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学び・キャリア 2021-03-02

ネイリストの独立 サロンは自分の個展ではなく、お客様と一緒に過ごせるホーム Vol.19【NavyHouse chinatsuさん】#2

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな人に向けて独立して成功されている先輩オーナーの方々の経験談をお届けする本企画。

前回に引き続き、お話を伺ったのは「NavyHouse」のchinatsuさん。自由で独特な世界観を持ったchinatsuさんのデザインは、まるでアート作品を見ているかのよう。実はネイリストとしてデビューされたのはオーストラリアだそうで、「もともと一人でお店をやりたくて」と向こうでフリーランスになり、日本に帰国されました。

後編では、chinatsuさんが感じるプライベートサロンの良さについて語っていただきます。アーティスト肌のお店では決してなく、お客さんと過ごす時間を何よりも大切にされているのだそうです。

お客様と話す内容が濃くなった

――デザインやスタイルは昔と変わりましたか?

前は画像持ち込みが多かったのですが、あるときからパタッとなくなって…。今は画像持ち込みは少なく、ほとんどが「お任せで」ですね。おそらく「このサロンに頼むとこういう感じにしてくれる」と、お客様が信頼してくれるようになったんだと思います。独立してやっている身としては、「お任せで」と言ってもらえるのが一番嬉しいですね。

デザインのインスピレーションも結構お客様から得ることが多いです。私、知識欲がすごくて、知らないことを知るのが好きなんですよ。知らないマンガ作品とか流行とかをお客様に聞いたら、家に帰ってすぐ調べるんです。だから、日頃はネイルの画像を見ることはなくて、コンテンツを知って、それをネイルに落とし込んでいます。今の私の仕事は、キャンバスがたまたま「爪」というだけで、極端な話、別に爪じゃなくても良いんです。

最近、私一人でやっていることがやっと浸透してきたなと思っていて。というのも、一人でお店をやっているネイリストさんって自分の名前でやっている人が多くて、うちみたいな屋号をつけている人は滅多にいないんですよね。しかも、私は色々なジャンルのデザインをするので、何人かのネイリストがいると勘違いしているお客様も多いんですよ。

――リピーターを増やす上で工夫されたことはありますか?

あえて工夫していたことはありません。でも、うちは1対1のプライベート空間ということもあって、お客様は喋って笑って…という時間を楽しみにして来てくれる方が多いんです。私もお客様と過ごす時間が好きですし、お客様と話した内容は大体覚えています。

インスタにも写真と一緒にその日にお客様と話した内容を書くようにしていて。そういうことがリピートにつながっているんでしょうか。特にリピーターを増やそうと思ってやっているわけではなくて、単にSNSが好きなだけなんですけどね。

――会話の内容を覚えてくれているのはお客さんにとって嬉しいと思います! ちなみに「NavyHouse」にはどのようなお客さんがいらっしゃるのでしょうか?

お客様はオタクが多いですね。うちの場合は、どちらかというと内面性に共通点がある気がします。アイドルでもアニメでも何のジャンルでも良いんですけど、何か好きなものがはっきりしている方であれば、話すことがたくさんあって、私とのお喋りも止まらなくなると思います(笑)。

壁に無造作に貼られたステッカーやフライヤー。
「お客様たちがよくペタペタと貼ってくんですよ(笑)」

――「NavyHouse」もchinatsuさんも、最初に抱いていたイメージと全然違います。「紹介のみぞ許されるネイルサロン」「ニッチな人しか入れない」というイメージだったのですが、何というか、寛容というか温かいというか…すごく親しみやすさを感じます。

本当ですか(笑)。

有名人の方や表の世界で仕事をしている方が来てくれることもあって、「誰かの紹介がないと来られないの?」「普通の会社勤めの自分はお呼びじゃない?」「あまりお洋服のこと得意じゃないけど…」とか、そういう風に思っていたお客様も多かったんです。

でも、うちは決してそういうサロンではなくて、誰が来てくれても嬉しいです。私は会社勤めをしていた経験もあるので、会社勤めの人の気持ちもわかりますし。誰が来てくれても私自身は変わらず、素のままで接しています。

――やはりお客さんとはプライベートなことまで知り合う関係になりますよね。

お客様のプライベートはめちゃくちゃ覚えています。成人祝いに妹さんを連れてきてくれた方もいますし、お母さんに誕生日プレゼントしたいと一緒に来店してくれた子もいます。そんな風にしてだんだんとお客様の背景を知るようになりますね。

