言語聴覚士とは
特殊な職業のため、一般的な生活をしている人にとっては馴染がありませんが、近年、医療関係者には注目されるケースが増えてきている言語聴覚士。ここではそんな言語聴覚士になるための方法、仕事内容、働ける場所、給料、将来性、国家試験の受験資格や概要の他、言語聴覚士に向いている人など、求職者のみなさんが知りたいことを詳しくご紹介します。
言語聴覚士とは
言語聴覚士(ST)は、医療従事者のための国家資格で、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、視能訓練士(ORT)と同様、リハビリテーション専門職のひとつです。1999年にできた、まだ新しい国家資格です。言語聴覚士の名を用いて、話す、聞く、食べるなどの機能が不自由な人に対して、その機能の維持向上を図るために、訓練、指導、助言をする仕事に従事している人のことを言います。
言語聴覚士法(平成9年12月19日法律第132号)では、「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うこと」と定義しています。
※ST /Speech Language-Hearing Therapist、OT/Occupational Therapist、PT/Physio Therapist、ORT/Orthoptist
仕事内容
話す・聞く・食べる、これらは人がコミュニケーションをとるのに重要な機能であり、食べることに至っては生きるために必要不可欠な機能です。言語聴覚士の業務内容は先天性の障害や、脳卒中、脳梗塞により、話すこと、聞くこと、食べることが困難になった人に対してリハビリテーションを行い、能力を回復させることが大きな仕事です。では、障害の種類によって、言語聴覚士はどのような対応をするのでしょうか?
「聞こえ」の障害
聞こえの障害は、感音性難聴や伝音性難聴などにより言葉を聞くことが困難な症状のことを指します。感音性難聴には老人性難聴・突発性難聴・騒音性難聴などがあり、内耳に障害が起こると発症する難聴です。それに対して伝音性難聴には中耳炎・耳硬化症・鼓膜穿孔などがあり、外耳・中耳に何かしらの障害が起こると発症する難聴です。
言語聴覚士はそういった聴覚障害のある方に対して、検査や訓練、補聴器のフッティングなどを行います。障害を持つ方が言語獲得期にある幼児の場合は「ことばの獲得」もサポートします。
「話すこと」の障害
話すことの障害には、構音障害や吃音(きつおん)などがあります。
構音障害とは、正しい言葉を選択することはできるものの、構音(声帯や舌、唇を使って話す動作)の障害により、声が出にくかったり、呂律が回らず正しい発音ができなくなったりする言語障害です。
吃音は一般的に「どもり症」とも言われ、言葉がスムーズに出てこない、無音状態(言葉が出てこない)などの症状があります。言語聴覚士の仕事としては発声発語機関の障害である構音障害にも、脳からの指令伝達機能の障害である吃音にも、訓練や指導を施していきます。
「食べること」の障害
食べることの障害には摂食障害や嚥下(えんげ)障害などがあります。
摂食障害には身体的な問題や精神的な問題から起こる拒食症や過食症があり、嚥下障害には、食べ物が口からこぼれる、うまく飲み込めない、むせるなどの障害があります。言語聴覚士はそれらの障害の原因の調査し、咀嚼して飲み込むために必要な器官の運動訓練や、飲み込む反射を高める訓練を行います。
「ことば」の遅れ
ことばの遅れとは、子どもの発達障害による言語機能の発達の遅れを指します。
脳の損傷などによる知的発達の遅れから、対人関係や言語機能の発達の遅れが見られます。そういった子どもに対して言語聴覚士は「ことばやコミュニケーションに関心を持たせる」「語彙や文法、文字の習得を促す」などの訓練・指導を行い、ことばの獲得をサポートしていきます。
成人の言語障害
成人の言語障害には失語症や記憶障害、認知症などがあります。失語症は脳卒中や交通事故などによる脳外傷などが原因で発生する、成人の後天的な言語機能障害です。症状としては、伝えたい内容を単語や文で表現することや、単語や文の意味の理解することが困難であることなどがあります。
失語症以外の記憶障害や認知症は、高次脳機能障害と言われ、言語聴覚士は高次脳機能障害に対しても患者さんの症状や症状が発生するメカニズムを把握し、それに対応したプログラムを組み立てて訓練を行うなど、患者さん一人ひとりへの対応をすることになります。
勤務先・就職先
