楽しい=ラクちんじゃない。苦労&リスクを背負う覚悟を持って【レディースシェービングサロン フレハ 自由が丘 オーナー ゆうこりんさん】#2
美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな人に向けて、独立して成功されている先輩オーナーの方々の経験談をお届けする本企画。
前回に引き続き、「レディースシェービングサロン フレハ 自由が丘」オーナーのゆうこりんさんにお話を伺います。事務職を辞めて一から理容の道に挑戦。その後就職した理容室でシェービングの技術を磨いたのち、「女性のためのシェービングサロンを」と独立を決意されたのだとか。
「物件がなかなか見つからない」からはじまり、客足ゼロの日が続く…など、独立したては苦労も多かったようですが、ゆうこりんさんが変わらず大事にしてきたのは「お友達感覚でいられる」サロンであること。だから、あえて「エステサロン」のような雰囲気はつくらないのだとか。
後編では、お客さんと近い距離感で接するための心掛けや、実際に常連さんとどんなお付き合いをされているのか教えていただきました。
隙間時間にふらっと立ち寄れるように
――はじめてシェービングをするお客様はどんな反応をされますか?
お顔に刃物を当てるのが初めてだと「怖い」「緊張する」という方が多いと思うのですが、実際は「うたた寝しちゃう…」と言っていただくことが多いですね。施術中にスヤスヤとお休みされるお客様を見ると「本当に安心していただけているんだな」と技術者としてとても嬉しいです。
「スッキリしました!」「お顔剃りってこんなに気持ち良いんですね!」という感想が多いのですが、そういえば先日「面白かったです!」と言ってくださった方がいたんです。「え! 私面白いことしたかな…?」と思ったのですが、会話を含めて楽しんでいただけたようなので、そのお言葉を聞けて嬉しかったですし、新鮮でした。
――こちらのサロンは「エステサロン」のような雰囲気を目指されているわけではないんですよね。
節度はありますが、あまり硬い敬語は使わないようにしているんです。やっぱり緊張してご来店される方も多いので、まずはリラックスしていただけるようにしています。顔や皮膚が強張っていると、正直剃りにくいときもありますので。
逆に友達みたいで良いですよね。「『今日ちょっとゆうこりん家に行ってくるね』と主人に言ってきた〜」なんておっしゃる方もいて、そんな感覚で来てもらえたら嬉しいなと。
実は店名の「フレハ」は私がつくった造語で、「フレンド(友達)」と「ハウス(おうち)」を組み合わさせたものなんです。仲良しの友達の家に行く感覚で、スッピン・スエットで気軽に来てほしいと思って名付けました。
――お客様はどんな方が多いのですか?
お客様はお話好きな方が多く、会話もだいぶプライベート寄りですね。この前も、開口一番「彼氏と別れました!」と報告されたり(笑)。月1で通ってくださる方が多いので、こちらもお客様のことを覚えていますし、「そういえばあの方、あれからどうなったのかな?」と気になっちゃうんです。だからお客様が近況報告してくれるのが結構楽しみなんです。
来店予約もLINEで連絡をいただくことが多く、「○日に行くね〜」というフランクなノリで予約が入ります。あとは「玄関前にセミが落ちてて怖かった」というとりとめもない連絡が来ることもありますし、「この前のバイトの面接、受かりました!」とわざわざ報告してくれる方もいます。本当友達のような距離感ですね。
――「上品なサービスを」というよりも、「フランクさ」がこのサロンの持ち味なのですね。
私のキャラクターもあるのですが、上品な接客が苦手なのでこのスタイルになってしまったと言った方が正しいかもしれません…(笑)。
――施術時間も短めに設定しているとのことですが。
ビジネスマンやサラリーマンのお客様が多い床屋で鍛えられた「スピード感」も一つの理由ですが、何より、女性は美容室に行ったり、まつエクに行ったり、ネイルに行ったり…と忙しいですからね。
うちではお顔剃りの施術は大体…1時間くらい。お子さんの保育園のお迎え前とか、そういうちょっとした時間にふらっと立ち寄れる場所でありたいなと思っているので。うちはエステサロンと床屋さんの良いとこ取りって感じですかね!
ただお客様はスッピンなので、次のお客様と鉢合わせしないように配慮はしていて、お一人ずつの予約枠は少し長めに取っているんです。コロナ渦の今、換気も十分にできますしね。
「お友達」のような親しみやすさはそのままに
――「脱毛」が主流になっている中で、改めて感じるシェービングの良さとは?
私自身も脱毛に通っているので「アンチ脱毛」ではありませんが、シェービングは産毛とともに古い角質も除去(ピーリング効果)できるのが魅力の一つです。あまり世間ではシェービングの良さが知られておらず、「ムダ毛処理」という認識でいる人も多いと思うのですが、シェービングが「スキンケア」の一環として周知されるようになったら嬉しいです。
スチームを当てながらプロの手でお顔を剃ってもらえる気持ち良さとスッキリ感はやみつきになりますよ。以前お客様から、施術も施術後のお肌の状態も含めて「良い意味で中毒性がありますね」と言っていただいたこともあります。
――今後もお一人でお店をやっていく予定でしょうか?
そうですね。「1対1のプライベート空間」というスタイルはコロナ渦の今、お客様にとって安心だと思うんです。本当はこの広さであれば、理容師法上、施術台をあと2台置けるのですが、お客様にはゆったりのんびり過ごしてほしいのでこのままでやっていきます。
当初のコンセプトのように「お友達の家に遊びに来たような」という雰囲気は壊したくないんです。束の間のリフレッシュとして「楽しかった」と思ってもらえるようなスタイルを今後も保っていくつもりです。
独立を目指すあなたへ
私がサロンをやっていると良い意味で楽しそうに見える人もいるかもしれません。でも、お客様が来てくれるようになるまで眠れない日もありましたし、軌道に乗るまで不安な日々を経験してきました。もし私の友達に独立しようという人がいたら、私は「ちょっと待って」と止めるかもしれません。楽しくお店をやっていても、苦労は必ずついてくるということと、お客様への感謝の気持ちは忘れないでほしいですね。(「レディースシェービングサロン フレハ 自由が丘」オーナー ゆうこりんさん)
▽前編はこちら▽
事務職から「床屋」へ勤務。そして女性専門シェービングサロンを開業【レディースシェービングサロン フレハ 自由が丘 オーナー ゆうこりんさん】#1>>
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)