男性でも歯科衛生士になれる?女性より少ない理由は?目指すメリットと今後の需要も紹介
かつて「歯科衛生士=女性の職業」というイメージが根強くありましたが、近年では少しずつ男性の進出も見られるようになっています。とはいえ、現在も男性歯科衛生士は全体のごく一部に過ぎず、実際の人数は非常に少ないのが現状です。
そこでこの記事では、男性でも歯科衛生士になれるのか、なぜ少ないのか、そして目指すメリットや今後の需要について詳しく解説します。歯科衛生士の仕事に関心のある方はぜひ参考にしてください。
男性でも歯科衛生士になれる?

冒頭でもお伝えしたように、男性でも歯科衛生士になることは可能で、少しずつではありますが、歯科衛生士資格を持つ男性も増えています。
歯科衛生士会に加入する15万1,777人に対する調査において、回答した5,385人のうち男性は19人。その割合はわずか0.4%で、99.5%以上が女性です。ただし、回答数が少ないため、実際にはもう少し差が狭まる可能性もあります。
令和4年就業構造基本調査によれば、全国で歯科衛生士として働いている男性は200人となっています。数は非常に少ないものの、男性歯科衛生士が存在しないわけではなく、歯科衛生士は女性だけの職業ではありません。
引用元
日本歯科衛生士会|歯科衛生士の勤務実態調査 報告書
e-Stat|職業、従業上の地位・雇用形態・起業の有無別人口(有業者)-全国
歯科衛生士養成機関の男子学生数は増加傾向
全国歯科衛生士教育協議会が実施した調査によると、歯科衛生士養成機関に通う男子学生は、長期的には増加傾向にあります。年度ごとに多少の増減があり、令和6年は116人、令和7年現在は105人が歯科衛生士を目指して学んでいます。
引用元
口腔保健協会|全国歯科衛生士教育協議会-歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告
男性の歯科衛生士が少ない理由

男性歯科衛生士が少ない理由には、かつての歯科衛生士法が関係しています。歯科衛生士法が制定されたのは昭和23年(1948年)です。それから7年後の昭和30年(1955年)に法改正がおこなわれ、歯科衛生士の定義に「業とする女子」という文言が加えられました。
附則で男性も認められたものの、「歯科衛生士=女性の仕事」のイメージが強まることに。
その後、男女雇用機会均等法の影響を受けて2014年に再度法改正され、「業とする女子」から「業とする者」に変わりました。
この「歯科衛生士=女子」というイメージは、ほかにも影響を与えているため、以下で紹介します。
引用元
厚生労働省|歯科衛生士法について
厚生労働省|歯科衛生士法の一部改正の施行について(通知)(◆平成26年10月23日医政発第1023007号)
養成機関によっては男子の入学不可のところもある
男性の歯科衛生士が少ない背景には、男子学生を受け入れている養成機関の数が限られていることが影響しています。
現在、歯科衛生士養成機関は180校以上。そのうち、男性を受け入れているのは81.9%(149校)です。これでも増加したほうで、令和2年度は57.2%の学校しか男性は入学できませんでした。
毎年入学可能な学校数は増えているものの、どこでも受け入れてもらえるというわけではありません。
男子学生を受け入れられない理由として、学校の設備や体制が整っていないことなどが考えられます。
引用元
口腔保健協会|全国歯科衛生士教育協議会-歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告
採用側に偏見があるケースも
まだまだ男性が少なく、女性のイメージが根強く残っていることから、歯科医師や採用側に偏見があるケースがあるのも現実です。
また、応募先によってはこれまで男性を雇ったことがなかったり、女性が多い職場であるため男性を受け入れる体制が整っていなかったりという理由で落とされる場合もあります。
需要あり!男性が歯科衛生士を目指すメリット