言語聴覚士が働く場所で最も多いのは総合病院・大学病院・リハビリテーション専門病院、訪問看護ステーションなどの医療施設で、全言語聴覚士の約7割が働いています。医療施設の中でも、口腔外科、耳鼻咽頭科、リハビリテーション科で働く人が多いようです。
次いで多いのが介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護施設で、1割近い人が働いています。小中学校や特別支援学校などの教育機関や保健所に勤務する人もいます。
リジョブでは、リハビリテーションセンターや老人介護施設などの募集が多くなっています。言語聴覚士の求人は、理学療法士や作業療法士など、他のリハビリテーション職の求人に比べて少ない傾向にあります。しかしその分、希少性が高い職業と言えるでしょう。
言語聴覚士と理学療法士、作業療法士の違い
この3つはリハビリを行う同じセラピスト職として、よく比較されます。資格をとる際にはどれを目指すか迷う方も多いと思いますが、それぞれリハビリの対象とする症状の範囲が違います。
・言語聴覚士:話すこと、聞くこと、食べものを噛んだり飲み込むことが困難な方
・理学療法士:立つ、座るなど人間の基本的な動作が困難な方
・作業療法士:基本的な動作はできるが、食べる、入浴する、着替えるなど日常生活に必要な動作が困難な方(趣味や遊びも含む)
症状の原因は病気や怪我、精神的な問題、先天性の障害などさまざまです。患者の症状によっては3職種のスタッフが連携をとりながら回復をサポートしていくこともあります。これから資格取得を考えている方は、自分がどういった方をサポートしたいのか、どんな専門性を持ちたいのかなどを決めてから進むとよいでしょう。
言語聴覚士になるには
言語聴覚士になるためには、言語聴覚士国家資格に合格する必要があります。但し、特定の条件を満たさないと受験資格を得ることはできません。
国家資格には「業務独占資格」と「名称独占資格」があります。言語聴覚士は「名称独占資格」のため、資格を持たない人が「言語聴覚士」と名乗ることはできませんが、資格がないと働けないということはありません(2015年7月現在)ので、法律上は無資格者でもリハビリテーションの仕事に就くことはできます。
しかし、特殊な資格のため実際は資格を持たないと、言語聴覚士として採用されることはないでしょう。
受験資格
国家試験の受験資格を得るには、いくつかのルートがありますが、最短のルートは高校を卒業した後、厚生労働大臣が指定した言語聴覚士の養成校(専門学校)へ進学するコース、もしくは文部科学大臣が指定する3年制の短大へ進学するコースです。どちらも所定の課程を修了して卒業することで受験資格を得られます。
言語聴覚士養成課程のない一般の大学・短大を卒業した場合は、言語聴覚士の養成校(専修学校)で2年以上勉強し、知識や技能を習得する必要があります。 それ以外にも、外国で言語聴覚士の学校を卒業、もしくは免許をしている人は、厚生労働大臣の認可により受験資格を得ることができます。
国家試験
試験問題は5択のマークシート方式です。試験は毎年2月中旬に実施され、3月下旬には合格発表が行われます。
※試験日時、試験所在地、合格発表日(ホームページでの掲載日)などの試験概要は毎年9月上旬に厚生労働省 より発表されます。
言語聴覚士の資格
言語聴覚士の資格を得るには、言語聴覚士の国家試験に合格し、その上で厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
受験手続としては、受験願書などの必要書類を所定の手続き方法に従って、公益財団法人医療研修推進財団に提出し、受験手数料を支払うことにより受験票を入手できます。詳細や問い合わせ先は「厚生労働省 言語聴覚士国家試験の施行」をご覧ください。
試験科目
基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学及び聴覚障害学
国家試験の実施回数
年1回
日程
毎年2月中旬の土曜日に実施
開催場所
北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県及び福岡県
試験の内容
5肢択一のマークシート式筆記試験で、午前中100問、午後100問の計200問が出題されます。
合格基準
配点を1問1点(199点満点) とし、120点以上を獲得した者を合格とする。
全体の合格率
