美容室はお客様の指示通りではなく、お客様に合うスタイルを提案する場所。教わった大切な姿勢「gite 渋谷店」 菊さん

渋谷、原宿、横浜、福岡に4店舗を展開する「gite」。オーナーを務める浜口ユウイチさんは縮毛矯正の技術講師としても活躍しており、高い技術を誇るサロンです。

その渋谷店に新卒採用で入社し、現在は入社8年目となるのが店長の菊さん。美容専門学校在籍中の就活では2社連続で不採用となり、一度は就職活動を止めていた時期もあったといいます。

その後、卒業目前にたどり着いたのが「gite」。採用から２、３日後には新卒採用として働きだしたそうです。技術を身につけるまでは苦労をする人が多いアシスタント時代ですが、菊さんは起こっていることを受け入れる力が強く、大変なことがあっても乗り越えることができたといいます。

今回、お話を伺ったのは…

「gite 渋谷店」／店長・スタイリスト

菊さん

福島県出身。東京の美容専門学校を卒業し、2018年4月に「gite」へ入社。2023年には渋谷店の店長となり、現在は渋谷と横浜の2店舗でスタイリストとして活躍中。縮毛矯正、髪質改善の高い技術でお客様からの信頼を集める。趣味はお酒を飲むこと。

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「想像がつかない」面白さ。美容師にかけてみると決めて

――美容師になろうと思ったきっかけは？

自分で髪を切ったときに、周りから褒めてもらったことがきっかけでした。子どものころ、母がよく行くパーマ屋さんで髪を切ってもらっていたのですが、毎回、前髪を切られすぎてしまうんです。

それが嫌で仕方がなかったので、そのパーマ屋さんに行く直前に自分で前髪を切るようにしていました。その後も友達の前髪を切ったりしているうちに、周りから褒めてもらうことが増えて、徐々に美容に対する興味が湧いていきました。

――そこから美容師を目指すことになったわけですね。

ただすぐに美容師になろうと気持ちが固まったわけではなくて、高校卒業後は地元で就職をしようかとぼんやり考えていた時期もありました。私は福島県の出身で、地元では高卒の就職先というとだいたいが工場になります。その未来を想像してみたときに、先が見えたような気がしたんです。工場勤務が悪いというわけではなくて、私には合っていない、未来が広がっていかない気がしました。

一方で美容師の仕事はどんな体験が待っているのか、どんな未来が待っているのか、当時の私には想像もつきませんでした。そしてそれが面白そうだとも思い、美容師を目指してみることに決めたんです。東京にはことあるごとに遊びに出かけていた影響もあって、美容師になるなら東京でと思っていたこともあり、美容専門学校から東京に上京することにしました。

2回連続の不採用を経験。偶然の出会いで、卒業目前に内定を獲得

――美容専門学校を経て「gite」に就職されたと思いますが、このサロンを選んだ理由は？

偶然の出会いという感じでした。私は美容学生時代の就職試験で2回連続、不採用となってしまって。心が折れて、そこから卒業間近まで就職活動をストップしていた時期がありました。

そんなときに友達と一緒に遊びに行ったクラブで、遊びに来ている女の子のヘアセットを行う「gite」のヘアブースが出店されているのを見つけたんです。そこで私もヘアセットをしてもらった際に代表のカワムラと知り合い、その後お店で髪の毛を切ってもらったことがありました。

――それが、「gite」を知るきっかけになったということですね。

はい。そのときに就活がうまくいかず、まだ就職先が決まっていないとお話ししたところ、「じゃあ、うちの会社を受けてみない？」と言われて。声をかけてもらったのがうれしかったですし、ご縁も感じたので、応募をすることに決めました。

「gite」の歴史のなかでも異例なことだったと聞いていますが、当時新店の出店準備で幹部が忙しかったため、履歴書を確認してもらっただけですぐに採用が決まりました。確か3月29日くらいに履歴書を持参して、数日後には入社をするという形でしたね。

2年に及ぶ、社長の専属アシスタント経験。大切な姿勢を吸収

――入社後はどんなことを感じましたか。

できないこともたくさんありましたし、怒られたこともありましたが、自分ができていないのだから当然だという思いが強かったです。だから、目の前にあることにしっかりと取り組むようにしていました。

私はいつもそうなのですが、受け入れの耐性が強すぎて、「こうして」と言われたことは何の疑問も抱かずに従っていたため、すべてのことを「こういうものなのかな」と受け入れていました。それもあって、辛さを感じたりしたことはあまりありませんでしたね。

――新人時代に印象深かったことを教えてください。

社長である浜口の専属アシスタントを2年担当させてもらったことです。多くのサロンではカリキュラムを終えると技術チェックを受け、その先に進んでいく形だと思いますが、うちの会社は技術チェックの機会を設けておらず、カリキュラムを終えれば先に進んでいくことができます。

その代わり先輩につきながらサロンワークのなかで技術を身につけていくということを大切にしているんです。ですから浜口の近くでサロンワークや技術について学べたことは、大きな財産となりました。

――学んだことのなかでもとくに印象的だったことはありますか。

お客様の細かい部分までよく見て情報を得て、それを元にお客様が気に入るような提案をすることです。浜口は分析力がとても高いんです。お客様を観察して全体像を引きだし、最適な提案をします。そしてそれがお客様に本当によく刺さり、喜ばれている姿を間近で見てきました。

浜口がよく言うのが、「美容室というのはお客様が指示した通りに髪を切る場所ではなくて、お客様に合うスタイルを提案する場所なんだ」ということです。合うスタイルを提案するためには、お客様を知ることがとても大切で、お客様の座り方、話し方、服の着こなし方など、私が「そんなところまで！？」と驚くような細かい部分にまで目を向けていました。

浜口は技術に対してはとても厳しいですが、美容師として大切な姿勢を教えてもらったと思っています。　

――「gite」は縮毛矯正の技術を強みとしたサロンですが、技術習得についてはいかがでしたか。

私のなかでは好きな技術だったので、あまり抵抗感なく身につけることができたと思います。「gite」には縮毛矯正の技術を得意とする先輩が多く在籍しているので、浜口の技術をベースにしながらも、さまざまな縮毛矯正の方法を目にすることができました。結果的に私は浜口の方法をそのまま取り入れていますが、自分に合った施術方法を先輩から伝授してもらえるのも「gite」の強みではないかと思っています。

後編では菊さんが新人時代に壁だと思った点について伺います。起こったことを受け入れる耐性が強いという菊さんは、大抵のことであれば「寝て忘れてしまう」といいます。しかしストレスが過剰にかかっていたデビュー直前の時期は、その性格が災いし、円形脱毛症を経験してしまったそうです。

また新人時代に「キャラ設定」の大切さを学んだという菊さんに、その真意も伺いました。