【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事vol.3】秘書からヨガインストラクターに。 磯沙緒里さんが転身したきっかけ
柔道整復師、鍼灸師、整体師など、近年、健康意識が高まるにつれてさらに注目を集めている「ヘルスケア業界のお仕事」にフォーカスした新企画がスタート。
今回は、プロポーションの維持だけでなく、精神的な豊さも与えてくれるヨガを教える「ヨガインストラクター」の幅広い働き方をご紹介。
都内スタジオでヨガのレッスンを行うほか、ヨガコンテンツのコラム執筆や監修、ヨガイベントプロデュースも手掛ける磯沙緒里さん。その道を志したきっかけや、ヨガインストラクターの幅広い働き方についてお聞きしました。
教えてくれたのは…
磯 沙緒里さん
ヨガインストラクター。幼少期よりバレエやマラソンに親しみ、体を使うことに関心を寄せる。長期的にみた体調管理の方法を模索していたところ、ヨガに出会う。会社員生活のかたわら、国内外でさまざまなヨガを学んだ後、ヨガインストラクターの道へ。現在は、スタイルに捉われずに楽しんでもらえるよう、暮らしに寄り添うヨガを提案。都内スタジオでレッスンを行うほか、ヨガコンテンツ監修やコラム執筆、ヨガイベントプロデュースも手がけ、活動は多岐に渡る。
URL:http://saoriiso.com/
ヨガに夢中になる一方で、社会性が身につく会社員の仕事も兼業
―はじめに、ヨガとの出会い、そしてヨガ講師を目指したきっかけを教えてください。
子どもの頃からバレエやマラソンなど、体を酷使するようなスポーツをしていたので、もともと体調管理にはすごく興味がありました。身体に良さそうなあらゆることをしてみようと、いろいろ試した中でヨガに出会い、効果をすごく実感できたので20歳くらいからヨガを始めました。そのときはヨガ講師を特に目指してはいなかったので、他の仕事をしながらレッスンに通う日々を送っていました。
―長年、ヨガをされていたのですね。ヨガ講師はセカンドキャリアということですが、
以前はどんな仕事をされていたのですか?
大手企業の社長秘書や著名な方の秘書をしていました。秘書はつく方の要望に応えるのが仕事。一般的にイメージされるスケジュール管理や会食などのセッティング、事務全般のほかに求められれば会食に付き合うこともありましたし、お子さんがいらっしゃる方でしたらお子さんをみることもありました。大企業は決まりがあるのでプライベートのお付き合いはないんですけれども、個人の方のときは、仕事とプライベートとをあまり区切らず、求められることはできる限り応えるようにしていました。
―求められる幅がとても広いですね。
ヨガ講師としての一歩は、どのように踏み出したのでしょうか?
数年はヨガのレッスンを受けているだけでしたが、ヨガについてもっと知りたいと思うようになり、ヨガ指導者の養成コース「RYT200」を受ける流れになりました。秘書をしながら資格を取ると、次は友人から「資格を持っているなら教えて」と声をかけてもらうようになって。最初は、週末を利用して友人が暮らすマンションの屋上や集会室で、住人の方や友人にヨガを教えていました。私はまだとても未熟だったので、それをわかったうえで来てくれているのでとてもありがたかったですし、そのおかげで少しずつ指導者としての経験を積むことができました。
その後も教える場をいろいろな人が提供してくれて、そういった意味ではとても恵まれていたと思います。強い意志を持って講師になったというよりは、長年じっくりといろいろな方に支えられ、後押しされて「じゃあ、教えてみようかな」という感じだったので、ひとりで行き進んだというよりは、周りの方のサポートがあってこそ踏み出せた一歩でした。
―秘書の仕事とヨガ講師を兼業されていたのですか?
はい。秘書の仕事は一般企業の方と触れ合う機会が多く、そういう中で学ぶこともたくさんありましたし、自分の社会性が認められているのを実感できていたので辞める必要性をあまり感じなかったんです。一つの仕事に絞らなかったのが私の強みでもあったというか、ヨガはすごく楽しいんですけれど夢中になればなるほど、視野が狭まりがちだったときもあって。ヨガだけでは浮世離れしてしまいそうだったので、意識的に世間と関わっていたいなと思い、秘書をしながら空いている時間にヨガ講師をするという働き方を3年くらい続けました。
―実際に現場に入って気づかれたことはありましたか?