言語聴覚士国家試験の合格率は、過去7回のうち5回が60%台であり、同じリハビリテーション専門職である理学療法士や作業療法士の国家試験合格率に比べて低いので合格するのは難しいという印象になってしまいがちです。しかし、これは新卒者も既卒者も合わせた合格率であり、養成校の新卒者のみの合格率は80%以上です。つまり、養成校の授業内容を理解し修得すれば合格は可能であると言えます。さらに、各養成校の最終学年では国家試験合格に向けた準備や対応が行われるので、国家試験の合格に一段と手が届きやすくなります。
試験方法
筆記試験
受験料
35,700円
<受験者数、合格者数、合格率のデータ>
試験 | 受験者数 (人) |
合格者数 (人) |
合格率 | ||
---|---|---|---|---|---|
全体 | 新卒 | 既卒 | |||
第12回(平成22年) | 2,498 | 1,619 | 64.8% | 82.0% | 34.5% |
第13回(平成23年) | 2,374 | 1,410 | 69.3% | 86.5% | 31.5% |
第14回(平成24年) | 2,263 | 1,410 | 62.3% | 80.3% | 17.0% |
第15回(平成25年) | 2,381 | 1,621 | 68.1% | - | - |
第16回(平成26年) | 2,401 | 1,779 | 74.1% | - | - |
第17回(平成27年) | 2,506 | 1,776 | 70.9% | 84.9% | 22.6% |
第18回(平成28年) | 2,553 | 1,725 | 67.6% | 82.0% | 23.5% |
給料・年収
言語聴覚士の給料は、同じリハビリテーション職の理学療法士や作業療法士に比べて低いと言われていますが、給料は勤務先によって異なりますし、病院や施設の規模によっても差が出ます。
医療施設で働く人の給料は高く、介護施設で働く人の給料は低いと言われています。しかし、希少な職種であるため、初任給は一般的なサラリーマンよりも高いようですが、その後の上昇率は低いとも言われています。但し、今後の超高齢社会により、言語聴覚士の価値が上がると状況も変わることも十分に考えられます。
【備考】リジョブで募集している求人(介護施設)の給与
初任給
月給:21~28万円(年収:272~380万円)
10年以上経験を積んだ言語聴覚士の収入
月給:29~38万円(年収:400~630万円)
パート、アルバイトで働く場合
時給:1,000円~1,800円
上記のように、10年以上経験を積むと高収入も可能ではありますが、年収500万円以上を望む場合は管理職を目指す必要があります。また、言語聴覚士は人数が不足している職業であるため、地域や勤務先によっては良い待遇で受け入れられることもあります。
言語聴覚士に向いている人
言語聴覚士が担当する患者や利用者は感情を伝えるのが難しい方が多いので、その方が何を伝えたいのかに気付かなければなりません。そのためには、細やかな発音や、口の動き、動作などを見逃さない観察力や想像力、思いやりの心が必要と言えるでしょう。
「言いたいことが伝えられない」「美味しいものが食べられない」といった状態は大きなストレスであり、なかにはリハビリに前向きになれない人もいます。休憩をとりながらリラックスさせたり、明るく励ましたりと時間をかけて信頼関係を築いていくことが大事です。
また、言語聴覚士は小さな子どもから高齢者までを担当しますので、どんな人とでもコミュニケーションをとれる人が向いていると言えます。また、どのリハビリ職もそうですが、リハビリではなかなか結果が出ないことも多いので、根気強く関わる姿勢が求められます。
自分の技能を高める強い気持ちと、素直な気持ちが必要
言語聴覚士は医療にも関わっていく専門職であり、就職してからも常に自分を高め続ける努力が必要です。言語聴覚士は常に誇りと責任感を持って働くことが必要なのです。
また、何事にも素直に対応する気持ちも言語聴覚士にとって重要です。人間誰しも間違いや失敗は起こしてしまいます。万が一ミスが発生したときの迅速な行動が可能な人が言語聴覚士として重宝されます。
脳に対しても関心を持つ
言語聴覚士として、脳の働きや身体機能に関する幅広い分野や知識への高い関心を持つことも、キャリアアップで重要なポイントと言えます。
人間の身体機能は脳と大きな関係があり、脳の発達や障害の具合によって身体機能も大きく変わると考えられています。そのため、障害者などに対して言語のリハビリをしていくことを目的とする言語聴覚士にとって、脳との関係性を知るのは非常に重要なことであると言えます。
働きながら資格をとるには?
