は、バイタルチェックや容態の観察を行い、緊急受診の有無を判断しましょう。医師の受診が必要と判断したときは、医療資格者から病院の医師に状況を説明してください。
医療資格者がいない場合
医療資格者がいないときは、体調の急変があったときと同じ対応を行います。かかりつけ医に速やかに連絡を入れ、状況を説明して正しい指示を仰いでください。
なお、意識レベルの確認方法は下表のとおりです。
症状別 | 環境別 |
頭部損傷の有無 | どんなときに発症したか
(安静時や活動時、起床時や入浴時など) |
感染症の有無 | 意識が消失する前になにをしていたか |
症状が起こったのは初めてか、または複数経験しているものか | 糖を含む清涼飲料水を多量に摂取したか |
一過性のものか | アルコールを含む飲料を多量に摂取したか |
気になる症状はあるか | 飲んでいる薬剤やサプリメントの種類
(覚醒剤や大麻などを含む) |
血圧の変化はあるか | 患っている病気の有無 |
平常時の体温か | ー |
救急搬送を行う場合|家族に連絡する
意識レベルをチェックし、救急搬送が必要と判断された場合は、救急車の要請にあわせてご家族にも連絡し、救急隊員より利用者の搬送先の連絡が入った場合も必ず伝えましょう。
利用者の意識消失が救急搬送をともなわない場合であっても、状況報告として必ずおこなうよう留意しましょう。
介護事故報告書を作成する
利用者に事故や体調の急変が起きた場合は、対応後に介護事故報告書を作成します。介護事故報告書とは、介護サービスを提供したなかで起きた事故の詳細を記載し、行政に提出する書類のこと。
なお、介護事故報告書は事業所や自治体によって報告書のフォーマットが定められています。介護職員として働くことになったときは、書類の保管場所や形式などを確認し、正しく記載できるよう準備しておきましょう。
注意したいNG対応とは?
意識消失時は避けるべきNG対応についても押さえておきましょう。誤った対応によっては利用者の命にかかわる可能性もあります。ここではNG対応を3つご紹介します。
家族へ対応を一任する
サービス利用中に利用者に体調不良などがみられたときは、施設側が責任をもって適切な対応をしましょう。
ご家族に判断を一任するのは避け、呼びかけなどを取り入れながら意識レベルのチェックをおこない、必要であれば救急搬送を要請してください。
頭や体を揺する
意識消失の度合いを確かめる際、頭や体を揺するのはNGです。意識消失の原因は、脳に障害が起きていたり、転倒によって骨折したりする場合があります。大きく揺らすことで症状を悪化させる可能性があるので、揺らす行為は避けましょう。
利用者の意識消失を確かめるときは、大きな声で呼びかけをするか肩をトントンと叩く程度に留めてください。
素手で吐しゃ物などに触れる
利用者の意識消失がみられた際、吐瀉物や血液などがあっても素手で触れるのはNGです。内臓疾患の疑いがあるほか、なんらかの感染症も考えられます。
万が一感染症だった場合、素手で触ると自身やスタッフ、ほかの利用者に感染する恐れも。ゴム手袋などを着用するなど、感染症対策を徹底してから対処しましょう。
スムーズな緊急対応のためにできることとは?
利用者のなかには、「持病によって頭痛がみられることがあるものの、すぐに改善するため心配はいらない」など、さまざまな理由を抱える方もいます。
ここでは、特別な理由を抱える利用者に対してスムーズな緊急対応をおこなうため、普段からできることをご紹介します。
利用開始前に体調不良についての情報を確かめておく
サービスを利用する前は、あらかじめ利用者の体調や現状について家族からヒアリングを行いましょう。
利用前に体調や現状について把握しておけば、体調不良時にどんな症状が起き、どんな対応が必要かを判断しやすくなります。
ヒアリングでは、利用者の体調が急変しやすい時間帯やきっかけなどをあわせて聞き取っておくと、利用者の体調にあわせたサービスが提供できます。
スタッフ間で情報共有する|体調の情報・備品の場所
利用者の体調について情報を聞いたあとは、スタッフ間で共有しましょう。情報共有しておくことで、いざという時に適切な対応がしやすくなります。
また、日勤・夜勤の切替時にも安心して対応できるよう、漏れなく引き継ぎしておくなど、どのスタッフでも対応できる体制を整えましょう。緊急時対応で使用する備品の場所も共有しておくと、適切な対応がおこなえます。
勉強会などに参加してスキルアップを図る
利用者の体調をカバーしながら適切なサービスを提供したいと考えるなら、現場で活かせるスキルが学べる勉強会や研修会に参加するのもおすすめです。
どんなときも臨機応変に対応できるよう予備知識を蓄えておけば、さまざまな事態にも冷静に対応できる頼もしい介護職員になるでしょう。
緊急時にも慌てないように普段からしっかり備えておこう
利用者の意識消失がみられたら慌てそうになるものです。しかし、介護職員として働くには、意識消失の概要や適切な対応、NG対応を押さえたうえで、冷静に対処することが大切です。
緊急時にも慌てず対応できるよう本記事で紹介した項目を押さえ、スタッフ全員で利用者を守る準備をしておきましょう。
引用元
意識障害・失神|社会福祉法人 恩賜財団済生会
第1回 高齢者の方の失神について|在宅療養支援診療所 医療法人 社団 鳳優会