かつて女性しかなれなかった「看護婦」は、「看護師」に法改正され、現在は男性看護師を見かけるのも珍しいことではなくなりました。歯科衛生士も同様に、今後男性歯科衛生士の需要はますます高まる可能性が十分にあります。
実際、頼れる存在として重宝されるケースも少なくありません。
ここからは、男性が歯科衛生士を目指すメリットについて紹介します。
引用元
厚生労働省|医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 第1回資料
身体的な強さを活かせる場面が多々
女性よりも身体的な強さがあり、力仕事の場面で活躍できます。歯科医院であれば、大量のカルテや重い備品、設備の移動などもスムーズです。暴れる子どもを危険から守るために押さえることも容易でしょう。
訪問歯科や介護施設などでは、高齢者の身体を支えたり、車いすの操作やベッドへの移動を介助したりする場面もあり、男性がいてくれると安心です。
長期的に安定して働ける
歯科衛生士は国家資格であり、一度取得すれば一生モノとして活かせます。また、女性のように出産や育児で退職したり、長い間休職したりすることが少ないため、長期的に安定して働けるでしょう。
男性に対応してもらいたい患者もいる
歯科医院には、老若男女問わずさまざまな患者が訪れるため、女性の歯科衛生士だと緊張する、同性(男性)に見てもらいたいという人も一定数存在します。
同じ性別のスタッフのほうが相談しやすいということもあるので、男性患者にとって男性歯科衛生士の存在が安心感につながるでしょう。
就職先の選択肢が豊富
歯科医院だけでも全国に6万軒以上存在し、歯科衛生士の求人は全国各地にあります。就職先はほかにも、病院や養成機関など選択肢が豊富です。
まだまだ男性が少ない職業であり、一部で受け入れ体制が整っていないことはあるものの、求人は多数あるため、男性でも受け入れてもらえる可能性は大いにあります。
歯科衛生士の就職先についてはのちほど紹介しますので、選ぶときの参考にしてください。
男性が歯科衛生士を目指す際の注意点

男性が歯科衛生士を目指すメリットもある一方で、注意点もあります。以下で紹介する内容をあらかじめ心得ておくとよいでしょう。
収入に物足りなさを感じる可能性がある
厚生労働省が職業情報を紹介しているサイト「job tag」によると、歯科衛生士の平均年収は405万円です。5年目以降の平均月給はほぼ横ばいの29万円台で、安定した収入が得られる反面、ある程度で頭打ちになることも考えられます。
家計を支える立場になると、厳しいと感じる可能性があることには注意が必要です。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|歯科衛生士 - 職業詳細
環境によってはなじみにくい可能性もある
養成機関はまだまだ女性が圧倒的な数を占め、コミュニティが狭くなりがちです。設備の面でも、女性が過ごしやすい環境整備に留まっている可能性があります。
また、歯科衛生士になったあとも、女性が多い環境であることには変わりありません。職場に男性歯科衛生士が1人だけだと、少なからずなじみにくさを感じる場面もあるでしょう。
肩身が狭いケースや、チームとしてコミュニケーションがうまくいかないことも考えられます。
歯科衛生士が収入アップを目指すなら?

家計を支える立場では、物足りなさを感じる可能性がある歯科衛生士ですが、資格を活かして収入アップを目指せる可能性があります。ここでは、その方法について紹介します。
専門性の高い認定資格を取得する
歯科衛生士には、たくさんの認定資格があります。取得すれば職場によっては手当がつくところもあり、専門性が高いため信頼度もアップ。仕事の幅が広がることで、キャリアアップや収入アップにつながる可能性もあります。
以下は、歯科衛生士向けの認定資格の一例です。
実施団体 |
資格名 |
日本歯科衛生士協会 |
認定歯科衛生士 |
日本歯周病学会 |
認定歯科衛生士 |
日本小児歯科学会 |
認定歯科衛生士 |
日本口腔インプラント学会 |
インプラント専門歯科衛生士 |
日本成人矯正歯科学会 |
認定矯正歯科衛生士 |
日本歯科審美学会 |
ホワイトニングコーディネーター |
引用元
日本歯科衛生士会 | 認定歯科衛生士について
日本歯周病学会|認定歯科衛生士 | 認定制度
日本小児歯科学会 | 認定歯科衛生士制度について
日本口腔インプラント学会|インプラント専門歯科衛生士
日本成人矯正歯科学会|認定矯正歯科衛生士制度規則細則
日本歯科審美学会|ホワイトニングコーディネーター
転職する
歯科衛生士の求人は豊富にあるため、より条件のいい職場に転職する方法もあります。福利厚生や残業の有無、休日数も職場によって異なるため、自身の条件と照らし合わせて比較するとよいでしょう。
男性歯科衛生士の就職先