共通の趣味があったり、好きなバンドが一緒だったりすると、お客さんと趣味の友人何人かで遊びに行くこともありますよ。ときには、「うちのワンちゃん見に来てよ」ってお客さんのおうちにお呼ばれされることも(笑)。

長いお付き合いだと、入社して、結婚して、出産して、またうちに戻ってきてくれるという方もいます。まさに一人の人生をそばで見ているようで感慨深いですね。うっかりすると自分の友達よりも会っているかも。

――デザインはもちろんですが、chinatsuさんの素のお人柄を好きになるんでしょうね。NayHouseは今年でオープン8年目とのことですが、これまで続けてこられた秘訣とは?

運ももちろんあります。それ以外だと、施術者が一番楽しんでいることでしょうか。お客様は施術者の気をもらうってよく聞くじゃないですか。だから、私のハッピーがお客様に伝わるのかな。

うちのサロンは、大手の広告サイトに掲載していない分、予約が取りづらい。しかも私一人でやっているので一日に接客できる人数も限られます。でも、来店してくれたときに2ヶ月も先の予約を入れて帰られる方もいて、うちでのネイルの時間をすごく楽しみにしてくれていることが伝わってくるんですよね。このサロンをはじめたときに決めたコンセプトが「月に一度、海外旅行に行くような特別な時間を」なんです。ネイルを可愛くすることはもちろんだけど、このサロンで過ごす時間も楽しいものにしてあげたいなといつも思っています。

――chinatsuさんにとってプライベートサロンをやるメリットとは何でしょう?

お客様と仲良くなれること、ですね。

――デザイン云々よりも先にそれが来るのですね!

伝わるかわからないですが、私、お客様のことがめちゃくちゃ好きなんですよ。大好きなんです。

大きなサロンだと周りの目が気になって、話せる内容は限られてきます。でも、この店をオープンしてからはお客様とお話しする内容の濃さが変わりました。すごく楽しいです。

といっても私自身に変化したところはないですけどね。今も昔も素でやってきましたから。

自分の存在は知られず、作品だけを評価されたい

――これからの目標はありますか?

自分のネイルは見て欲しいけど、私に注目してくれなくていいかなと思っています。むしろ、私を見て欲しいという気持ちはありませんね。このままこの店で楽しい時間が続けばいいなと思っています。

コロナ渦以前は、海外旅行先でポップアップでネイルをやったりしていました。手に職があるとそういうことができるんですよ。ヘアメイクの友人とちょっとしたイベントを催して、カフェでドリンクを飲みながらネイルを…とか。この状況が落ち着いたらそういうこともまたやりたいですね。

――ちなみに「この有名人にネイルしたい!」などの野望はありますか?

皆無です。私、そういう欲がないんですよ。

うちにはアーティストの方やアイドルの方がいらっしゃいますが、もちろん嬉しいけど、それをステータスだとは思っていません。いつも来てくれているほかのお客さんも同じくらい大事なので。私のネイルを求めて通ってくれる人がいる、それだけで嬉しいんです。

美容関係の仕事って、知名度とか露出もある程度は大事じゃないですか。でも私は有名になることにあまり興味はないんです。有名になることのメリットなんて一つも思いつきません。できれば自分のことは知られずに、ネイル作品だけを評価されれば十分です。

独立を目指すあなたへ

独立や新しいことをはじめるときって、ポジティブな理由やキラキラした理由がないとダメなのかなと感じてしまう人も多いはず。でも、私はどちらかというと後ろ向きの理由でした。毎日早起きして、満員電車に乗って、苦手な上司と長時間働かなくてはいけない。そんな嫌な思いをしないで済む方法として「独立」だったんです。「フリーになれば全てにおいて嫌な思いをしなくていいじゃん!」って(笑)。だから、特別な理由を探そうとせず、もっと気軽に独立して良いと思いますよ。「〜したくないから」という理由もいずれはポジティブになる気がします。理由なんてあとから付いてくるから大丈夫!(「NavyHouse」chitatsuさん)

▽前編はこちら▽
ネイリストの独立 一人でお店を開きたくてネイリストに。海外でフリー活動スタート Vol.19【NavyHouse chinatsuさん】#1>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)

Salon Data

NavyHouse

住所:東京都渋谷区渋谷1-3-18ビラモデルナA302
TEL:070-5367-1318

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