【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.17】愚痴っぽい・話が長い…面倒に感じる利用者への対処法は?
日々様々な利用者と接する介護職。人の数だけ、楽しさや面白さはもちろん、困りごとにも直面します。「こんな時、どうしたらいいの?」と思っても、忙しさの中で、先輩や同僚に聞きづらい…という方もいるのでは? 当企画では、そんな方のために、介護の現場で起こりがちな困りごとの対処法をご紹介します。
他の入居者の悪口を何かにつけて言ってくるNさん。正直、面倒くさい…。
老人ホームで暮らすNさん(70代・女性)。攻撃的なところがあり、愚痴っぽい性格で、何かにつけて他の利用者の悪口を言ってきます。この日も、食事の片づけをしていたスタッフに「まったく! Hさんはイライラする!」と訴えてきました。
「どうしましたか?」と聞くと、「食事中に食べながら話すから、食べ物が飛んで汚いのよ!」とのこと。「気を付けるように、伝えておきますね」と返すと、「あんたに話してもしょうがない!」と別のスタッフを見つけて同じことを訴えています。
これでは矛先が別のスタッフに移っただけ。根本的な解決にはつながりません。それでは、こんな利用者にはどう対処するのがよいのか、ポイントをおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:まずは耳を傾ける
愚痴とはいえ、スタッフに訴えてくるということは、単に話を聞いてほしいだけではないと考えた方がいいでしょう。背景には『寂しい』、『辛い』といった感情が隠されていることも視野に入れておくべきです。その上で耳を傾け、本音を探っていきましょう。もしかすると、「私にも注目してほしい」という思いの現れなのかもしれません。
ポイント2:感情を言葉に置き換え返しながら聞く
いくら耳を傾けても、ただ愚痴を聞くだけでは本音を引き出しにくいもの。このような場合には、相手の感情を言葉に置き換えながら、問いかけるように受け答えするのがおすすめです。
例えば、「イライラ」を「腹が立つことがあったんですか?」、「汚い」を「汚れるのがイヤだったんですね」のような置き換えです。会話の中で相手の感情を明確化していくことで、聞いている介護職はもちろん、愚痴っている本人も感情を理解しやすくなります。
気持ちを受け止めてもらえるだけで利用者も落ち着く場合もありますし、本音が見えることで、具体的に対処すべきことが分かることもあるはずです。
愚痴っぽい利用者へやってはいけない2つのこと
1.「仕方ない」「我慢しましょう」で片づける
2.利用者の感情を決めつけてかかる
話が長かったり、愚痴っぽかったりする利用者に声をかけられると、「つかまっちゃった…」というのが本音かもしれません。忙しい時なら尚更でしょう。しかし、様々な要因から高齢になるほどそうなってしまう人は多いですよね。なので、このような利用者への対処法を身につけておくことは、介護職としての力になるはずです。一つひとつ対処していくことで、頻度が減る可能性もあります。本音に耳を傾けることを大切に、利用者と向き合ってみてはいかがでしょうか。
文:細川光恵
参考:「相手が求めていることを聴き取れますか? 介護の聴き方タブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。