ここからは、厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例」と歯科衛生士会の「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」をもとに、男性歯科衛生士のおもな就職先を紹介します。
引用元
e-Stat|衛生行政報告例 衛生行政報告例 隔年報歯科衛生士・歯科技工士・歯科技工所 1 就業歯科衛生士数,就業場所・性・年齢階級別 | 統計表・グラフ表示
歯科衛生士会|第10回歯科衛生士の勤務実態調査報告書
歯科医院(診療所)
男女ともに就職先として最も多いのが、歯科医院(診療所)です。令和2年時点で、歯科医院で働く男性歯科衛生士の数は、66人となっています。担当業務は、歯科医師の診療補助をはじめ、予防措置や保健指導などが一般的です。
病院
歯科医院に続いて人気なのが、病院です。令和2年の報告によれば、大学病院や総合病院で働く男性歯科衛生士は12人。歯科医院よりも難しい症例や口腔外科手術、入院患者の口腔ケアなど幅広い業務に携わります。
歯科衛生士養成機関
同じく令和2年のデータによれば、男性歯科衛生士のうち、教員として新たな人材育成に携わっている人が5人います。歯科医院などで実務経験を積んでから、歯科衛生士養成機関で働くのが一般的です。
その他|行政や一般企業など
上記の就職先以外にも、市区町村や保健所などで地域住民の口腔衛生をサポートしたり、歯科関連の一般企業で営業や開発に携わったりする人もいます。また、歯科衛生士会の調査によれば、ごく少数ではありますが、研究機関で働く人もいるようです。
歯科衛生士の将来性

歯科衛生士は人手不足と言われており、歯科衛生士そのものの需要が高いです。そして、超高齢社会の現代では、高齢者の口腔ケアや予防措置が注目されています。
実際、歯科医院だけでなく介護施設などでも、歯科衛生士が保健指導や口腔ケアをしているほか、子どもから大人まで、予防措置に力を入れている人が増加傾向です。
人手不足で、とくに高齢者分野の需要が高いなか、男性歯科衛生士は重宝される存在になりえます。まだ少ない男性歯科衛生士だからこそ、力仕事や同性の患者対応、介助などといった男性ならではの強みを活かした役割を任されやすいでしょう。
歯科衛生士になるには?

歯科衛生士になるためには、歯科衛生士養成機関を卒業し、国家試験に合格したうえで免許申請が必要です。免許証を交付されると、晴れて歯科衛生士として働くことができます。
養成機関の修業期間は、最低でも3年です。人体の構造から、歯や口腔機能などを体系的に学び、専門分野である診療補助や予防措置、保健指導について知識やスキルを身につけます。
歯科衛生士になる方法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
歯科衛生士になるには?免許を取得するまでのルートや費用・国家試験の概要を紹介
自分に合った職場を探すには?

歯科衛生士の求人が豊富にあるなか、自分に合った職場を探すとなると、大変だと感じる人もいるかもしれません。そこでおすすめなのが、求人サイト「リジョブ」です。リジョブはヘルスケア業界に強いサイトで、歯科衛生士の求人を豊富に掲載しています。
条件の選択肢が多く、給与や福利厚生、立地、客層(患者層)など、自分にとって理想の職場を効率的に探すことができるのが特徴です。
求人情報には、勤務条件をはじめ、求める人物像やこだわり、スタッフの声なども掲載しており、自分の価値観や条件と照らし合わせて検討できるでしょう。
男性でも歯科衛生士になれる!自分の強みが活かせる職場を見つけよう

男性でも歯科衛生士になることは可能で、近年は養成機関に通う男子学生も増加傾向にあります。ただし、全体の割合は依然として非常に少なく、制度的背景や養成機関の受け入れ体制、採用側の偏見などが要因です。
とはいえ、体力や同性の患者対応など、男性ならではの強みが活かせる場面も多く、需要は今後さらに高まると考えられます。
国家資格で安定性も高く、認定資格の取得や転職により収入アップも目指せるでしょう。
歯科衛生士の求人は豊富にあるため、自分の希望を満たしていたり、強みが活かせたりする職場をみつけることが大切です。
求人を探す際は、リジョブをぜひ活用してください。未経験OKから即戦力を必要としている求人まで、幅広く掲載しています。転職満足度※が高いサイトでもあるため、キャリアアップを考えている人にもピッタリです。
※リジョブ経由で採用された1,242名を対象に実施した満足度自社調査より(実施期間:2023年2月8日〜2023年3月8日