最初は友人の知人ということもあり、指導経験が浅いことをお伝えした上でレッスンできましたが、そこから大きな仕事が増えてくるにつれ、思っていたよりタフでないといけないんだなと思いましたね。心身共にですけれども、特に精神的にどんな状況でも現場に行ったら対応しないといけない。また、手違いで用意されていないものがあっても、その場で何とかしなければいけないですとか、臨機応変にしなければいけないことがたくさんありました。大きな仕事を任されるたびに、『初めての現場』が増えてくるので、見たことのない環境の中でうろたえずに、こちらはあくまでも安定した状態でレッスンを提供しなければいけないのが想像よりも大変だなと感じました。
―現場でうろたえないようにするために、普段から心がけていたことなどはありますか?
緊張しないようにすることですね。緊張するのは、自分に過度な期待をかけているからだと思うんです。「今、自分がもっているものしか出せない」と常に思うようにして、そのためにも普段から練習や勉強はもちろん欠かせずに行ない自分を信じられるように努めました。それでも現場に行く前に緊張しそうになったら、「もう何を足掻いても無駄なんだから」という心持ちで自分の気持ちに向き合いました。
相手の立場を理解し、要望にフレキシブルに対応
―ヨガイベントのプロデュースもされていますが、
どのようなきっかけで始めたのでしょうか?
「品川シーズンテラス」がオープンしたとき、ヨガイベントの講師として呼んでいただいたんですが、オープンしたてということもあり、イベントの認知度が低くて集客がとても難しかったんです。イベントの運営者や現場のスタッフと話しながら、質問にお答えしたり、いろいろアドバイスをしたりしているうちに、プロデュースをお願いできませんかという流れになって。品川シーズンテラスでのヨガに出演し始めて努め2年目ぐらいだったと思います。
―初めてのプロデュース業、ノウハウなどはどうされたのでしょうか?
初体験でしたが、生徒さんには自分がレッスンを受ける立場で経験してきたことが役立ちますし、クライアントの企業がいる場合は、自分が企業の中にいたときに外に求めていたことがわかったので、双方の立場を経験したことが大きいですね。また、計画性や調整力など、プロデュース業と秘書の仕事って大事なことがとても似ているんです。
例えば、今はイベント調整をしている時期なのですが、講師だけでも一度に20人ぐらいとのやり取りをずっと続けなければいけません。スケジュール調整だけではなく、出演してもらう講師それぞれに求めることが違うため、講師のプランに合わせて対応を変えたり、講師の希望と主催側の企業の希望を擦り合わせたりしています。その時だけ、講師たちの秘書になったつもりでやっているんですね。ですから秘書のときと心持ちは同じ。
ほかにも現場の状況を見ながら臨機応変に振る舞うのも秘書時代に身に付いたのだと思います。それと文章を書く作業ですね。講師にイベントのレッスン内容をテキストでいただくのですが、講師によってはそれが苦手。あまり魅力が伝わらなかったりするので、そこを掘り下げてレッスンの魅力を引き出した文章を作ることも時にはあります。
―秘書時代に培った経験があらゆる面に通じていますね。
それぞれの業務内容と1日のスケジュールを教えていただけますか。
講師の仕事は、レギュラークラスのレッスン、ヨガのコラム執筆、ヨガ雑誌の出演、広告出演、YouTubeでヨガ動画配信などです。イベントプロデューサーは、イベントの構成、講師の手配、協賛企業とのやりとり、現場を監督するなど、ほかにもいろいろあります。どちらにも共通するのは、事務作業や経理、メールのやりとりですね。
今はイベントがオフシーズンなのでこの生活ですが、春から秋にかけてイベントが始まるんですね。イベントが入ってきたら、夜、子どもを寝かしつけた後、母か夫にバトンタッチして、もう一度イベントの仕事に出かけます。まだ子どもが幼いので周りの理解と協力があって続けられているのでとても感謝しています。
ナイトヨガなどのイベントが増える時期はとても多忙になるという磯さん。多岐に渡る業務をそつなくこなしている背景には、秘書時代に培ったスキルが垣間見ることができます。次回は、ヨガ講師の魅力や子育てと仕事の両立、これからヨガインストラクターを目指す方へのアドバイスをお届けします。
取材・文:長井麻記
撮影:中村 早
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