仲間と築き上げた場所を守るため。1,800万円の借金まで引き継ぎ、会社経営を決意【美容師 島崎祐介さん】♯2

髪質改善を看板メニューに掲げ、都内を中心に美容室7店舗を展開する「terrace」。

そのグループを率いるのが、代表取締役の島崎祐介さんです。

前編では、アルバイトで生活費をまかないながら通った美容専門学校時代や、新人時代のエピソード、イギリスで得た学びや気づきなど、美容師としての原点を伺いました。

後編ではその後の島崎さんのキャリアについて伺います。

やっとサロンの運営が軌道に乗り、黒字化にも成功した矢先、オーナーの不正が発覚。一緒にサロンを盛り上げてきた仲間が次々と辞めていくのを、島崎さんは見ていられなかったといいます。

サロンと仲間を守りたいという思いと同時に、以前から抱えていた「美容師の働き方を改善していきたい」という強い思いで、会社の経営を引き継ぐ決意をしたそうです。

お話を伺ったのは…

島崎祐介さん

terrace

代表取締役

兵庫県出身。都内美容専門学校で美容師免許を取得後、大型店に就職。23歳で技術を磨くために渡英し、現地サロンで経験を積む。帰国後、26歳で前オーナーから経営を引き継ぐ形で独立。「terrace」を設立し、1,800万円の借金を肩代わりしながらも4ヶ月で黒字化に成功。現在は7店舗を展開しながら、YouTubeチャンネルの運営など発信活動にも力を入れる。

インスタグラム:@yusuke_shimasaki
YouTube

仲間を守り、「ないものづくし」の業界を変えたいと下した決断

黒字化に成功した矢先、順調な日々が一転したという

――店長として働いていたサロンの経営を引き継いだとお聞きしました。それはなぜですか?

店舗は黒字化し、店舗運営は順調でした。ところがオーナーの不正行為が発覚し、スタッフが次々と辞めてしまったんです。

お客様がついていたスタッフも多かったですし、仲間と一緒に築いた場所をゼロにしたくないという思いから、自分が経営を引き継ぐことにしました。その際、会社が抱えていた1,800万円の借金も引き継がなければならなくなってしまって。

――よく決断されましたね。

はい。当時は独身でしたし、とりあえずやってみるかという気持ちでしたね。もし自分の給料が少なくなっても、独り身ならなんとかなるだろうと。また挑戦しようと思ったのにはもうひとつ理由があったんです。

――どんな理由ですか?

当時の美容師というのは給与も休みも少なく、社会保障も整っていない。まさに「ないものづくし」の仕事でした。それをなんとか変えたいという思いが、経営者になろうという気持ちを後押ししたんです。

当時のアシスタントは、手取りが10万円ほどというケースも少なくありませんでした。みんな美容師の仕事が好きだからなんとか堪えているけれど、そういう人たちが報われないのはおかしいと思ったんです。

メディアに出るようなトッププレイヤーだけでなく、「普通」に働く美容師も、豊かな生活を送れるようにしたい。そんな環境をつくることが、自分が経営者を目指した大きな理由でした。

――具体的にはどんなサロンを目指したのですか?

業務委託サロンと、正社員が働くレギュラーサロンのいいところ取りをしたサロンです。当時は「業務委託なら稼げるが保障がない」、「レギュラーサロンは保障はあるが、稼げない」というのが業界の常識でした。業務委託のように稼げて、レギュラーサロンのように安心して働ける、その両方を実現したいと思ったんです。

1店舗目は新宿にオープンし、業務委託制を導入。2年間は免税期間だったので利益も出しやすく、運営を安定させることができました。経営を引き継いでから4ヶ月で黒字化を成功することができたんです。

その後、町田に業務委託とレギュラーサロンのハイブリッド型の店舗を出店。さらに銀座、新宿へと展開を広げ、4店舗目ではやっとスタッフ全員を社会保険に加入させることができました。