働きながら言語聴覚士への転職を目指す場合、短大や養成学校の夜間課程に通学する方法があります。「通信教育で取得できないの?」という質問を時々受けますが、残念ながら言語聴覚士の国家資格を通信教育のみで取ることはできません。言語聴覚士の資格を得るためには、指定の養成校に通うか、国に定められている条件を満たすことが必要です。
養成学校は2年制か3年制で、学費は300~500万円が中心です。追加で実習費や教科書代がかかる場合もあります。大きな出費にはなりますが、支援金や奨学金の制度を受けながら通学している人も多くいます。奨学金については学校ごとに応募資格や応募方法・選考方法があるので、説明会などの際に担当者に聞いてみましょう。
夜間課程でも実習は昼間に実施
夜間課程の授業は18時以降に開始するところがほとんどですが、実習は平日の昼間に行われます。そのため、昼間に仕事をしている場合は、実習が勉強を続けるうえでの大きな障害となります。実習の期間は1日や2日ではなく、数週間はかかります。実習は6週間ほど、長い場合には8週間程度かかることもあるので、昼間に仕事をしている場合は、無理をして時間を作る必要があります。そのためには職場での理解が必要ですので、働きながらの実習にはかなりの困難を伴うことになるでしょう。
勉強をする時間を確保することが大切
国家試験への合格のためには、計画的に勉強をしていく必要があります。学生時代のテストのように、一夜漬けやほんの少しの勉強だけで合格できるようなものではありません。仕事が忙しくて勉強ができない状況になってしまうと試験に受からないので、言語聴覚士として現場に出ることができなくなってしまいます。
言語聴覚士のスキルアップ
言語聴覚士の資格を持つ方でさらなるスキルアップを目指す方の専門資格として、認定言語聴覚士があります。この資格は日本言語聴覚士協会が運営するもので、嚥下・摂食障害領域をはじめとする臨床経験が満5年以上、協会が定める生涯学習プログラムを終了した方が対象となります。
認定言語聴覚士の資格は5年毎の更新が必要です。その間に日本言語聴覚士学会への2回以上の参加や学会発表などの条件を満たせば更新することができます。
言語聴覚士の就職・求人
自分に合った職場を見つける一番の方法は、希望の条件をしっかりと決めておくことです。医療施設を希望する方は、患者の状態により急性期、回復期、維持期それぞれのリハビリを専門にした募集もあるので、自分がどんな経験を積みたいのかを考えて選ぶことが大切になってきます。子どもを専門に考える方は小児病院や療育施設などがあります。
訪問の仕事に興味がある方は、訪問看護ステーションや訪問リハビリという選択肢があります。訪問の仕事には移動が伴いますので、事業所の地域の訪問エリアを確認し、通勤と移動だけで疲れてしまわないように気をつけたいところです。
介護施設は重度の要介護者が多い特別養護老人ホームや、自宅復帰を目標とする介護老人保健施設など、さまざまな特徴があります。どのような施設が自分に合っているかホームページの施設概要を見たり、事前に電話で見学をお願いするのもよいでしょう。
あとは、自分のこだわりポイントをリストアップしてみましょう。給与・賞与の額や社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険など)はどうか、私生活を大事にしたい方は年末年始や夏季休暇、完全週休2日やシフト制について、長く勤めたい方は雇用期間など、募集条件をよく見ておくことが大事です。応相談とあれば事前に尋ねてもよいでしょう。勤務地が最寄り駅から徒歩数分など、アクセスがよいところを希望する人も多いと思います。こういった条件になるべくズレがないことが、後々、勤務開始後に「こうじゃなかった…」となるのを防ぐことになります。
言語聴覚士の求人は、ハローワークや療法士専門の求人サイト、各施設のホームページなどから探すことができます。応募方法は電話、履歴書の送付、WEBからの応募がほとんどで、選考方法は面接、筆記、小論文などを実施するところが多くなっています。求人サイトでは自分の希望に合わせて細かく検索できますので、非常に便利です。しかし、募集期間や掲載期間が決まっています。更新日(最新公開日)の近い求人の方がまだ応募が少ない可能性が高いので、気になる求人があれば早めに応募しましょう。リジョブでも、東京、神奈川、千葉、埼玉など首都圏を中心に言語聴覚士の求人を掲載しています。
言語聴覚士の将来性
