「下積み期間」のムダを省き、未経験者が育つお店へ 【Fast Lash 錦織桃さん】#2

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方へ成功している先輩オーナーの経験談をお届けする本企画。

前回に引き続き、ボリュームラッシュ専門店「Fast Lash」オーナーの錦織桃さんにお話を伺います。講師経験や海外勤務を経てオーナーに就任。その後、思い切ってボリュームラッシュを専門にしたところ、売り上げだけでなくサロンワークの効率もUPしたと言います。そこには確かな技術力が裏打ちされています。

後編では、錦織さんが未経験者しか雇わない理由を教えていただきました。長年の講師経験を持つ錦織さんが目指すのは、どうやら「人を育てられる」サロンのようです。

お話を伺ったのは…

「Fast Lash」オーナー 錦織桃さん

姉の会社のもとでアイリストとしての経験を積み、
その実力を買われてスクールで講師を兼務。
その後、シンガポールに渡り、
サロンとスクールの立ち上げメンバーとして参加。
帰国後に姉の会社を継ぎ、
今の「Fast Lash」オーナーを務めています

あえて未経験者しか採らない

教えることが好きだと話す錦織さん。
教え子が成長していく姿が何よりも励みになるのだそう

――こちらのお店の採用基準を教えてください。

うちは基本的に新卒の未経験者しか採用しません。今のスタッフももちろん全員が新卒入社です。

というのも実は、今のアイリスト業界は経験者の取り合いになっている状態で…。「経験者ばかりを高待遇で採用して、未経験者は採用しない」サロンが多く、未経験者がなかなか就職できないというのが実情なんです。

――未経験者のための枠を増やしたいという想いがあったのですね。未経験者をメインに採用するようになって、プラス面は感じていますか?

中途採用をしていた頃に比べると、未経験の子の方が長く働いてくれますね。

経験者の方だと「自分はできる」とある程度自信を持っているためか、もっと他に良いサロンがあるのでは?と早々に転職してしまう人が過去に多かったんです。新卒の場合ははじめて働くことになるので、もちろん他を知りませんし、技術も素直に吸収してくれます。新卒に絞るようになってから離職率はグンと下がりました

――とはいえ、未経験者のみを雇うとなると会社的にコストがかかるのでは?

内定者には入社前からお店に来て練習してもらっているんです。つまり、内定を出してから学校を卒業するまでの間に研修期間を設けるわけです。入社後すぐに即戦力になってくれるので双方が時間を有意義に使えますし、このシステムが一番理にかなっていて、もうずっとこのスタイルでやってきました。

――下積み期間にやりがいを見出せなくて辞めてしまう…という課題もクリアできますね。ちなみに給与面でも、彼女たちにとってメリットを感じられる内容でしょうか?

そこもきちんと考えています。基本給に売り上げと指名歩合などを加算していますし、毎年昇給するシステムにもなっています。ネイルやヘアなどの美容手当も全スタッフに支給しているので、スタッフ自身も美容やファッションを楽しみながら仕事を続けられます。

定期的に待遇改善を図ることはサロンの信頼度にもつながるし、サロンとスタッフ双方のメリットになると思っています。

――離職率の低さには、サロン側の待遇努力も反映されているのですね。

スタッフに長く働いてもらうことは、会社にとって大きなメリットですからね。

フリー予約が多ければ、スタッフ間に技術力のバラつきは生まれない

講師時代に学んだことは
「自分が苦もなくできたことが、他の人もできるとは限らない」。
日々、スタッフ一人ひとりに合う教え方を試行錯誤しているのだそう

――錦織さんほどのベテランと新人さんとでは技術力にバラつきがあり、接客数にも差が出るのでは?

指名で予約が入る場合もありますが、うちのサロンはフリーでの予約が多いです。

指名を取れない新人はフリー予約で場数を踏むしかありません。フリー予約が多ければ新人の現場経験が増え、技術力もつきますよね。結果としてスタッフ全員の技術力がある程度一定になり、サロン全体の技術力が向上するので、私としてはフリー予約が多いことはメリットだと思っています。

うちに長く通ってくださる常連さんでも毎回指名しない方は多く、それは「どのスタッフが担当しても安定した技術を提供できている」という信頼の証でもあるのかなと感じています。

――「スピード力」が大事だと伺いましたが、その辺りはどのように特訓されているのでしょうか。

まず、自分がどれくらいのペースで施術できるのかを各スタッフが把握します。タイムアップは許されないので、とにかくマメに時計をみることが重要です。

慎重なタイプの子には施術の流れを細かくタイム割りしたメモを渡すこともあります。

美容師免許の国家試験でも制限時間に間に合わなければ落第してしまいますよね。スタッフには国家試験を受けたときの気持ちを思い出してもらうように教えています。

――「ボリュームラッシュ専門」であることは、スタッフの技術習得の面でもプラスとなりますか?

もちろんですうちが扱っているボリュームラッシュは既製品ではありません。自分たちで1束ずつつくってまつ毛に装着しているので、技術力が必要になります。

それにシングルの方が手間が少ないので、ボリュームラッシュに慣れている人であればシングルに対応することは難しくありません。うちのスタッフはシングル・ボリューム両方できるため、将来独立や転職をする際にも有利になると思います。

軸がブレなければサロンは長く続く

――サロン運営で大事にしていきたいことは何でしょうか。

ブレないことですね。ずっとボリュームラッシュ専門店でやってきているので、そこがブレてしまうと集客が上手くいかなくなると思います。

このコロナ渦で、うちも売り上げや来店数が下がりました。初めて直面する危機だったので、何か新しい取り組みを導入した方が良いのかと思い、焦って歯のホワイトニングをメニューに取り入れてみたんです。でも、結局ホワイトニングの予約はそこまで入らず、正直ちょっと失敗したなと…(笑)

――焦って手を広げすぎない方が良いということですね。これからもボリュームラッシュ一本で?

実は去年からラッシュリフトも導入したんです。仕事柄まつエクができない、アレルギー体質で肌が荒れやすいという方のためにご用意しておこうと思いました。でも、軸としてはボリュームラッシュ専門でやっていきたいですね。

――これからの目標はありますか?

出店は考えています。スタッフのことはこれからも自分で見ていきたいので、あくまで自分が動きやすい都内に限定する予定です。

お店のトップに立つには、技術だけではなくて管理能力も備えていなければいけません。業績が良いときもあれば悪いときもあるので、常に最悪の事態を頭に入れておくことが必要です。コロナ渦のように、売り上げがガクンと下がったときや集客ができないときに冷静に考えられるような器に育てたいですね。

独立をめざすあなたへ

私はもともと会社を経営したいという願望はありませんでしたが、今は人を雇っている側にいます。改めて思うのは、新しい雇用を生むことは社会貢献につながるということ。そして、アイリストになりたいという子たちを育てる環境を自分でつくれることは素晴らしいということです。これからお店を持つ人、人を雇おうと考えている人は、経験者も確かに即戦力になるけれど、未経験者をぜひ自らの手で育てていってほしいなと思います。(Fastlash オーナー錦織桃さん)

▽前編はこちら▽
ボリュームラッシュ専門店にしたことで客幅も時間単価もUP 【Fast Lash 錦織桃さん】#1>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/柴田大地(fort)

Salon Data

Fast Lash

住所:東京都港区南青山6-2-10 バックボーンハウス8階
TEL:03-6712-6995

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