――理想のサロンを少しずつ形にしていったのですね。具体的にはどのようにして実現したのでしょうか。

何かひとつの施策で、劇的に効果が出たというより、1人ひとりのお客様に丁寧に向き合い続けたことでだんだんと結果につながって行った感じでしょうか。

お客様の数を多く回すスタイルではなく、技術もサービスも高めて、スタッフにもしっかり還元していく。その積み重ねで客単価も上がり、今ではオープン当初の約2倍である1万円前後になりました。

アシスタントで辞めてはもったいない。アカデミー制度で早期デビューを実現

島崎さんが立ち上げた「teracce」は、アカデミー制度も備えているのが大きな特徴

――アカデミー制度も作ったそうですね。

はい。美容業界で「もったいない」と感じていたのが、アシスタントのうちに辞めてしまう人が多いことです。美容師の本当の楽しさを知る前に辞めてしまう、それが業界の課題だと感じていました。

下積みの期間ももちろん大切ですが、私自身、アカデミー制度を通じて早くデビューできたことで、美容師の楽しさを知り、続けることができたと感じています。だからこそ若手美容師にも「まずはスタートラインに立つ」経験をしてほしいと思いました。

――アカデミーはどのように運営されているのですか?

アカデミーも一気にではなく、少しずつ形にしていきました。最初は銀座店の営業時間中に練習時間を設けていましたが、どうしてもお店が忙しいと練習が中断してしまうんです。そこで3年前、新宿にアカデミー専用のサロンを設立しました。

平日は週3日、1日8時間みっちり練習。土日はサロンワークに入り、半年ほどでスタイリストデビューできるといったカリキュラムです。

早期デビューによって仕事の楽しさを感じられる人が増え、離職率の改善にもつながっています。

好きな仕事に、誇りと責任を感じて

仕事観について伺うと、島崎さんの美容師という仕事への思いが浮き彫りに

――経営経験はなかったということですが、どのようにして乗り越えてきたのでしょうか?

やはり、動かなければ何も得られないと思っています。問題に直面したときは、まず情報を集めたり、勉強したりする。マネジメントの経験もそこまでなかった26歳のときに経営者になったので、なおさら学び続ける必要がありました。

そしてその問題をしっかり受け止めて、状況に合わせて柔軟に対応していくことを大切にしてきたんです。

うまくいったことも、いつまでも同じ形では通用しない。だからこそ、恐れずに変化させていく勇気が必要だと思っています。

――経営者として、心がけてきたことは?

自分が働きたいと思える会社であること、そして将来自分の子どもを働かせたいと思える会社であること。このふたつは常に意識してきました。

また、お客様への感謝を決して忘れないようにしています。お客様が来てくださらなければ、私たちの仕事は成り立ちません。そして感謝を忘れてしまえば、どんな人気のサロンでも、それは一時的なものになってしまうと思うんです。

感謝の気持ちを原点に、お客様に喜んでいただける環境作りを、これからも続けていきたいと思います。

最近はサロンワークを週2回ほどに減らしていますが、それでも10年以上通ってくださるお客様も多く、「サロンワークを辞めないでね」と声をかけていただくことがあるんです。お客様との関係が長く続いていくことは、美容師として何よりの喜びだと思っています。

――島崎さんにとって、働くこととは。

僕にとっては、「誇り」と「責任」を感じられることです。美容師の仕事は何年続けてもやはり楽しく、好きなことを仕事にできていることに誇りを持っていますし、スタッフを雇う経営者としての責任も強く感じています。

今後もスタッフが育ち、お客様が増えたタイミングで店舗展開を進めていきたいです。お客様とスタッフへの感謝を忘れず、地に足をつけながら、一歩ずつ成長を続けていきたいと思います。


多額の借金を背負うことになっても、仲間と築いたサロンを守る道を選んだ島崎さん。美容師という仕事に真摯に向き合い、真っすぐに歩んできたことが伝わってきました。感謝を忘れず、誇りを持って働く姿勢が、次世代の美容師に勇気を与えてくれるはずです。


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terrace銀座店
住所:東京都中央区銀座3-4-6 正隆銀座ビル3F

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