ヨガとの出会いが私に強さをくれた【ヨガインストラクター 芥川舞子さん】#1
美しいポージングと的確な指導理論が人気のヨガインストラクター、芥川舞子さん。ヨガの普及を目指してメディアにもたびたび登場するなど、精力的に活動しています。しかし、ここに至るまでには自分らしいヨガを追求し、さまざまな葛藤を乗り越えてきた道のりがありました。
前編では、14歳でデビューしたファッションモデルの世界からヨガインストラクターに転身、教える立場になったことで生まれた不安や苦悩についてお聞きします。そこには、芥川さんの原点ともいえる数々の出会いがありました。
AKUTAGAWA’S PROFILE
体調管理のために軽い気持ちで始めたヨガ
──モデル時代にヨガを始めたそうですが、何かきっかけがあったのですか?
もともとアレルギー体質で、アトピーになりやすかったんです。忙しくなると肌が荒れてしまい、モデルの仕事に支障が出てしまうこともありました。そこで19歳のころ、体調管理のために何かしたいなと考え、母がやっていたヨガを始めたんです。
最初は自宅で母に教えてもらったのですが、体が硬くてしんどかったですね。ところがヨガを始めて3日目ぐらいに、落ち込んでいた気持ちがすっとラクになる経験をしたんです。たった数日やっただけなのに、心の変化がわりとすぐに訪れたことで、ヨガに対する気持ちが一気に高まりました。その後はヨガスタジオにも通い、どんどんヨガの魅力にハマっていきました。
──そしてモデルを辞め、ヨガインストラクターに。大きな決断ですね?
ヨガをやるほどにどんどん心身が健康になるのを実感し、ヨガに関わる時間をもっと増やしたいと思うようになったんです。人生の大半を仕事の時間が占めるわけですから、ヨガが仕事になれば健康にもいいなと。ちょうど近所にLAVAがオープンしたので、そこでインストラクターの勉強をして資格を取り、そのままLAVAでレッスンを受け持つようになりました。
教えることと、自分のためにヨガをすることのギャップに悩んだ10年間
──教える立場になって、ヨガに対する気持ちに変化はありましたか?
はい。自分のためにヨガをする時は、自分だけに意識を向ければいいわけです。でも教えるとなると、レッスン前後のトークの内容や、分かりやすい伝え方、集客方法など、趣味のヨガとは違うスキルが必要なんです。しかもレッスンが立て込むと、自分のヨガの練習時間はなくなるし、忙しくて体がしんどいのにレッスンでは体調を良くする方法を教えないといけない…。つまり、ヨガを教えることと、趣味でヨガをすることは、まったく別物なんです。
そこに気づかず、スキル不足で仕事が思うようにいかないことが、ヨガの経験不足のせいに思えてしまったり、仕事は順調なのに、自分のためにヨガを練習する時間がなくて学びが深まらなかったり。何で趣味の時は楽しかったのに、仕事にしたら楽しくないんだろうと、ずっとモヤモヤしていましたね。
──思っていた世界とは違ったのですね。
ヨガ業界って、キラキラして元気で楽しそうに見えるけれど、仕事である以上、他の仕事と同じように成果を求められるんです。インストラクターになってそのギャップに気づき、驚いている人は多いですよね。だから、仕事と趣味を切り離し、自分のヨガの時間をちゃんと守ることが大切なんです。それに気づくまで10年かかりました。
葛藤から生まれた「生活になじむヨガ」
──心のモヤモヤはどうやって乗り越えたのですか?
単純に、自分自身の人生のためにヨガの時間をつくる、というところに立ち戻りました。たまたま個人的にレッスンを受けていた先生から、「仕事で行うレッスンとは違う発想で、自分自身の生活リズムに合わせたヨガをする」という考え方を教わったのが大きいですね。
レッスンで教えている1時間や2時間の内容をそのまま家でやろうとしても、みんなと同じで朝はバタバタしていて時間がない。だったら、1日2分とか5分からでいいので、自分の生活になじむスタイルでヨガを取り入れればいいんです。この練習法に出合えたことでモヤモヤが整理され、気持ちがスッとラクになりました。
──それなら無理なくできそうですね。
今でこそ自分のための練習時間もかなり取れるようになりましたが、それでも多忙な時は、2~3分でぱぱっと済ませることもあります。何が起こるか分からない人生のなかで、長く練習することも短く練習することも、自分でコントロールできるようになった経験は、私がヨガを教えるうえで大きな指標になっています。
ちなみに、「生活になじむヨガをする」という発想を教えてくれた先生は、のちに私の夫となる人で、ヨガの師匠であり、同じ志を持つ仲間であり、人生のパートナーでもあるんです。そういう意味でも、人生におけるターニングポイントだったなと思います。
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理想と現実のギャップに悩みながらも、自分らしいヨガ道を切り開いていった芥川さん。そのしなやかな生き方は、これからフリーランスや起業を考えている人の参考になるはず。後編では、主宰するヨガスタジオの運営や家庭との両立についてお聞きします。
▽後編はこちら▽
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取材・文/池田 泉
撮影/藤巻祐介