キャリア中断で失った自信を、絆の力で取り戻す!【アルソス主宰 林 直子さん】#2

ある特別な体験から、まったく想像もしていなかった道を歩むことになった林 直子さん。セラピーとは無縁の生活から大転換して、当時はまだあまり知られていなかったリフレクソロジストとしてキャリアをスタートしました。ところが、度重なるパートナーの転勤で、ご自身のキャリアが思うように築けない悩みに直面しました。

後編では、妊娠、子育て、親の介護問題にどう向き合ったか、再びセラピストとして活動するときにどんなサポートがあったのか、ご自身のサロンを開いた理由についてお話を伺います。

子宝に恵まれ、育児に奮闘。そこへ実母の介護も!

結婚後は群馬、松山、川崎、熊本とパートナーの転勤で各地を転々としたとか。

――川崎から引っ越して、熊本での生活はいかがでしたか?

夫との二人きりの生活に慣れて、もう子どもは授からなくても良いか…と思い始めた頃に妊娠が分かりました。結婚するのは早かったんですが、子どもを授かるまでに8~9年かかっているんです。

――そうだったんですね。

育児に時間が取られなかったので、じっくり勉強する時間があったんですね。結婚後すぐ子どもが産まれていたら、あんな風に遠距離をおして勉強することはなかったと思います。

――お子さんが生まれると育児に時間が取られちゃいますよね。

そうなんです。子どもが産まれてからも、トリートメントは続けていました。人の身体に触り続けるのは大事なことですから。自分のセラピストとしての気持ちを途絶えさせないためにも、必要なことでした。

ベビーマッサージもしていたんですよ。息子が3歳になるまで毎日続けていました。

――なんと贅沢な!

今、大学生になりますが、フットサルに夢中で身体に疲れが溜まると「マッサージして」って、このベッドにゴロンと横になってます。身体に触れられることに抵抗がないみたいですね(笑)。

――この鎌倉に戻ってきたのはどんなタイミングですか?

母が倒れてしまったのがきっかけです。夫も息子も、私が母と暮らした方が良いと言ってくれて。それで息子と私だけこちらに戻ってきました。

――息子さんはお友だちと離れるのを嫌がりませんでしたか?

ちょうど小学校に上がる年齢だったので、切りが良かったんです。夫もしばらくこちらで生活していましたが、辞令が出て今も単身赴任しています。

セラピストとしてのブランクを埋めてくれた人との繋がり

マッサージで使用するオイルは、お客さまが選んだ精油をブレンドするそう。

――育児にお母さまの介護が加わって大変だったのでは?

生活をするのにちょっとしたサポートが必要なだけで、ずっとかかりきりでなくても大丈夫なんです。母も私がじっと家に籠もっているような生活を望んでいませんでしたし。

――では、またセラピストとしてお仕事を再開?

熊本で生活している間も細々とマッサージをしていましたが、仕事として再開するには不安がありました。

それで介護と育児の合間にスクールに通って、ホリスティックセラピーや表情筋再生トリートメントなどを学ぶようになりました。

――さらに学びを深めたんですね。

「いろんなことを学んでいるけれど、私は本当に必要とされているんだろうか」という想いは常にありました。私はセラピストとして仕事をしたいけれど、「求められているのか?」と思うと、踏み出す勇気がありませんでした。

――ブランクが空いてしまうと、そうかもしれません。

美容やセラピーとは全く関係のない派遣の仕事で、調剤薬局に出向くことがありました。ある薬局にアロマオイルが置いてあって、「薬局にアロマ?」と思ったんです。スタッフに聞いたところ、オーナーがアロマセラピーが好きでお店にも置いてあったそうです。

――たしかに西洋医学の薬局にアロマは似合わないですよね。

その薬局の責任者が私の接客を気に入ってくださったのか、「うちでアルバイトをしませんか」と誘ってくださったんです。そこで接客をしたり、事務補助的な仕事をしたりしていました。しばらくして「実は私セラピストなんですよ」とお話ししたら、「じゃあ、希望するお客さまにハンドマッサージをしてください」とおっしゃってくださって。

――すごい幸運!

薬局にいるので、こんな病気にはこんな薬が処方されるとか、どんなことでお困りなのかとか、いろんなことを学ぶことができました。健康な方がいらっしゃるサロンでは、なかなか体験できないことばかりで、とても勉強になりました。

――ご自宅をサロンにしたのはどのタイミングで?

コロナですべてがストップしてしまった時期ですね。勤めていた薬局では、老人ホームのお年寄りに薬では解決できないことを私のマッサージで和らげてはどうか…という企画まで立ててくださったんですが、コロナで全て立ち消えになってしまいました。

――コロナはいろいろな意味で「きっかけ」になりますね。

本当に私を求めて来てくださる方のためにトリートメントをしたい、と心から思えるようになったんです。もともとこの家の1階はサロンを開いてもいいように、準備はしていたので、あとはお客さまをお招きするだけでした。

――こちらでは、どんなトリートメントを?

私が一番やりたかったのは、お客さまの状態に合わせた施術法を自由な時間配分でやることです。それにせっかくここ、鎌倉までいらしてくださるんだから、お帰りになるまで楽しんでいただきたいんです。海を見たいとか、美味しいものを食べたいとか、ドラマのロケ地を見たいとか。お望みがあればご案内しています。

――すごい!究極のフルトリートメントですね。

ですから1日お一人限定です。

一日に何人もトリートメントして、ガンガン利益を上げて…というのは私のタイプではありません。どちらかと言えば落ちこぼれなのかも(笑)。

――心も身体も満足できますね。

サロンにいらっしゃるのは病気を抱えている方ではなく、ちょっとした不調を何とかしたい方。しかもご自身の力で何とかしたいと思っていらっしゃる。だから、最初に施術で使う香りをいくつか選んでいただくんです。例えば「普段はラベンダーが好き」という方でも、その日の体調や気分で好みが変わります。そこが面白い。ご自身で選んだ香りで、ご自身の力で元気になってお帰りになる。その場に立ち合えるのが幸せです。

――これからこの業界を目指す方にアドバイスをお願いします。

ただ香りが好き、トリートメントが好きだけでは一方通行です。まずは人が好きであることと、その方に興味が持つことからセラピーは始まります。その方が何を求め、何を大事にしているのかを察していくと、不思議と不調の原因が見えてきます。洞察力を鍛えるには、まず自分という人間をしっかり見つめ、理解し、管理すること。これが人をケアするうえで大切なことだと思っています。

林さんの成功の秘訣

1.続けられる環境が整わなくても、肌に触れる機会をつくること。

2.自信を失っても諦めず、学びを深めて時機を待つこと。

3.自分が何をやりたいのか、明確なビジョンを描くこと。

撮影/森 浩司


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アルソス
電話:090-8502-4028

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