言語聴覚士の国家資格の合格者数は1500人前後と、ここ10年間で大きな変化はなく、理学療法士や作業療法士に比べて大きな増加は見られません。有資格者数約2万5千人に対して、言葉に関して何らかの障害を持つ人は日本に約650万人いると言われており、言語聴覚士の数は圧倒的に不足しています。
病院やリハビリテーションセンターはもちろん、近年では特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなどの介護施設など働く場所は増えています。介護施設では、主に上手くかめない、飲み込めないなど食事面のサポートが必要とされています。
また、最近ではリハビリに特化した機能訓練特化型デイサービスが増えており、このような施設では機能訓練指導員として言語聴覚士を多く募集しています。しかし中途・新卒者ともに募集人数は若干名というところが多く、人気のある施設では競争率が高くなる場合もあります。
職業としての認知度は高まっている
言語聴覚士の認知度向上に伴い、新しい価値観が生まれてきます。
かつては言語や口腔と直接関わりのある仕事がメインとなっていましたが、認知度が高まってきたこれから先は、より幅を広げながらその専門性を発揮することになるでしょう。
近年、医療現場で「チーム医療」の必要性が認められており、医療の世界では他の専門職スタッフとの情報共有が要となっています。また、他職種の情報を集めて総合的に患者さんを診ていくことが望ましいとされており、医療従事者としての言語聴覚士が更に必要とされる時期に来ているのです。
変化に対応することが求められる
言語聴覚士は前述のような変化に対応することが求められますし、自分の強みを生かしてより広い視野で患者さんと接する必要があります。
言語聴覚士の魅力
高齢化社会に伴い、国は医療保険から介護保険への移行を進めています。現在は大半が医療現場で働いていますが、今後は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションのような介護保険領域でも言語聴覚士が活躍する場所は増えて行くでしょう。
言語聴覚士は女性が多い職業です。そのため産前産後休暇や育児休暇などの福利厚生を活用できる環境にある職場が多いです。また、託児所を併設している施設も多いことから、出産後も仕事を続けたり、経験者として復職が可能なのも言語聴覚士の魅力です。
また、勤務時間は日中で、勤務形態は正社員やパート、アルバイトなど選ぶことができます。子育てや介護など家の事情がある時は非常勤で働いて、また働けるようになったら常勤に戻るといったフレキシブルな働き方もできます。専門性の高い職種という魅力もあり、看護師や医療事務など他の職種から言語聴覚士を目指す人もいます。
「活躍の場が増える」「女性に優しい」など、待遇について書きましたが、やりがいとして大きいのは仕事でしょう。まったく発声ができなかった人が言語聴覚士に相談し、訓練を経てわずかでも、声を発することができるようになった時、この感動は他の職種ではなかなか味わうことができません。
言語聴覚士は食事のスペシャリスト
食事のサポートについては、理学療法士や作業療法士など他のリハビリ職と比較して、言語聴覚士が一歩リードした役目を発揮できるといえます。当然、食事は口を動かして行うことであり、言語聴覚士は同じく口を動かす言語に関する専門的知識を生かせる上、訓練のなかにも取り入れることができるのです。
しかし、簡単そうに見える食事のサポートですが、実は簡単ではないのです。もちろん言語聴覚士であっても例外なく食事サポートの練習や経験が必要ですが、言語聴覚士にはその経験を積む現場がほかのリハビリ職よりも多いのが利点です。 また、食事に関することを看護師に指導、助言をすることがありますが、食事サポートの経験を積む機会が多い言語聴覚士は有利と言えるでしょう。他の医療職がカバーしにくい食事の面で、言語聴覚士が大きな力を発揮することができるという点は言語聴覚士の魅力と言えるでしょう。
他の専門職の専門的な知識を手に入れる機会が多い
言語聴覚士は、業務で他の医療職との関連性があるため、他分野の知識を手に入れることができる場面が多い点も魅力です。 食事訓練においても、看護師など複数の医療関係者と連携する場面がたくさんあるため、他の人が気づけない点をサポートしつつ、他分野の知識を深める貴重な体験ができます。
話すことだけでなく、飲み込みや食べることについてのエキスパートである言語聴覚士。これからの超高齢社会に必要な職種といっても過言ではありません。これからのキャリアプランの一つとして考えてみてはいかがでしょうか。